2010年1月~3月
【きょうのクロスステッチ Vol. 40】 by 岡村恭子
VOL.40 桃の節句に寄せて
torsdag den 25. februar 2010
そろそろおひな様を出してあげる頃になりました。
普段は地下室の棚に眠っているおひな様のひなたぼっこです。
『桃の節句』。何とゆかしい名前でしょう。
梅は地味過ぎるし、桜は艶やかすぎる。
ひなお祭りには、明るいピンク色の花を咲かせる桃の花こそ
実に相応しいと感じ入ります。
でも、あらためて考えると、ひな祭りは大変です。
7段飾りなどの立派なものは、出し入れもさぞ苦労でしょうし、
第一とても場所を取る。赤い毛氈の段々にレトロな顔立ちの人形が、
お座敷の奥まった所に並ぶ様子は、可愛いというより恐れ多いような、
もしも暗がりで出くわしたら、夢に出て来そうでちょっと怖いような…。
存在感が有り過ぎて、日常のインテリアにそぐわないこと甚だしい。
おまけに、わずか1日限りの女の子限定のお祭りです。
娘の健やかな成長を願う親心で揃えたせっかくのお雛さまも、
そんなこんなで出さず終い、「今年は“ひな祭りケーキ”で我慢」
などと、お茶を濁してしまう方も多いのではないかしら?と
思ったりしていますが、どうでしょうか?
我が家にも娘が生まれた時に、両親から無理矢理のように持たされた
お内裏様とおひな様が有ります。
幼い頃はわざわざ娘に着物を着せて、ひな祭りの真似事をしていましたが、
最近では毎年今頃になると、思い出したように箱から取り出して飾るだけ。
それも、インテリアに不協和音甚だしい、金屏風やボンボリなどは省き、
お人形さんだけをピックアップです。
それでも、掃除の途中などに、おひな様のお後れ毛を撫で上げてみたり、
衣の金糸を指先でなぞってみたりしながら、伏し目がちに、雅びな表情を
たたえたおひな様を眺めていると、ふと優しい心持ちになれます。
寒さの記録を更新した2月ももうすぐお終い。
来月から暦の上では「春」です。
桃の節句を控えたこの時期は北欧も早春のプロローグ、
雪解けの土の下で早春の花達が、今か今かと芽吹き時を待っているような気配です。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
雛あられの代わりにイースターのお菓子を散らして…。
これはお友達にもらった小さな博多人形のおひな様。
娘のおひなさまはお下げ髪。雅びな表情に心が和みます。