2019年1月~3月
【きょうのクロスステッチ Vol. 459】 by 岡村恭子
VOL.459 小さな道具が教えてくれたこと
sondag den. 13 januar 2019
裏庭の片隅から水仙の葉が顔を出し始めました。
長さ5センチくらいの細くて濃い緑色の葉っぱが、
何本かずつひと塊りになってビュンという感じで、
真っ直ぐ空に向かって背伸びして、明るい季節に向かっているよ、
と知らせています。
ところで今、私の手元にある二つの小さな道具。
ペンチのようなものと、ノミのようなもの。
両方とも家人の祖父が使っていた道具です。
製本所を営んでいた義祖父は腕の良い職人だったそうで、
地元県庁などに分厚い和綴じ本を納めていたそうです。
昨秋、家人の実家を訪れた時、
義弟が 家を整理していたらこんなものが出て来た、と
古い小引き出しを手に、笑いながら家人の前に置きました。
覚えてる?とでも言いたそうです。
それは祖父の仕事場の片隅にあった道具箱でした。
紙の裁断機など大きな機械は暖簾を下ろした時に処分してしまい、
仕事場だった場所はとっくに住居になってしまっているから、
当時を思い出すものなど無くなる中で、この小引き出しだけは
亡くなった義母が大切に押入れの奥にしまっておいたのだそうです。
ひとしきり思い出話に花が咲いた後、
もしも欲しいものがあればどうぞ、という言葉に、
遠慮なく私が選んだのが手のひらに収まる二つの道具でした。
マメに磨いていたから、随分すり減ってしまっているという刃物は、
確かに形として少々寸詰まりのようですが、それがまた良い感じです。
持ち手の部分は何の木だろう?柔らかくて温みが有ります。
手に馴染む丸みは職人が使いこなしていた証拠です。
ペンチのような道具は綴じ糸を引っ張るためのものだそうです。
これも先が歪んでしまっています。綴じがほつれないよう力を込めて
ギュッと糸を引っ張っていたんだろうなあ。。。会ったことのない
義祖父の働く姿が…、曲がったことが大嫌いだったという、一人の
腕利き職人の姿が目に浮かびます。
正月、家人が刃先を研ぎました。
錆びついていた刃がキラリと白く光って蘇りました。
道具は使いこなしてこそ意味があると言っているようです。
それにひきかえ、我が家には使わず仕舞いっぱなしの道具の何と多いことか!
と、年明けから反省しきりです。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
義祖父の仕事道具だった2点、磨いてショーケースに納めました。
毎日使う道具で、例えば急須は差し口の湯切れが良いか?問題です。
これは日本で見つけた優れもの(白山陶器社製)
今日の庭から。
水仙の芽が早春の訪れが間近だと知らせています。