2012年1月~3月
【きょうのクロスステッチ Vol. 122】 by 岡村恭子
VOL.122 コトン!という音を楽しみに
torsdag den. 19 januar 2012
すっかりe-mailが主流の時代になり、手紙でのやり取りが
少なくなってしまいましたが、年賀状が届く年明けだけは特別です。
毎朝玄関でコトン!という音がするのを楽しみにしています。
頂いた年賀状は棚に飾って何度も読み返します。
写真付き年賀状はアルバムにしています。
お正月が来る度に増えて行く” お楽しみアルバム “ です。
世の中が便利になればなる程、時間と人の手を掛けて届く手紙は有り難く、
E-mailには無い温もりを感じます。
去年の夏のことでした。郵政省から一通の手紙です。何だろう?…
読んでみると2012年正月までに全ての個人住宅は歩道際に郵便受けを
設置すること!…という唐突な内容です。
主な理由は人件費削減のようですが、郵便受けごときで一体どのくらい
労働時間が削減され、経費節約になるのでしょう?
もしも郵便受けを設置しなかったら配達してくれないのか?罰金なのか?と、
?マークがいっぱいの一方的な話ですが、ルールなら仕方がありません。
まるで郵政省と申し合わせたかのように舞い込んで来たホームセンターの
“ 郵便受けカタログ “ を力無く眺めたりしていました。
我が家は歩道から少し奥まっているものの、垣根も無く直接玄関で、
玄関ドアに郵便受けが組み込まれています。建築家アルネヤコブセンの
特徴的なディテールです。ある日、ヤコブセンと行政に詳しい建築家の知人に
事の次第をこぼしたところ、彼は即日 担当局に手紙を書いてくれました。
相手に失礼無く、こちらの状況を丁寧に説明した非の打ち所の無い
手紙です。今度は先方からの返事をもらう番です。しかし、待てど暮らせど
音沙汰無し。結局、当局から何の返答も無いまま年が明けてしまったのでした。
そんな事が有ったので、ひょっとしてお正月に年賀状を配達してくれない
かもしれない…と心配していたのですが、蓋を開けてみれば、
拍子抜けしてしまうほど何事も無かったように、いつも通り “ コトン!”…
お楽しみの年賀状が無事に配達されて一件落着。
それにしても、あの騒動は一体何だったのでしょう?
公共の建築を建てる際には住民の意見を聞き、反対多数の場合は計画が
却下されることもある民主主義先進国のデンマークで、今回の郵便受け
設置の件は 郵政省の独り相撲。 事を運ぶ手順が少し間違っていたようです。
それどころか、色も型もまちまちの郵便受けで街の美観が損なわれていると
いう意見も。こうなると逆に言われた通りに郵便受けを取り付けた人から文句が
出ないのが不思議です。新年早々歯切れのよくないお話になってしまいましたが、
とにかく、我が家では今年も玄関でコトン!という音がするのを楽しみにしたいと
思っています。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
http://copensmile.exblog.jp/
無事に届いた年賀状。
この家は新しい郵便受けを取り付けていました。
我が家の玄関ドア。斜めに大きな郵便受け口が有ります。
暖かいので春と間違えたのでしょう。庭の隅でセントポーリアが花を咲かせています。