きょうのクロスステッチ
【きょうのクロスステッチ Vol. 534】 by 岡村恭子
VOL.534 懐かしい記憶を辿る コペンハーゲンのお盆の夜
søndag den. 16 august 2020
今日も暑くなりそうです。
朝から窓を開け放ち、風を入れます。
せっかくの”お盆休み” もコロナ渦で思うように楽しめなかった方が
多かったのではないでしょうか。
お盆といえば、
私がまだ幼かった頃には、町中の住宅街でも
お盆の入りには人々が迎え火を焚いていたものです。
母も玄関先に出て迎え火を焚いて、先祖をお迎えして、
送り火でお別れしていました。
それがいつ頃からか、普段忙しい父が率先してお盆くらいは、と
家族で旅行に出かけるようになり、家を引っ越したりしているうちに、
迎え火を焚く事も、桔梗の絵が涼しげなお盆提灯を灯すを事も
なくなって行ったのでした。
私の子供時代ですらそんな風にして季節の伝統行事が日常から
消えて行ったのですから、デジタル世代の今、お盆休みとは名ばかりで、
ご先祖様は何処へやら、ただの大型連休に過ぎないのだろうと思っていたら、
いやいや、そんなことはない。我が甥っ子が小学生の息子を連れて
お墓参りしてきたというではありませんか。
折からの猛暑の中、墓地に人影はなく、坂道を歩いて良い汗かいた、という
ことですが、誰に頼まれたのでもなく、ごく自然にそんなことをしてくれた
ことがとても嬉しい。
長年のデンマーク暮らしで、日本の伝統行事に疎くなってゆくのを
我ながら不安に思っていたけれど、将来を若者に託せば大丈夫!
カタチが変わっても、その時代に息づく新しい伝統が受け継がれて
ゆくに違いない、と心強く思ったのでした。
しみじみと思い出した子供時代のお盆の記憶しかり、
人間の脳ミソというのは歳をとるに従って、ごく最近の記憶が疎くなる一方、
遠い記憶が鮮明になる、というのはどうやら本当のようです。
先日はお料理しながら、唐突に♪ライオネスコーヒーキャンディー♪という
CMソングが口をついて出てきた。(ご存知の方いますか?)
あはは、おかしい。なんでそんな歌が、と思うけれど、そう言えば
中学生の頃、コーヒータップというキャンディーがお気に入りだったなあ、と
思い出しました。赤いタータンチェックの化粧コンパクトほどの缶容器に入っていて、
この容器が大いにティーンエージャー心をくすぐって、通学鞄に忍ばせて
ちょっとウキウキしていたっけ。。。と、懐かしいお菓子の記憶が次々と
蘇ってきました。
丸いオレンジ味のガムは結び目だけが緑色になっている葉っぱのような
セロファンでくるまっていて、見た目にも子供心をくすぐった。
当時から日本のパッケージデザインは秀逸だったということね、というと、
家人も混ざってきて、
風呂帰りにお祖父さんに買ってもらったコーヒー牛乳は格別に美味しかった。
紙のフタを太い毛糸針みたいなのでスポン!と抜いてもらうんだ。
朝湯に行く祖父に連れられて、早起きの目を擦りながら歩く5歳の少年、
想像するだに愉快です。
次々と思い出が蘇り、製本職人だった祖父の仕事ぶりなど、
子供時代の懐かしい話は尽きません。
お盆にちなんだ話から、昔話に花の咲いた夏の夜でした。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
写真は全て我が家の庭から。
ブラックバードは木のテッペンが大好き!透き通る声で高らかに囀ります。
真夏日が続いています。庭で食卓を囲みます。夜風が気持ち良い。
オリーブの実が少し大きくなってきたみたいです。楽しみ!