2009年10月~12月
【きょうのクロスステッチ Vol.26】 by 岡村恭子
VOL.26 パンプキンスマイル
冬時間になった途端に空が低くなったような気がします。
これから冬至の頃まで日増しに暗くなって行くわけですが、
グリーンランドやアイスランドは既にもう真っ暗だろうなあ、と思えば、
比較するまでもなく、デンマークはまだまだ明るい!文句など言ったら
バチが当たります。特に今頃はほんの束の間ですが、街路樹や家々の庭の
木々が紅葉して街の景観を明るく彩っています。
紅葉が見られるのはとりもなおさず落葉樹が有るお陰です。
フィンランドに住む知人が「デンマークの森は優しく人間を
受け入れてくれる。」と羨ましがっていました。フィンランドの森は
どうなのか?と訊ねると、対決するような緊張感がある、と言うのです。
確かに、厳しい自然環境に負けず、天に向かって真直ぐに伸びる
針葉樹の森に迷い込んだら、軟弱な私などたちまち精神的ノックダウン
をくらってしまいそうです。
そこへ行くと、デンマークは菩提樹、白樺、プラタナス、その他にも
桜、もみじなど、日本で一般的に見かける樹木と同じ種類の落葉樹が
生息可能な、言ってみれば北欧の中の温暖地帯なのです。
おまけにコペンハーゲンは内海バルト海に面しているので
案外気温も高く、もうひとつおまけに言えば、ロンドンよりも晴れの日が
多いのがささやかな自慢です。
話を戻しましょう。
春に見事な花を咲かせた我が家の桜の葉も黄色く色付いて、
只今紅葉のクライマックスを迎えています。葉を落とした枝には
豆のように小さい拳状の固まりが出来て、すでに来春の芽吹き準備の
栄養貯蔵庫完成です。こうして敏感に四季を感じ取り、
成長、衰退を繰り返している木々の姿にはいつも感動させられます。
太陽が遠ざかり始めるのと比例して明度が下がり、
環境を囲む全ての彩度も静かにトーンダウンして行きます。
鮮やかに色彩を放ち、光という光が反射していた夏と対照的に
内側に隠るような印象ですが、そんな季節もいかにも北欧的で私は
好ましく思っています。
10月最後の日はハロウィンです。
買い物の帰り道、町のパン屋
さんの脇道でカボチャの笑顔に出会いました。
ニ−ッと笑ったカボチャが二つ。思わず私も笑い返しました。
黄金色、橙色、カボチャ色、…。元気の出る秋の色です。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com
庭の桜の黄金色が鮮やかです。
通りがかりに出会った”パンプキンスマイル”。
道端にほおずき発見。とっても元気な橙色。