2009年10月~12月
【きょうのクロスステッチ Vol.24】 by 岡村恭子
VOL.24 紅葉、落葉、秋祭り
日増しに秋が深まって来ました。
庭の桜の木も黄色く色付き、レンガ壁の団扇ほどもある大きな
蔦の葉もすっかり赤く紅葉して、風が吹く度にばさりと音を立てながら
落葉しています。芝生は落ち葉で埋まり、歩くとカサコソカサコソ
乾いた音を立てます。日一日と日照時間が短くなって行くのが分ります。
窓の外に付けた寒暖計がマイナス気温の方に傾いて来ています。
北欧の秋はあっという間に過ぎ、その後には長い冬が手ぐすねをひいて
出番を狙っているのです。
そんな秋の一日、私達も恒例のカルチャーナイトに出かけてみました。
毎年たった一晩だけの催しにたくさんの市民が繰り出します。
夜の散歩は日中感じない事を気付かせてくれます。
まず暗いということ。そんな事は当たり前ですが、コペンハーゲン市は
条例でネオンが禁止されています。だから、見上げる夜空には月も星も良く見える。
でも、必要な場所はしっかりと照明されているから足下は存外明るい。
北欧の人々は照明の効果を知り尽している、と、私はいつも感心します。
暗闇に浮かび上がる灯りが人々を自然に誘います。
屋内の明るさが人々の心を一層和ませてくれるのです。
カルチャーナイトで一般公開された政府各省庁はどこも超満員でした。
12月に開催されるCOP15のキャンペーンも兼ね、環境問題をテーマに
したイベントや、ライブコンサートで盛り上がります。
しかし、何と言っても、この国の政治の要とも言える建物の内部を
見るチャンスです。人々がまるで自宅のインテリアのように、
壁の色や家具調度品について語り、飾られた絵画を鑑賞し、誰もが
とても満足そうに頷いている様子を見て、公共財産は国民1人1人の
財産である、というコンセンサスを持つデンマークの人々の精神性に
触れた気がしました。
見学を済ませて外に出ると、運河の上におぼろ月がかかっていました。
そぞろ歩きの人達に紛れて夜の街を散策しながら、カルチャーナイトは
コペンハーゲンの「秋祭り」なんだ、と合点しました。そうしたら、
橋のたもとの焼きアーモンド売りが、一瞬 綿菓子売りのおじさんに
見えました。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com
落葉するまでの一瞬黄色い葉が美しい庭の桜の木。
ハロウィンのカボチャみたいなCO2バルーンと
オイルランプで浮かび上がる広場の様子。