2013年4月~6月
【きょうのクロスステッチ Vol. 189】 by 岡村恭子
VOL.189 Lousisiana美術館へ。その2
torsdag den. 16 may 2013
高低差のある立地を利用して建てられたルイジアナ美術館は、
単なる美術館というだけでなく、北欧建築の好例としても高く評されています。
また、ヘンリームーアやカルダーをはじめ、イサムノグチなど世界的彫刻家の作品が
配置されている庭は彫刻美術館の趣があります。
そんな見所満載のルイジアナでのTara Donovan展、一体どんなかな?
さっそく覗いてみる事にしましょう。
温室のようなガラスの小部屋、その螺旋階段を下りると…、
唐突にフロアからニョキニョキと何本か柱のようなものがお出迎えです。
いよいよ “ Tara ワールド “ の始まりです。
ニョキニョキしていたのは直径2㎝程のボタンを積み重ねた作品で、
後から思えばこれはほんの小品なのですが、テッペンを突いたら崩れてしまい
そうな感じが、薄ぼんやりと桃色がかった白い不透明なボタンの色と
相まって、危うい存在感とでもいうのでしょうか。見ているとちょっと不安で
不思議な気持ちにさせられます。
お次は、爪楊枝、割れたガラス板、小さな釘で出来た大きな立方体が3個。
いずれも、ギュッとした重量感を感じさせます。
容器に詰められたかのようですが、実際には周囲にフレームも何も無し。
ボタンと同様にちょっとでも触ったら崩壊してしまいそうな危うさを秘めています。
更に進むと、今度は白い壁一面が何やら歪な感じに見えます。
近づくと、自分の立ち位置で微妙にその歪みが変化します。更に目を凝らして
見ると無数の白いストローの穴がこちらを向いているではありませんか!
一体どうやって壁面に設置したのかな?…と、首を傾げていると、
「キョーコさん、スゴイですよ!」という声です。急いで声のする方に行くと…?!
「わー!」大小さまざまな黒くてキラキラするボールが ムクムク…という感じです。
ホールの天井まで届く勢いで積み重ねられています。
周囲の人間が小さく見える。一瞬ミクロの世界に迷い込んだような、
摩訶不思議な感覚になります。
どの作品も 文章では伝えきれないほどの パワーと緊張感が漂い、
見るものに様々なイマジネーションを誘発します。
普段引き出しの中に転がっていたり、使い捨てている日常の小さなモノ達が、
彼女の手によって様々な想像力をかき立てるアートに変身です。
私には “ マテリアルの再生 “ というメッセージとも受け取れました。
Tara Donovanの世界を満喫したところで、さあ、もう一つの特別展、
Pop Art Design展に行きましょう。
私達はスタート地点のミュージアムショップを挟んで反対側の新館まで
新緑の美しい木立の中、彫刻を鑑賞しつつ芝生の庭を転がって遊ぶ子供達に
微笑み返しながら、五月晴れの庭をPop Artの会場に向かいました。
(3に続く)
Tara Donovan
http://www.louisiana.dk/dk/Menu/Udstillinger/Tara+Donovan
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
手前から爪楊枝、釘、ガラスの立方体。楊枝が一本ぽろりと落ちているのを発見!
壁一面の白いストローで微妙なニュアンスを表現しています。
" 黒いキラキラのムクムク " 作品。黒いボールはアルミのフォイル製。