2016年10月~12月
【きょうのクロスステッチ Vol. 362】 by 岡村恭子
VOL.362 秋の東京散策: 美術館と天ぷら
torsdag den. 3 november 2016
前回お知らせした通り、只今日本に滞在中です。
日本とデンマークの時差は7時間、飛行時間が10時間30分。
コペンハーゲン空港を午後3時過ぎに発って、成田空港に
翌日の午前10時着というキツネに包まれたようなフライトマジックです。
機内で寝そびれた私は完璧な時差ボケのままエンジンフルを回転したのでした。
やりたい事、会いたい人、行きたい場所が沢山ある中で、毎回楽しみに
しているのが学生時代からの仲良し3人組と過ごすひとときです。
気のおけない女友達と一緒の時はすっかり学生時代の自分に戻っている
自分がいます。性格的にも当時のバランスに戻る感じです。
今回も “ 仕切り屋E-子 “ の 「ねえ、どこにする?ナニ食べたい?…
いいのよ、いいの、久しぶりの日本ですものね。貴方の食べたいもの優先よ。
でも、あれも食べたいし、これもイイわねえ…」…と言う矢継ぎ早な、
つまり、彼女の食べたいモノが列挙されて行く中で「湯島で天ぷら」!という
魅力的なフレーズに一も二もなく賛成したのでした。
夕食も決まった所で、まず、とにかく静かで落ち着いた場所に行こう、と
彼女が提案したのが東京都庭園美術館のカフェでした。
東京都庭園美術館、またの名称は旧朝香宮邸。
http://www.teien-art-museum.ne.jp/museum/index03.html
フランスのアールデコ様式を取り入れた優雅な室内空間が魅力に溢れた
旧宮邸と話には聞いていたけれど、実際に行って見たら想像していた
以上に素晴らしい。いやー、よくぞオリジナルのままで保存されていたと
関係者に感謝したいです。
本場フランスのアールデコ様式と日本の職人達の丁寧な仕事の
コラボレーションが随所に生かされています。
意匠を凝らしたルネ•ラリックのシャンデリアやガラスレリーフを
見られるのも魅力です。遠くギリシャやイタリアから取り寄せた石材。
床のモザイクタイルには布目を施したものも有ります。
それらの繊細かつ柔らかいニュアンスに思わず溜め息がもれます。
鋳物の透かし彫りが施されたラジエターカバーなど細部に至るまで
ジッと見つめてしまいます。グッと近寄ってみたり、遠くから空間全体を
眺めたりしながら、1930年代という世界中が危うい状況の中で
このような住宅を造ろうと思い立った朝香宮鳩彦という人物の卓越した
デザインセンスとそれを実現させたエネルギーに驚嘆します。
すっかり優雅な気持ちになって、ふと気がつけば外はもう日が暮れています。
急に現実世界に引き戻された。その途端にお腹がすいて来た!
急げ!高輪から湯島に移動する間も学生時代に戻ってエンドレスな
おしゃべりに笑い転げて…。
そうして食べた天ぷらはお腹に浸みる浸みる美味しさでした。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
部屋ごとに意匠を凝らしたシャンデリアは1900年初頭の
フランスを代表するガラスアーティスト : ルネ•ラリックの作品。
空間を美しく彩っている。国の重要文化財に指定されています。
石塀にもこんな丸い透かし模様が…。
庭園を散策するのもお薦めです。
湯島の天ぷら屋さんにて。揚げたてを次々と平らげて大満足!