2016年4月~6月
【きょうのクロスステッチ Vol. 335】 by 岡村恭子
VOL.335 ヤコブセンの家のキッチン
torsdag den. 21 april 2016
この度の地震で被災された地域の皆様に心からお見舞い申し上げます。
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いよいよオープンステッチハウスが始まりました。
色糸が描く美しい作品の数々に囲まれながら、
楽しいおしゃべりの時間が広がっている事でしょう。
春よ来い!と指折り数えていたのがウソのように、
日一日と陽射しが強くなり、その途端『日焼けに注意!』の季節到来です。
暗いと言っては文句を良い、明るいと言ってはシミが増えると愚痴を言う。
誠にもって身勝手な話ですが、日照時間の短い北欧では少々のシミや
ソバカスなんて気にしない!そんな気持ちが人々の暮らしの中にも
見え隠れしています。
例えば住宅。日本で敬遠されがちな西向きの部屋もここ北欧では大歓迎です。
午後からの陽射しが差し込む南西にリビングやベランダなどを設けます。
我が家の庭も南西に広がっていて、その庭を望む様にL字に居間や食堂が
続いています。反対にキッチンや子供部屋などは爽やかな一日のスタートを
切れるように朝日が差し込む東向きにレイアウトします。
私も朝の珈琲を沸かすことから始まって夕食の片付けが終わるまで
一日の大半を過ごしているのが東向きに大きな窓があるキッチンです。
暗い冬でもお天気さえ良ければ午前中は家中で一番明るい。その代わり
夏の午後など太陽燦々の庭から来ると急に日陰に入ったようにひんやりとした
空気に包まれています。そのコントラストも北欧ならではかもしれません。
機能主義をモットーとするアルネ ヤコブセンが設計したキッチンだから、
さぞかし便利でしょう?!と、よく言われるけれど、やっぱりそこは
“ 80年前の機能 “ で、21世紀の暮らしに適しているとは言えないけれど、
でも田舎の台所のようなゆったりと長閑な雰囲気が好ましいかな…と思っています。
今頃なら窓越しにレンギョウのが眩しく目に飛び込んできます。
ロビンと私が勝手に呼んでいるシジュウカラのつがいがエサを啄みにきたり、
たまに、隣りとの塀沿いをノラ猫が綱渡りのように歩いていたり…。
そんな裏庭の様子を眺めながらジャガ芋を茹でたり、粉を捏ねたり、合間に
珈琲ブレイク… そうして私の毎日が過ぎて行きます。
リビング雑誌のモダンなキッチンに溜め息まじりですが、
当時弱冠34歳だった新鋭建築家アルネ ヤコブセン(VOL.334参照)が
知恵を絞って設計した我が家のキッチン、これからも不便を承知で楽しんで
使って行こうと思います。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
これからの季節には西側に広がる庭に面した窓から明るい外光が差し込んで
夕食時にも照明は不要です!
朝日の差し込むキッチン。(ハッチの向こうにもサブキッチンが有ります。)
野菜嫌いの家人用にオレンジ絞りは結婚以来欠かさず毎朝の日課。
窓辺のハーブは摘んだそばから新芽を出してくれます。