2009年7月~9月
【きょうのクロスステッチ Vol.13】 by 岡村恭子
VOL.13 我が輩は“ノラ猫カナちゃん”である
ペットを飼っていますか?と聞かれる度に
「いいえ、でも、ノラ猫なら一匹やって来ます。」と答えています。
2年程前のある日の事でした。
いつものように庭仕事をしていて、花に水やりをしようと振り向いた所に
茶色い猫がいたのです。芝生の日溜まりにきちんと前肢を揃えて座り、
私と目が合っても逃げようとしません。それよりも、心持ち小首を傾げて
何か言いたげです。その様子が可愛らしいのでしばらく様子を見ていると、
やおら大きく伸びをして、ゆっくり垣根の向こうへと歩いて行きました。
猫などに興味のなかった私が、この時にかわいらしいなあ、と
思ったのが事の始まりです。
それから数日後、今度は庭で食事をしている時にやってきました。
松の木の根元で、やっぱりきちんとお座りして人間共の様子をそっと
覗いているようです。
その姿が全然厚かましくなくて、それどころかとっても愛らしい。
少し離れた所にボールに入れた水を置いても無視します。それじゃあ、と
試しにミルクを入れたら、恐る恐る近付いて来て美味しそうに飲みました。
面白がった家人が出し汁用の干し魚を投げると玩具のように遊んでから放置。
代わりにソーセージの切れ端を置いてやるときれいに平らげました。
どうも贅沢でノラらしく有りません。何処かで可愛がられている飼い猫かも
知れない、と思っていたのですが、次第に頻繁にやって来るようになり、
気が付けば買い物袋の中にキャットフードが加わるようになっていました。
雌雄不明のまま、のんびりした動作と丸い顔だちに女の子と決めつけて、
カナちゃんと名付けました。今ではすっかり我が家のサブメンバーとなり、
気ままにやって来て、窓辺のテーブルで昼寝をしています。
しばらく姿を見せないと、どうしたのだろう?と心配になりますが、
そんな人間の気持を知ってか知らずか?またフラリとやって来て、
私達をわけも無く安心させてくれます。
こんなに心が通いあっていると言うのに、彼女との物理的距離は未だに
縮まらない。絶対に触らせてくれない!
そうっと頭を撫でようとしただけで、すっと身をかわします。
先日、庭でゴロンゴロン遊んでいるカナちゃんを家人が呼ぶと
蝶々を追い掛けるのを中止してスタスタと小走りにやって来ました。
ほうら、ご馳走だぞー。
今度こそすり寄ってくれるかな?と思ったけれど、甘かった。
やっぱりダメでした。まるで躾けの厳しい両家のお嬢様のようなのです。
猫好きな人に聞いた話では、飼い猫ならば、直ぐに人に懐いて、足下にすり寄って
来るのだそうです。
やっぱり天然のノラ猫なのでしょうか?
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com
ノラ猫に似ず、おっとりとしています。
年令性別不明のまま、カナ猫ちゃんは
我が家にすっかり馴染んでいます。