2012年4月~6月
【きょうのクロスステッチ Vol. 135】 by 岡村恭子
VOL.135 自然児カナ猫のサバイバル
torsdag den. 19 april 2012
先日、しばらくぶりにノラ猫カナちゃんが姿を現した時の事です。
遠目にちょっと様子がおかしいなあ、と近づいてみると…
オデコの毛が一カ所だけバサッと抜けてしまっているではありませんか!
丁度眉間の当たりが丸くスッポリ!という感じで。
毛が抜けてしまった個所はツルンとして桃色の地肌が見えています。
ご想像下さい。オデコの真ん中が脱毛してしまった野良猫の姿を。
いつもの長閑で平和な表情が一変、哀れを誘う惨めな姿に思わず
「一体何が有ったの?どうしたの?ケンカしたの?」と、矢継ぎ早に
話しかけてみましたが、相手は猫です。私の質問が分かる訳も無く、
ただ、心無しかいつもより元気が無いような、そんな風情なのでした。
その日は好物のミルクも飲み残し、そそくさと庭の茂みに隠れてしまいました。
飼い猫なら獣医さんに連れて行くのでしょうが、こちらが一歩近づけば
二歩下がる相変わらずの人見知りです。心配ですが、何とか自然治癒するように
と祈るのみ。インターネットで調べてみたところ、猫は大変デリケートな動物で
ストレスによる脱毛がしばしば見られるとの事、厳しい冬をサバイバルして
ストレスが溜まっていたのかも知れません。
それから、又しばらくして。
日増しに明るくなって来た庭にカナ猫がやってきました。元気そうです。
芝生を小走りして、リンゴの木の下でピタッと足を止めました。
しきりに匂いを嗅いでいる様子です。どうするんだろう?…庭仕事の手を休めて、
様子を観察していると、その場にうずくまり何か食べ始めたようです。
あの辺りには早春の小花が群生しているから、もしかしたらおでこの傷を治す
漢方の野草が生えているのかもしれない。時々顔を上げて周辺に目をやり、
また草の中に顔を突っ込んでいます。しばらくすると満足したのか身繕いをし、
青空を見上げて大きな伸びをすると、ゆっくりといつものルートを
帰って行きました。何を食べていたのか?気になった家人がその後を覗いて
言いました。「しっかりと鶏肉を食べたみたいだ。」「…?…!」
そう言えば 思い当たりが有ります。その朝、裏庭に鳩の羽が散乱していたのです。
時々、そんな『現場』に出くわすと、一瞬ギョッとするもののこれが自然の営み、
これからの季節には小さな卵の殻が割れていることもあります。
四十雀の卵を鳩が突き、その鳩を猫が狙っている。こんな小さな庭でも、
弱肉強食のサバイバルバトルが展開しているのです。
でも…と家人が続けます。「他の誰かの食べ残しじゃないかなあ?だって、
ちっぽけな破片だよ。」…多分、猛者の獲物のお残りでしょう。
しかし、ノラ猫といえども立派な野生動物なのだ、と改めて思い知ったのでした。
そう思って見れば、芝生を横切るカナ猫はサバンナの草原を行くライオンの
ようにも見える、というのは少々無理がありますね。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
http://copensmile.exblog.jp/
カナ猫 : 「ご心配かけました、ほらこの通り…」と、
毛の生えて来たオデコを見せに来てくれました。
桜の蕾も日増しに膨らんできています。
花壇も賑やかに。紫陽花の若葉が目に鮮やかです。