2019年4月~6月
【きょうのクロスステッチ Vol. 480】 by 岡村恭子
VOL.480 夏至に寄せて。
懐かしい思い出:ヨアンの苺
søndag den. 23 juni 2019
次々と花が咲き、見飽きることのない6月の庭ですが、
グラビア雑誌のように優雅に鑑賞とは行きません。
花を愛でながらも、虫食いの葉の除去や雑草取りなど、
ハサミと小さなシャベル必携で、相変わらず動き回っています。
シバザクラやセラスチウムに代わって、
ラベンダーやサルビアが夏の花壇を彩っています。
芍薬はずっしりと重たげに大輪の花をいくつもつけました。
バラは次々と咲いては花びらを散らして行きます。
一度に咲かず、少しずつ順番に咲いてくださいな、とお願いしながら、
丁度見頃の花をあれこれ選んで水に挿してあげます。
そして… あっ!アル、アル…。
植木鉢の苺が真っ赤な実を葉陰から覗かせているのを見つけて、
甘酸っぱい一粒を口に運びながら、遠い日を懐かしく思い出します。
今は亡き親友 : ヨアンの庭の苺を株分けしてもらたのは、
もうかれこれ10年以上も前のことです。
彼は自宅の他に小さな住居付きのステキな庭を持っていました。
温室には葡萄がたわわに実り、りんごの木には孫用の手作りブランコが
揺れている。まるで絵本の世界に紛れ込んだようなその庭の一角に
苺畑がありました。
ある日遊びに行くとヨアンが、やおら苺をシャベルで掘り起こし、
土のついたまま新聞紙に包んで言いました。
「これからはキョーコの庭でも甘い苺が食べられるよ。」
大切に育てたけれど、日当たりが悪かったのか?
今ではこの植木鉢だけになってしまった。掛け替えのない苺なのです。
ヨアン家族との思い出は、海辺の潮風や夏草の日向の匂いと共に蘇り、
ほんわりと優しい温もりに包まれるようです。
デンマーク語なんて少しも理解できていなかった頃から、
彼らとは楽しくおしゃべりしていた。気持ちが通じていた。
それはもう、とっても不思議なくらいなのでした。
あの優しかったヨアンの笑顔にはもう会えないけれど、
彼の庭から分けてもらった苺が毎年美味しい一粒になって、
懐かしい思い出を蘇らせてくれます。
そうして時は巡り、今年も白夜のクライマックスを迎えました。
21日の金曜日が今年の一番日照時間の長い日。
そして、23日の日曜日には夏至祭です。
去年は日照り続きで、夏至祭名物の焚き火も禁止令が出てしまいましたが、
今年は大丈夫です。
同じく禁止令の出たBBQもこの夏は解禁です。
お天気の良い日は何処からともなくお肉を焼く美味しそうな
匂いが流れてきます。我が家でも庭で食事をする日が続いています。
夕暮れとともに家人が火を起こしにかかります。
ゲストが来るまでに材料を整えて、庭の花を飾れば準備完了!
これからしばらくは我が家の食堂は庭先のテーブルです。
夏の北欧はお天気次第、明日も晴れてくれますように。。。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
庭で夕食を囲むのも今頃ならではの楽しみです。
庭の花を飾り、キャンドルを灯して、あとは材料を焼くだけ!
卓上グリルは焼肉するのに重宝です。
焼けたそばから、いただきまーす!
大粒で甘いヨアンの苺。毎朝ヨーグルトに入れて味わっています!
我が家の庭から。
写真は花壇に咲くサルビア、ラベンダー。
見ごろになったのから切り花にして。
写真は芍薬と釣鐘草。