きょうのクロスステッチ
【きょうのクロスステッチ Vol. 578】 by 岡村恭子
VOL.578 青天の霹靂!? あれから3年
デンマークの医療システム体験記
mondag den. 5 juli 2021
雲の流れが早い。
庭木を揺すって風が通り過ぎてゆく。
湿り気があるから夕立になるかもしれないね…。
プラムの木陰で風通ししていた衣類を室内に取り込んだり…。
風でしなだれてしまったサルビの花を摘んで水に差したり。
そんな私を横目に黒白縞のノラ猫が悠々と庭を横切ってゆきました。
子供達の遊ぶ声が聞こえてくる午後、なんの変哲もない日常の風景が
私の心に染み込んできます。
今年もいつも通りの夏を迎えた幸せをしみじみと感じながら…。
今からちょうど3年前の今頃のことでした。
自転車で転ぶ以外、滅多に風邪も引かない元気だけが自慢だった私が
手術を受けることになろうとは!
” 青天の霹靂!” はたまた ” 鬼の撹乱” なハプニングなのでした。
年齢を重ねれば病気とか手術なんて誰しもが経験していることだし
何も取り立てて言うほどのことではないでしょうが、
デンマークでの手術体験となると、少し珍しい出来事の部類に
入るかもしれません。
病気発覚から手術→集中治療が完了するまでの数ヶ月間は
貴重な体験の日々でした。
普段、デンマークのことを聞かれる度に”福祉国家”だと
答えてきましたが、実際に自分が病気になった時に、
実感した福祉国家デンマークとは?思い出してみたいと思います。
医療に関する全てが税金で賄われているため、何よりもまず
国民の健康を維持することが政策の重要なポイントの一つです。
(自転車優先の街づくりは国民の健康維持という観点からでもある。)
そして、なるべく医者などにかからないことが最優先ですが、
医者にかかった場合も極力薬には頼らない。
(風邪くらいでは解熱の点滴などないし、特別な処方箋は出してもらえない。
市販の解熱剤を飲んで安静にするよう言われるだけ。)
病院の設備もメリハリつけて、手術用機器などは世界最先端の代わりに、
病室などは驚くほど殺風景です。(こんなところに長居は無用!ということ。)
そして最大のポイントは全ての人に平等な医療現場ということです。
必要とみなされた手術及び治療費は全て税金で賄われ個人負担はゼロ!
(所得税は収入の約半分、消費税25%の有効利用。)
労働基準法が徹底しているので、医療従事者も週労33時間をフレックス勤務します。
治療中も時間になるとシフトしますから、担当者がくるくる変わる。
手術の執刀医師グループとその後の経過ケアグループに分かれていて
担当ごとに自分のパートに責任を持つ仕組みになっていますが、
患者のデーターはマイナンバーにより、過去に遡って紐付けされているので、
全ての担当者が共有でき、コミュニケーションもスムーズです。
私も安心して治療に専念できました。(時間予約制で待ち時間無し。)
とにかく、この国では病気発覚から最終治療まで、医者選びで悩むこともなく、
全て完璧とも言えるシステムに身を委ねて、もう、全てお任せ!状態です。
治療という乗り物に乗り、静かなレールで運ばれて行くような感じでした。
その間、心配というよりも何とかなりそう、という安心感の方がずっと強かった。
それに、これは私の私感ですが医療従事者はカウンセリングを
学んでいるのかなあ?それほど患者に対する接し方が上手で、
メンタルケアという点で大切な部分だと感じた次第です。
あれからもう3年。
何事もない日常を送れることに感謝しなければ!と思っています。
健康が一番!と庭を眺めながら改めて感謝しています。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
全て今日の庭から
延江さーん!大葉の葉を株分けしましたよ。
桜の木にサクランボ。これ以外は鳥たちが突いてしまった。。
プラムには青い実がたくさん!
カプリフォリ(スイカズラ)の花が甘い香りを放ちます。
ライオンの置き台にロベリアの青い冠。