2018年7月~9月
【きょうのクロスステッチ Vol. 443】 by 岡村恭子
VOL.443 新学期になりました。
文房具にまつわるお話です。
friday den. 17 august 2018
デンマークは一足早く夏休み明けとなりました。
新学期がスタートして、新一年生の背中で真新しいカバンが
揺れています。
デンマークの義務教育は9年間、プレスクールクラス(自由選択)を
加えると10年間の一環教育です。
7才~16才の子供達が同じ屋根の下で授業を受けます。
クラス替えもありませんから入学から卒業までずっと同じクラスメートと
共に学び過ごす。これはちょっとしたギャンブルで、生徒だけでなく
担任の先生にも当たり外れが生じます。
思うような授業内容にならずに問題を抱えてしまうケースも無きにしも
非ずなのです。それでも一環教育の良いところは担任が生徒一人一人の
性格を把握できるという事でしょう。個性を尊重して自立心を育む。
一言に義務教育といっても夫々お国柄が出て面白いと思います。
さて、
あの暑かった夏が嘘のように、俄かに秋の気配を感じるようになて来た午後、
本棚から抜き取ったのは、新学期シーズンに相応しい一冊、
『文房具 56話』(串田孫一 著)です。
昭和の随筆家であり、哲学者でもあった筆者が自身の周辺にある文房具を
親しみこもった眼差しで見つめています。
子供の頃からの思い出などを織り交ぜながら綴られた文章に
読んでいる私も「そういえば…」と、文房具にまつわる思い出が蘇ります。
…消しゴムに穴を開けたり削ったり、鉛筆をグイグイ押し付けるようにして
いたずら書きをしていたなあ、あの消しゴム特有のちょっとゴムっぽい、
いかにも文房具という匂い、半透明で甘い匂いのなど色々あったけれど、
小さいライオンのマークが入っている消しゴムがあって、その少し平たくて
ザラつく感じとか、丸くなると削って尖らしていた事などを俄かに思い出し
ました。すると、文房具にまつわる思い出が次々に芋づる式に浮かび上がって
ああ、懐かしい。。。
母が作ってくれたチェック柄のお習字の道具入れや、絵の具の白くて小さい
水差しなどもお気に入りでした。
串田孫一さんは最後まで万年筆で文章を作成していたという事ですが、
現在、私の一番身近な筆記用具といえばボールペンです。
買い物リストや日記もボールペンで走り書きです。
中学の入学祝いにもらったパイロット万年筆は一度たりとも馴染まずじまい
だったし、書き損じたら消しゴムで消せるという便利な鉛筆も今や過去の
ものとなり、今では何でもかんでもPCに打ち込んで保存という時代に
なりました。
手紙もほとんどE-mailで済ませてしまう。実じ便利な世の中になりましたが
急速に日常生活から文房具の活躍する場面が少なくなってしまったのは
ちょっと寂しいような気もしています。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
私の身近な文房具たち。
・『文房具 56話』& 鉛筆=コーリン樹木鉛筆
・ガラスのぺーパーウェイト。小さい方は名刺サイズ。Design by “ og “
・母宛の手紙だけは切手を貼ってエアメールで。
・蛍光カラーのサインペンは忘れん坊の覚え書きに不可欠。
・スケルトンのボールペンは無印良品(1本84円)帰国時にまとめ買い。
仕事柄、家人のデスクには文房具が色々と、鉛筆削りも健在です。
今年もお隣さんから無花果のおすそ分けを頂きました。ジャムにしましょう!