2014年4月~6月
【きょうのクロスステッチ Vol. 238】 by 岡村恭子
VOL.238 悪戦苦闘の30年
torsdag den. 8 mai 2014
デンマークに暮らして何年?という質問をされる度、一瞬答えるのを
ためらってしまいます。何故かというと大抵の場合30年という数字に驚き、
次に、それならもちろんデンマーク語が達者だろうということになるからです。
ところが現実は悲しいかな全然上達しないまま今日に至ってしまいました。
我ながら今迄何をやっていたんだろう?と思いますが、とにかく、
日常会話は相手の理解力を頼みに何とかなるものの、読み書きの方は
未だに“ 読む “ は雑誌の記事くらいなら…という程度、“ 書く “ に至っては
一生越えられない高いハードルだと痛感する毎日です。
以前にも書きましたが、デンマークでは加速度的に書類の手続きがデジタル化して、
市役所や銀行などの窓口に足を運ぶ必要がなくなった分、メールで事を運ばな
ければならなくなりました。…という事は?そうです。要するに文章を作成
しなければならいということです。最近は職人さんにもメールでやり取りする事が
増えています。用件だけ簡単に書けば良いのだけれど、その簡単な作文が実に
難しいのです。書面となると急に身構えてしまいます。テストを控えた生徒の
ような心境です。
英語⇆デンマーク語の辞書、時には日本語⇆英語の辞書も引っ張りだし、
頭の中の日本語をまず英訳し、更にデンマーク語に置き換える。
そうして苦労の末に出来た継ぎはぎだらけのデンマーク語の文章を、
娘にチェックしてもらいます。スペルの間違い、言い回しの間違いなど、
毎回沢山の赤ペンが入ります。笑いながら 冗談半分で点数を付けてくれることも
あります。40点だとガッカリするけれど、たまに高得点だと小躍りしてしまう。
まったく小学生のようです。
そんなですから、外国の人が流暢な日本語を話している現場に遭遇すると、
すごい!と感動してしまいます。そして、未だに言葉で苦労している我が身を
振り返り、結局、語学が上達するには本人の語学センスが絶対不可欠なのだと
納得。残念ながら私にはそのセンスが無かったのだ、と諦めることにしました。
これからも辞書片手に悪戦奮闘…がんばる以外に道は無さそうです。
庭はいつの間にか初夏の装いに衣替えです。ライラックが良い香りを放っています。
新緑も日増しにその緑の色を濃く深くして、木漏れ日が木の葉の模様を描いています。
ところで、
庭の草花の手入れをしている時も…葉っぱ達との心の会話はやっぱり日本語です。
…果たしてデンマークの花に私の言葉は通じているのでしょうか?
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
明るい季節は外回りのメンテナンスで忙しくなります。
雨上がりの庭から。初夏の花に水滴がパールのようです。
庭はライラックの甘い香りに包まれています。
友人お手製の手編み籠にライラックを生けてみました。