2011年7月~9月
【きょうのクロスステッチ Vol. 102】 by 岡村恭子
VOL.102 新学期に思うこと
torsdag den. 18 august 2011
デンマークは夏休み明けて新学期がスタートしました。
ロイヤルファミリーの王位継承プリンス フレデリック皇太子夫妻の長男
プリンス クリスチャン君もピカピカの一年生です。
ご両親に手を引かれて初登校の日、王宮前で沢山の記者のインタビューに
上手に答えていましたが、「お弁当箱の中身はなあに?」と聞かれて
「ヒ ミ ツ!」と返す当たり、可愛らしい顔をして今から将来の王様の
貫禄充分という感じです。
ところで、皇太子夫妻は我が子が学ぶ環境として、皇太子自身も通った
王室御用達のプライベートスクールではなく、ごく普通の公立小学校を
選ばれました。長男の教育方針でも開かれた王室のイメージを国民に
大いにアピールしたようです。
受け入れる学校側もプリンスだからといってあまり特別扱いしないだろうし、
メディアも騒ぎ立てません。プライバシーを尊重する個人主義の精神が
浸透している、そういう意味でこの国は大人の国だなあ、と感心します。
ところで、この「個人主義」という言葉ですが、
私がデンマークに暮らし始めた頃「デンマークは個人主義の国だから」と
いうフレーズを耳にする度に、みんなが無干渉で自分勝手に生きているような
イメージで捉えがちでした。でも実はむしろその逆で、まずお互いの違いを
認め合い、尊重し合う精神を言うのだと理解した時に、目の前がパーッと
明るく開けたような気がしたのを覚えています。
「君のパパは皇太子、僕のお父さんはバスの運転手さん。」
そう言い合えるのはステキな事ですね。 プリンス クリスチャン君は
様々な環境で育つクラスメートと一緒に楽しい学校生活を送る事でしょう。
子供時代から「お互いを認め合う」ことを学び、自由平等の精神を自然に
養う環境が整っている国だと言えそうです。
娘が小学校に通い始めた頃のことでした。
「我が子は大丈夫か?」という、母親としてのまことに漠然とした不安を
クラス担任の先生に打ち明けたところ、微笑みながらこう答えてくれたのです。
「もしも、A-ちゃんが突然校庭の木に登り始めたりしたら、すぐに貴女に
知らせます。なぜならそれはとても彼女らしくないから」
…これ以上何を望みましょう?
個性を尊重する教育者の考えをニコニコしながら簡単に言ってのける先生に、
私は心からの信頼を寄せたのでした。
子供を取り巻く環境も時代とともに変わって行きますが、どんな時代になっても
お互いを尊重し合う精神だけは失ってはいけないと思います。
庭はうっすら秋色に模様替えの気配です。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
シュウメイ菊がきれいです。
雨が多いせいか芝生の間からキノコが顔を出しました。
ヒイラギもうっすら赤みを帯び、カプリフォリには真っ赤な実が…秋近しです。