きょうのクロスステッチ
【きょうのクロスステッチ Vol. 680】 by 岡村恭子
VOL.680 デンマークの暮らし アルネヤコブセン設計の家
torsdag den. 6 oktober 2023
ここ数日雨が降ったり止んだりの変わりやすいお天気です。
例年より少し遅めの秋本番、暖房も入れました。
庭仕事もひと段落、外回りのメンテナンスも終了して
これからの季節は室内での時間が増えて行きます。
⚫︎東向き?西向き?
我が家には大小二つのキッチンが隣り合わせにあります。
1936年にこの家が建てられた当初、
広いキッチンはお料理専用、隣りの細長いスペースは
下げられた食器を洗って仕舞う場所として使われていたそうです。
確かに、狭い方には火回りの設備はなく、代わりに流し台を背にして
天井までの造り付けの食器棚があって、それは今も重宝しています。
両方とも東向きに開いた窓から朝日が差し込み気持ち良い。
日照時間の短い冬場には明るい温室のようです。
春から夏にかけては庭先に出したテーブルが朝食の定位置でしたが、
これからの季節はキッチンの片隅が私の朝の憩いの場、
珈琲を入れてメールをチェックしながら1日をスタートします。
デンマークでは我が家に限らずリビングや居間といった中心的な場所は
西南方向にレイアウトされているのが一般的です。
西陽の射す部屋、と聞くと余り良い印象がないかも知れませんが、
北欧の人たちは逆に西陽が大好き。特に至の頃にはいつまでも明るい
西の空を飽かず眺めて暮らします。
マンションも西向きのベランダ付きは人気が高い。
日本だったら嫌われがちな西向きの場所が暮らしの中で重要な位置を
占めているというのも如何にも北欧らしくて面白いですね。
⚫︎外開き?内開き?
住宅は住んでいるうちに設計者の配慮が伝わってきて、
なあるほど、と感心したり、反対に問題点が出て悩まされることもある。
この家は2階の部屋の窓が全て内側に開くよう設計されています。
建築家アルネヤコブセンが窓拭きしやすいようにと考えてくれたのです。
窓拭きのたびにさすが!と感心していましたが、しかし、この好意が仇となり、
後々雨の差し込み問題に悩まされる事になったのですから、
本人が知ったらさぞかし残念がったことでしょう。
吹き降りの時にはほんの少しの隙間からでも雨水が浸みこんできます。
色々と策を講じてきましたが完璧というわけにゆかず、未だに台風の時などは
窓辺にそっとタオルを敷いてその場をしのいでいる。と書いた所で
そう言えば、と思い出した。
彼の代表作の一つであるSASロイヤルホテルも今まさに窓のことで話題に
なっているということを。
https://arnejacobsen.com/works/sas-royal-hotel/
このホテルはファサードの全面ガラス窓が特徴なのですが、
1959年築ですから流石に老朽化が進み、改修工事を検討中で
オリジナルを保存するか?環境問題を優先した新しいファサードにすべきか?
経営者側が保存派の多い世論を跳ねのけられるのか?
月とスッポンほど違うスケールだけれど、
同じアルネヤコブセン設計の家に暮らす身として
そうねえ、実際、窓は問題よねえ…と、他人事ではないような気がしている
今日この頃です。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
街角スナップ
ようやく街路樹も紅葉し始めて秋らしい風景になってきました。
東向きの窓に面した二つのキッチン。
可能な限り1936年のオリジナルを保存しつつ楽しんでいます。
西陽の差し込むリビング。
日増しに太陽の位置が低くなっているのを感じます。
今日の庭から
気温が高いおかげでラズベリーが豊作です。今日もたくさん収穫!
キノコも次々と顔を出して…秋ならではの風景です。