2009年7月~9月
【きょうのクロスステッチ Vol.11】 by 岡村恭子
VOL.11 長い夏休み
デンマークに暮し始めて、最初に感心したことの一つに
“街角ごとのパン屋さん”があります。
どの町にも必ず通りに面したところにパン屋さんがあり、早朝から
職人さんがその店自慢のパンを焼いています。
香ばしい匂いが流れて来る店先で、今朝はどのパンにしようかなあ?
と思案している時などに、ふと「魔女の宅急便」のパン屋さんを
思い浮かべて、私はわけも無く嬉しくてなったりしています。
ところが今朝は勝手が違いました。いつもなら角を曲がると漂って来る
酵母の香りも無く、ショーウインドーは空っぽ!
鍵のかかったドアに大きく手書きで「みなさまもよい夏休みを!」と
はり紙がしてあります。
ああ、そうだった。うっかりしていました。
今月はインダストリアルホリデーでした。
デンマークは毎年7月の第一週末から3週間、全国的な夏休みになります。
インダストリアルホリデーという名が示すようにメーカーの工場が
一斉休業に入ります。もちろん、生鮮食料品や加工食品、酪農業など、
日常に欠かせないモノの生産は通常通りですが、それでも、
そういう企業の人事的な部署はほとんどの人が休暇をとってしまいます。
国の機能が通常の半分くらいに低下してしまう感じです。
近所の個人商店も、冒頭のパン屋さんをはじめ軒なみ夏休みです。
そんなわけなので私の買い物ルートも急性過疎化してしまいます。
テレビのニュースでは避暑地ですっかり寛いでいる首相がなにやら
インタビューに答えていますし、女王さま一家もフランスの別荘でのんびり。
本当に“みんなで夏休み!”なのです。
こうして3週間、国全体が力を抜いてしまうのですから
最初の内はひと事ながら心配になったものです。でも、大丈夫なのだと
いうことが暮してみてよーく分りました。あくせくしてばかりいても
良い結果は望めない。充分休息をとった後に、またエネルギッシュに
一斉スタートする。このメリハリのある社会的ローテーションは
見習っても良いような気がしています。
そんなのんびりした7月のデンマークの中で、唯一、夏休み返上で
大忙しなのが世界中から観光客が訪れるコペンハーゲンの中心地帯です。
旧市街地のカフェやお店はどこも夏休みを楽しむ人々でいっぱいです。
私も今日当たり、そんな人々に紛れて観光気分を味わおうかな…?
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com
紫陽花が見頃を迎えています。