2019年7月~9月
【きょうのクロスステッチ Vol. 485】 by 岡村恭子
VOL.485 見習いたい。
コツコツ、ゆっくり… “ ときをためる暮らし ”
søndag den. 28 juli 2019
7月も残りわずかとなりました。
長い夏休みもピークが過ぎて、スーパーに新学期グッズが並び始め、
パン屋さんからパンの焼けるいい匂いが流れてきました。
街に少しずつ活気が戻り、いつもの表情に戻ってきたようです。
今日も夏らしいお天気です。
カリッと乾燥した空気に、肌がジリジリします。
葉っぱたちも喉が渇いた様子で、しんなりと葉をうなだれています。
朝のうちに水やりして、掃除洗濯も早めに済ませます。
窓を開け放して風を入れます。冷房のない暮らしですが、
大抵はそれで大丈夫です。
デンマークの住宅は、外壁のレンガと内壁のレンガ壁の間に空間が
設けられています。この空間が夏は断熱、冬は防寒のカーテン役をしているのです。
お陰で、真夏日と言われる28℃越えの日でも屋内はひんやりとしています。
それに、我が家の玄関は大きな軒が直射日光を遮ってくれます。
冬場、寒々しいかというと案外そうでもなくて、庇が雨露を防ぎ、
玄関を入った所の床のレンガタイルが外からの余分な水分を吸収してくれる。
機能主義をモットーとした建築家アルネヤコブセンらしい工夫です。
対照的にそこから続くホールは白い大理石の床、天井に大きなガラス窓という
驚きの明るさで、どう転んでも夏向きです。
真冬は長居無用の空間ですが、今時分は外出から戻ったときに
すぐさま素足になって大理石の上を歩けば、ほらね!ひんやり。即席冷却です。
住まいに完璧を求めるのは所詮無理というものでしょう。
あちらを立てれば、こちらが立たず、
理想を実現した夢のマイホームでさえ、実際に暮らしてから
“ ああすればよかった…。” という後悔はつきものです。
我が家のように築90年近い物件ともなれば尚更で、
便利か?と聞かれれば、いいえ、と言わざるを得ない。
引っ越した当時はあれこれリフォームを考えた事もあったけれど、
最近はそういう不便さと仲良く暮らすのも楽しいかな、と
思うようになりました。
手元に「ときをためる暮らし」(文春文庫)という一冊の小さな本があります。
合計すると172歳という高齢の夫婦が、ニュータウンの片隅の雑木林に
囲まれた小さな家で、コツコツ ゆっくり、田畑を耕し、美味しいご飯をつくり、
様々な工夫を楽しみ、実践してきたお話です。
暮らしの知恵の向こうに豊かな、そして確たる人生哲学があります。
本の後書きのひでこさんの言葉。
「もう一度生まれ変わるにしても、これまで生きてきたように、
きっと生きるでしょう。私はいつも未来に向かって生きてきたので、
未来が短くなってしまった今も、その習慣からぬけ出せないでいます。
私には、この本が呼び起こしてくれる、暮らしの記憶が愛おしくてなりません。」
こういう気持ちで晩年を暮らせるように、今からでもおそくない。
あっ!雨が降ってきた!
ひでこさんを見習って、雨水を貯めよう!
貯水槽なんてないからね。取りあえずバケツバケツ!
つばた夫妻の暮らしの知恵を参考に、コツコツ ゆっくり。
私なりの人生の収穫をめざします。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
レンガタイル、大理石、フローリングを続く我が家のエントランス。
今日の庭から
そろそろ日差しに晩夏の気配を感じるようになりました。
今頃になって、こぼれ種から咲き出したパンジーが愛らしい。
ときをためる暮らし (文春文庫)
ひでこさん : お料理はおいしい、と言って食べてくれる人がいるから作るの。同感です。
レシピなんて適当よ。もっと甘くしたければ砂糖を足すだけ。同感です。
(お二人共満90歳の同じ月に旅立たれた。最後までなんと素敵な人生!)
ブログを書きながら、気晴らしに私の部屋の窓辺をパチリ!