2014年7月~9月
【きょうのクロスステッチ Vol. 253】 by 岡村恭子
VOL.253 のら猫カナちゃんの思い出。
torsdag den. 21 august 2014
ここ数日、変わり易いお天気が続き、雨の合間の晴れ間を縫って、
外出しようとするそばから、また黒い雲がモクモク…駆け足で買い物を済ませ、
帰宅した直後にザーッという雨の音、その度に「濡れずに良かったあー、
今回も私の勝ち!」と雨雲に向かって言いたくなるような、そんな毎日です。
そして、ひと雨毎に秋の気配が濃くなる今日この頃となりました。
北欧の四季にはグラデーションが無い!と常々思っているけれど、
今年は特別に極端。明るい庭で夕涼みをしながらスイカを頬張っていた場面から、
西陽の当たる暖かい部屋で寛ぐシーンに早変わり、という印象です。
本格的な秋の庭仕事にはまだ少し間がある今頃は花壇をいじりながら、
賑やかだった夏を振り返ったりしています。気の合う仲間達と囲んだBBQ、
次々と咲いてくれた夏の草花…。今年も楽しい思い出が出来ましたが、
ただひとつだけ淋しかった事、それはノラ猫カナちゃんの姿が見られなかった事でした。
去年の今頃は毎日やって来て日だまりで身繕いしていたものです。
それが冬を最後にパッタリと来なくなりました。当初はノラ猫の気まぐれ、と
思い込もうとしていたけれど、それも次第に諦めの気持ちに変わってゆきました。
→VOL.233 祈無事 : のら猫カナちゃん
数年間の短い間だったけれど、私にとっては今迄経験したことの無い一匹の猫との
不思議とも言える出会いでした。
猫好きの友人がカナ猫を一目見て「神さまみたい。」と言ってくれた時には
ちょっと褒め過ぎ、と思ったけれど、実際、他の野良猫がミャーミャーと
うるさいのに比べてカナ猫は無言。一度としてその声を聞いた事がありません。
そのもの静かな様子、人間に媚びる事も無く、かと言って、私達に対する用心深さ
など微塵も感じさせない優しい眼差しでこちらを見る。
獲物を口にくわえて野生の本性を見せることなど思いも寄らない、という風に、
のんびりとして、気ままにやって来ては私達を和ませてくれる。
こんなことでサバイバル出来るのか?他の野良猫達と上手くやって行けるのか?と
心配になってしまうのでした。中でも一番感心したのは人間と一定距離を保ち続ける
毅然とした?態度です。私達が彼女に触ろうとすれば、一歩下がって絶対に触らせて
くれない。いつだったかご飯で家の中まで誘い入れようとしたら、ドアの手前で
困った様子をした挙げ句、食べずに帰ってしまいました。
後ろ姿に向かって「お〜い、カナちゃ〜ん。ご飯食べて行ってよー」と呼べど戻らず。
そんなですから、もちろん、彼女の方から人間の住まいに分け入って来るという気など
さらさらない。分をわきまえた、と言うか、プライドが高いというべきか…。
カナ猫が姿を消してから、他の野良猫がやってくるようになったけれど、
彼等は油断していると少しの隙間からも家の中に入って来るし。動作すばしこく、
目つき鋭く疑い深く、全っく可愛気がありません。
猫好きの人はどんな猫でも等しく愛情を注ぐというけれど、どうやら私にはその
資格は全く無さそうです。
のら猫カナちゃんは一体本当に野良猫だったのでしょうか?
未だに不思議な動物だったような気がしてなりません。神さまみたい、といった
友達の言葉がやけに信憑性を持って浮かんでくるのです。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
のら猫カナちゃんの初期の写真。2008年撮影となっています。
結構長い付き合いでした。
秋の日だまりで身繕いするカナ猫 2013年10月。
そして、これが最後にやって来た日のカナちゃん。2014年1月15日。
カナ猫のお陰で猫好きになれた数年間でした。
今も何処かでのんびり暮らしているような気もしています。
今朝の庭から。夏中庭に彩りを添えてくれた紫陽花もドライフラワーになってきました。
草花達も少しずつ冬ごもり準備を始めたようです。