2009年4月~6月
【きょうのクロスステッチ Vol.3】 by 岡村恭子
VOL 3 花を生ける一色を挿す
先日、お客さまをお迎えするので、いつもより少し念入りに掃除して
室内を調えました。ついでに窓拭きもして、きれいさっぱりしたところで、
仕上げに花を生けます。
今の季節は庭の草花から、あれこれと選ぶ楽しみがあります。
例によって植木バサミを片手に庭に出ました。
桜はすっかり葉桜になり、青くて小さなサクランボの実をたくさん
付けています。チューリップやムスカリに代わり、カスミ草、スズランなど
が自己主張し始めています。ツツジとクレマティスは今が盛りと花開き、
ジャスミンが良い香りを放つまであと数日というところでしょうか。
とにかく、草花達から目が離せない毎日です。
そんな中から今回選んだのはライラックと、もう一種、私が勝手に
“春葛(はるくず)”と呼んでいる、百日紅ほどの大きさの木に咲く
桃色の花です。
枝ごと長めに切りそろえて束ねてみました。
淡い青紫と少し沈んだ桃色の花が、思いの他大人っぽく華やかです。
庭の彩りを室内に取り入れた気分で、大きめのガラス器に
たっぷりと生けたら、いつもとひと味違う空間が生まれました。
デンマークに住み始めたばかりの頃、同じ通りに何軒もある花屋さんに
おお、これぞヨーロッパ。絵に書いたような風景だと感激しました。
しかし、一方で、店先に山と積まれた色とりどりの花を見る度に、
売れずにしおれてしまったら残念だ、と、内心案じたりしたものです。
でもね、そんな心配はご無用ですよ、と言われてしまった感じ。
とにかく、誰もが気軽に花を買い求める。果物を買うように花を買う。
需要があるから供給しているのだ。と了解したのでした。
人気の花屋さんはいつでも混み合い、週末の夕方にはブーケを買う人が
行列を作ります。山積みにされた普段使いの花が面白いように
どんどん売れて行きます。そんな様子を垣間見る度に
日々の暮らしに花を飾る。デンマークの人々がごく自然に身に付けた、
これはとても素敵な生活習慣だとあらためて思います。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com
花が引き立つように、枝ごとたっぷりと。
地下茎でどんどん増える。姿に似ず強い子です。