2010年1月~3月
【きょうのクロスステッチ Vol. 34】 by 岡村恭子
VOL.34 ステッチ始め
torsdag den 14. januar 2010
新年明けましておめでとうございます。
今年も楽しみながら一針ずつ丁寧に「きょうのクロスステッチ」を
綴って行きたいと思っています。
さて、新しい年になって早10日。
お正月明けの北欧は記録的な寒波に見舞われ、ここ数日は日中でも
氷点下10℃前後です。こうなると寒いのを通り越して“痛い!”
いつもの調子で自転車に乗って出かけようものなら、脳ミソの芯まで
フローズン状態になります。
あんなに騒いでいた地球温暖化の心配も、少休止という感じです。
ここ数年、暖冬続きだったので本格的な寒さはかえって嬉しい。
冬景色を求めてクリスタルのように透き通る寒さの中を
散歩に出かけました。
運河も旧市街地のお掘りも氷が張っています。
コペンハーゲンっ子達も嬉しいのでしょう。家族連れや若者達が
氷の上を散歩しています。すれ違うと皆がにっこり挨拶します。
「やっぱり、冬はこうで無くちゃ-!ね」と、頷き合っているようです。
凍り付いた土手をジョギングする人、幼い子供に初氷上体験させている
カップル、カメラ片手に風景を撮影する人、スケートを楽しむ子供達、
寒さなど気にせず?氷の上でおしゃべりを楽しんでいる人達もいます。
そんな人々の様子をカメラに収めようと手袋をはずした…その途端に
指先がカチン!と固まった。すっかり暖冬ボケしていた私の指に
激寒の一撃です。氷上は更に気温が低くて、ただでさえ吹き抜ける
風は身を切るようです。慌ててシャッターを切りながら、ふと見上げると
嗚呼!青空が広がっています。明るい陽射しが眩しい。
どんなに寒くても もう大丈夫だと思えて来ます。
ほんの少しずつだけれど日ごとに、日照時間は長くなっているのです。
春は確実にやって来る!
庭の桜の枝先も木の芽が赤く膨らんで来ています。
みなさまにお庭の様子をお伝え出来る日も、もうすぐそこ迄
来ている気配です。
岡村 恭子
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クリスチャンスハウンの運河も凍って…
すっかり氷の張った旧市街地の掘り:ソルテダム
何処も変わらぬ親心?
わが子の初氷上遊びに本人よりも親の方が楽しそうです。
【きょうのクロスステッチ Vol. 35】 by 岡村恭子
VOL.35 “今が辛抱時”に徒然思う事
torsdag den 21. januar 2010
『ロングアイランドフェスティバル:いよいよ7月14日から!』
こんなバスの中刷り広告が目に飛び込んで来ました。
外は雪です。氷点下です。なんと気の早い、と笑ってしまいそうですが、
真っ暗らだった冬至からひと月。あの頃に比べたら随分明るくなって来ました。
2月の冬休みが終われば、イースターホリデー。その頃にはチボリが
オープンするし、そうこうしていう内に夏休み。ふむふむ、今年は
子供達とロングアイランドフェスティバルに行こうか…。と、
かなり大雑把に指折り数えている人々の心理を見抜いているようです。
今が辛抱時。北欧の人々は大人から子供達までみんなが今年のノルマを
早めに消化してしまおうと頑張ります。
職場では一年中で一番効率良い季節かも知れません。
娘が小学校に通っていた頃、何故か毎年冬になると水泳の授業がありました。
校内にプールは有りません。近くの屋内プールまでわざわざバスを仕立てて
往復します。体育の授業はわずか2時間(正味100分)。その間にバスの往復、
冬で着膨れている子供達の着替え、準備体操etc.に手間取り、実際に泳げる
時間はわずかでしたが、運動不足の季節に裸になって水泳する事に
意味が有ったのでしょう。実際、先生に急かされながらクラスメイトと
泳いだ真冬の水泳は娘にとって今でも楽しい思い出のようです。
もうひとつ、丁度今頃の事でした。寒波で海に流氷が見られると
知った先生が、子供達を近所の海岸に連れて行きました。たしか、
小学校の4年生の頃です。外は氷点下です。近所の海岸と言っても歩けば
20分はかかります。自然観察の授業は正味50分。急げ!時間が無い、と
言う先生と歌いながら寒風吹きすさぶ海岸に到着したものの、寒さに震え上がり、
海に浮かぶ氷片を確認すると、観察もそこそこに戻って来た。流氷云々よりも、
その時のプロセス全てが今も娘の思い出になっているようです。
将来応用の利く人間に育てるには、幼い頃から知識を詰め込む事よりも、
このくらい大雑把な教育が程良いような気がしていますが、どうでしょうか?
二つともKuNeruAsobuで今回紹介された刺繍『アイススケートの子供達』で
思い出した、娘の小学校時代の真冬のエピソードです。
今日も雪です。今が辛抱時。まさに刺繍日和です。
私も暖炉を焚いて徒然なるままに過ごそうと思います。
岡村 恭子
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窓の外は雪景色です。
庭の紫陽花も雪帽子を被って…
我が家の暖炉。
【きょうのクロスステッチ Vol. 36】 by 岡村恭子
VOL.36 春を先取りチューリップ
torsdag den 28. januar 2010
我が家のキッチンにベンチのコーナーが有ります。
家人が新聞を読むのも、私が家事の合間にコーヒーブレイクするのも、
娘が幼かった頃は料理中の私とおしゃべりしながら宿題をしていたのも、
このベンチでした。
冬の間はそのコーナーにキャンドルを灯します。太陽から遠ざかってしまう
暗い季節に欠かせない、朝の日課です。それが、ここ数日、
キャンンドルの事などすっかり忘れてしまっていた事に気が付きました。
いつの間にか窓から朝日が差し込んで来るようになったのです。
朝のキャンドルは今度の秋までサヨナラです。うれしいです。
気温は氷点下ですが、今朝は庭の小鳥がさえずっていました。
桜の木の芽も赤さを増して来ています。
そろそろ根雪の下から早春の花、スノウドロップやエランティスの芽が
出始める頃です。自然界は少々の寒さなど、ものともせず、
日照時間に敏感に反応する様子です。
映画「となりのトトロ」で庭に出て来たドングリの芽を発見した、
さつきちゃんとメイちゃんが『夢だけど、夢じゃなかった!』と
喜ぶシーンを思い出します。『寒いけど、明るくなって来た!』
…そして、北欧に暮すという事は、実にそういう事なのだと納得する
自分がいます。
実際にはまだまだ『遠い春』なのですが、ほんの少しでも兆しを感じたら、
それはやっぱり「夢だけど、夢じゃ無かった」…なのです。
窓の外を見ると澄み切った青空が広がっています。さえずり出した
小鳥達に誘われるように、私も街に出かけました。
暖かい室内から一歩外に出た途端、瞬間フローズン状態になるのも、
もう少しの辛抱だと思うと嫌ではありません。むしろ、楽しいくらいです。
散歩の途中で、春を待切れずに迎えに来ている人達を発見しました。
お花屋さんの行列です。みんな面白いようにチューリップの束を抱えています。
私もひと束抱えて並びました。
これからはキャンドルの代わりにチューリップがベンチのコーナーを彩ります。
庭の草花の季節がやって来る迄のしばらくの間、私はせっせとお花屋さんの
店先から “春の先取り”を楽しもうと思っています。
岡村 恭子
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窓の氷点下ですが、お花屋さんにチューリップが沢山出回り始めました。
飛ぶように売れて行きます。
私もチューリップを買いました。
春を先取り。淡いピンクがグレイのベンチに映えています。
【きょうのクロスステッチ Vol. 37】 by 岡村恭子
VOL.37 雪*雪*雪
torsdag den 4. februar 2010
ついこの間、新年を祝ったと思っていたら、アッという間に
今年のカレンダーも2枚目になってしまいました。
何もしない内に時間が過ぎて行くようで焦ります。
いつもなら庭の隅からエランティスの芽が顔を出す頃なのですが、
今冬のデンマークは記録的な大雪となり、花の芽どころか、何もかもが
すっぽりと雪の中に埋もれてしまいました。
庭仕事は当分お預け状態です。
最初の内は楽しんでいた雪掻きも、こう毎日となると少々閉口気味。
もうそろそろお終いにしたいなあ…。低く雲がたれ込めた空を見上げて、
「明日は晴れますように。」…どこか遠くの方で輝いているに違い無い、
お日さまにラブコールしてみましたが、届いたかしら?
吹雪だというのに自転車に乗ってどこに行こうと言うのか?
進行方向=前身を真っ白に、睫毛まで雪化粧してペダルを漕いで行く人が
いるかと思うと、ノルディック用のスキー板を持ちだして、
大通りを滑って行く人もいる。私の友達は凍った運河でスノーサーフィンを
楽しむ若者達を見かけたそうです。公園に行けばスノーボードを始め、
プラスティックの簡単な橇から木製のアンティークな橇まで、一体どこに
隠していたの?と聞きたくなるくらい、雪と仲良しのツールを引っぱりだし、
今がチャンス!とばかりに大人も子供も楽しんでいます。わざわざ*遠くの
スキー場に出かけるなんて面倒だけれど、夏、お天気が良い時にひたすら
日光浴を楽しむように、久しぶりの本格的積雪も日常の一部として、
大いに楽しんでしまう。以前も書いたように、
「相応しい服装でいれば嫌いな天気なんて有り得ない。」
そんな精神がこの国の人達にはしみ込んでいるのでしょう。
買い物の帰り道、果物屋さんの店先でヒヤシンスの蕾を見かけました。
紫と白を一つずつカゴに入れてもらって帰ると、さっそく窓辺に置きました。
そうして、早春の花のつぼみ越しに、雪の庭を眺めていたら、
長い冬のトンネルの先に、明るい出口が見えてくるような気がして来た!
次回はもう少し明るい季節のメッセージをお送り出来ると信じて、
取りあえず、本日の写真は雪景色オンパレードです。
* デンマークは標高差が無い平坦な地形なので、国内に本格的なゲレンデは
有りません。本格的にスキーを楽しむにはスウェーデン、ノルウェー、
オーストリーなどまで出かけなければなりません。
岡村 恭子
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雪の中、餌を啄みに来た小鳥。キッチンの窓からパチリ!
庭の様子。全てが雪に埋もれてしまいました。
夕暮れ時は室内の照明が雪に映えて、季節外れのクリスマスカードのようです。
まだ硬いヒヤシンスの蕾も、暖かい窓辺で心無しか柔らかく膨らんで来ました。
【きょうのクロスステッチ Vol. 38】 by 岡村恭子
VOL.38 インドア ボタニク
torsdag den 11. februar 2010
前回のクロスステッチでは蕾だったヒヤシンスの花が咲いて、
只今部屋中むせ返るような香りを放っています。春一番の花の香りです。
我が家を設計したアルネ ヤコブセンは植物が大好きでした。
身近な草花のスケッチを沢山残していますが、その中にヒヤシンスの絵も
有ります。お行儀良く並んだヒヤシンスは、淡いパステルの色合いも
優し気で、凄腕建築家という普段のイメージとは異なります。
そんな植物好きのヤコブセン自邸には、オリジナルの観葉植物ケースが
有りました。ケースの下部に暖房を配管し、ちょっとした簡易温室です。
トロピカルな植物が、窓辺を被いつくす写真を雑誌で見た時は、
機能主義をモットーにしている建築家の、自然主義的な日常を垣間見るようで、
微笑ましく感じたものです。それから月日が流れ、縁有って私達が
彼の設計した家に住む事になった時、いつか写真で見た観葉植物ケースと
同じものが、ダイニングルームの窓辺に有るのを見つけて、
嬉しいような可笑しいような気分になったものです。
60cm×140cmの白い囲いの中は土で埋まり、上部は砂利が敷き詰めて
あります。ケースの下を覗くと暖房が配管されていて、何だか
“人間様よりも葉っぱ様”という感じです。
初代オーナー夫人はそこでカトレアをお育てになったとか…。
3代目オーナー夫人(=私)は、雑多な葉っぱ達と一緒に庭道具や植木鉢、
時にはキャットフードまで、便利な物置きとして活用しています。
それでも、毎年この窓辺でゼラニウムが越冬し、庭に出してもらえる日を
待っています。だから、もしもヤコブセンに聞かれたら、物置きのこと
は内緒にして、「ありがとう!お陰で葉っぱも元気に育っています。」と
言ってしまおう…と思っています。
先日、用事を済ませての帰り、植物園を抜け道してみました。
明るい季節は散歩の人達で賑わいますが、今は氷と雪に閉ざされて、
しんと静まり返った森の中のようです。
白い雪の中で、ガラス張りの温室ドームが、そこだけ遠赤外線でポッと
オレンジ色に浮かんでいます。室内は常夏の28℃、水の中に魚が泳ぎ、
梢で小鳥がさえずっています。
誰も居ない。静かなインドア ボタニク。
同じインドアでも我が家の葉っぱ達より上等の住まいのようでした。
岡村 恭子
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植物園。散歩道も一面の雪化粧。ガラスのドーム温室を望む。
常夏の温室内部。小鳥がさえずる和みの空間です。
我が家のプランターケース。只今葉っぱ達が越冬中です。
アルネ ヤコブセンが描いたヒヤシンス(1948年)
【きょうのクロスステッチ Vol. 39】 by 岡村恭子
VOL.39 早春のティータイム
torsdag den 18. februar 2010
根雪がなかなか解けません。庭はまだ真っ白です。
窓の外に置いてある寒暖計の針が、プラスの方に傾きそう…で傾かない。
あと、もう少しだ。がんばれー。と、声援をおくりながら、
今日は気分転換にクリームチーズケーキを焼きました。
パートシュクレさえ上手く焼き上がれば、後はとっても簡単です。
早春のティータイムにお試し下さい。
* *********************************
【クリームチーズケーキ】
まず、パートシュクレを焼きましょう。
パートシュクレは中身を変えれば色々なタルトケーキが楽しめるので便利です。
材料:小麦粉 150g
バター 80g
粉砂糖 35g
卵黄 1コ
レモン皮すり下ろし 1/2コ分
* 作り方
1) ボールに室温に戻したバターを入れ、クリーム状に練る。
2) 粉砂糖を加えて、更に練る。
3) 卵黄、レモンの皮のすり下ろしたものを加え、滑らかなクリーム状に
なったら、振った粉を加え、全体を良く混ぜる。
4) サランラップに包み、薄い板状にして(写真1)冷蔵庫で1時間以上ねかせる。
5) 冷やし固めた生地を取り出し、粉を打っためん棒で手早く伸ばし、
タルトフォームに合わせて乗せ、底辺はフォークで空気穴を開ける。(写真2)
6) 小豆等で表面を押さえると良いのでしょうが、私はそのままです。
7) 200℃のオーブンで15分くらい、うっすらキツネ色になったら出来上がり。
上手に焼き上がりましたか?
それではフィリングを作りましょう。
材料:クリームチーズ(ナチュラル) 220g
生クリーム 100cc
グラニュー糖 40g
レモン汁 小さじ 2くらい(好みで調節)
好みで、クワントロー 少々
仕上げ用の生クリーム 150cc
好みで、グラニュー糖 適宜
* 作り方
1) クリームチーズをボールに取り、湯せんで柔らかくする。
2) グラニュー糖を加えて滑らかなクリーム状にする。
3) 分量の生クリームを8分立てくらい(柔らかめ)にホイップし
2)に混ぜる。優しくホワーンホワーン…という感じで。
4) レモン汁、好みでクワントローを加え全体を混ぜる。
5) 焼き冷ましたパートシュクレに流し入れる。(写真3)
6) そのままサランラップをして冷蔵庫で一時間程冷やす。
7) 生クリーム150ccをホイップして、6)の上に中央がやや高い状態に
なるよう乗せ、その上をティースプーンの背中で花びらのようにする(写真4)
* **********************************
白いクリームの衣をまとったチーズケーキは、
柔らかい春先の雪景色にも似ています。
岡村 恭子
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(写真1) こんな感じにサランラップにまとめましょう。
(写真2) パートシュクレをタルトフォームに伸ばして、
フォークで穴をあけます。余った材料は丸めてクッキーに。
(写真3) パートシュクレにフィリングを乗せた所。
(写真4) 出来上がり!
春の雪にも似た、見た目も優しいケーキです。
【きょうのクロスステッチ Vol. 40】 by 岡村恭子
VOL.40 桃の節句に寄せて
torsdag den 25. februar 2010
そろそろおひな様を出してあげる頃になりました。
普段は地下室の棚に眠っているおひな様のひなたぼっこです。
『桃の節句』。何とゆかしい名前でしょう。
梅は地味過ぎるし、桜は艶やかすぎる。
ひなお祭りには、明るいピンク色の花を咲かせる桃の花こそ
実に相応しいと感じ入ります。
でも、あらためて考えると、ひな祭りは大変です。
7段飾りなどの立派なものは、出し入れもさぞ苦労でしょうし、
第一とても場所を取る。赤い毛氈の段々にレトロな顔立ちの人形が、
お座敷の奥まった所に並ぶ様子は、可愛いというより恐れ多いような、
もしも暗がりで出くわしたら、夢に出て来そうでちょっと怖いような…。
存在感が有り過ぎて、日常のインテリアにそぐわないこと甚だしい。
おまけに、わずか1日限りの女の子限定のお祭りです。
娘の健やかな成長を願う親心で揃えたせっかくのお雛さまも、
そんなこんなで出さず終い、「今年は“ひな祭りケーキ”で我慢」
などと、お茶を濁してしまう方も多いのではないかしら?と
思ったりしていますが、どうでしょうか?
我が家にも娘が生まれた時に、両親から無理矢理のように持たされた
お内裏様とおひな様が有ります。
幼い頃はわざわざ娘に着物を着せて、ひな祭りの真似事をしていましたが、
最近では毎年今頃になると、思い出したように箱から取り出して飾るだけ。
それも、インテリアに不協和音甚だしい、金屏風やボンボリなどは省き、
お人形さんだけをピックアップです。
それでも、掃除の途中などに、おひな様のお後れ毛を撫で上げてみたり、
衣の金糸を指先でなぞってみたりしながら、伏し目がちに、雅びな表情を
たたえたおひな様を眺めていると、ふと優しい心持ちになれます。
寒さの記録を更新した2月ももうすぐお終い。
来月から暦の上では「春」です。
桃の節句を控えたこの時期は北欧も早春のプロローグ、
雪解けの土の下で早春の花達が、今か今かと芽吹き時を待っているような気配です。
岡村 恭子
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雛あられの代わりにイースターのお菓子を散らして…。
これはお友達にもらった小さな博多人形のおひな様。
娘のおひなさまはお下げ髪。雅びな表情に心が和みます。
【きょうのクロスステッチ Vol. 41】 by 岡村恭子
VOL.41 弥生 三月 春暦
torsdag den 4. marts 2010
3月の声を聞いた途端に明るくなってきました。
本当に、パーッという感じで明るくなってきました。
冬の間、暗い、暗い、と呪文のように言い続けてきただけに、
窓に差し込む陽光が力強くなり始めた時の喜びはひとしおです。
今朝の家族の挨拶も「おはよう」の代わりに「明るくなったね!」でした。
デンマークは緯度が高いので、冬至と夏至では日照時間の差が
10時間以上も有るのです。今月末には夏時間になりますが、
時計の針を一時間早めると、昼間が益々長く感じられるようになり、
6月の夏至に向かってグングンと言う感じで明るい季節に向かって行く…。
北欧に暮すということは、このドラスティックな日照時間の変化に
一喜一憂しながら、仲良く付き合うことなのだと痛感します。
季節の変化に敏感なのは我々人間だけではありません。
そろそろ巣作りの準備期間に入ったのでしょうか?庭にやって来る
小鳥達も食欲旺盛で、餌を周囲に飛ばしながら一生懸命に啄んでいます。
草花も元気に目覚めて来ました。
まだ雪の残る庭のあちこちからエランティスやクロッカスの芽が
顔を出し始めています。桜の木の芽やレンギョウの枝先もふっくらと
膨らんで来て、芽吹きの気配を見せています。そう言えば、
近所のお花屋さんの店先で梅の花の小枝を見かけました。
生き物全てが冬眠から目覚めて活動期に入った!という感じです。
けれども、気温はまだまだ低くて庭仕事をするには早すぎる。
今しばらくの間、私は園芸の本を眺めながら、昨秋に埋め込んだ春咲きの
花が咲いた時の事や、今夏の庭の様子を想像しては楽しんでいます。
気温が上昇して霜が降りなくなったら、春の庭仕事でたちまち忙しくなります。
長靴を履き、軍手をはめ、頭にバンダナをきりりと?絞めたら、
まず、雪解けの土を掘り起こして新鮮な空気を入れてあげます。その他にも
芝生の間の苔取り作業や、リンゴの木の枝はらい、薮の掃除など、
肉体労働の日々が待っているのです。
それ迄のささやかなお楽しみ。
早咲きのパンジーとパセリの種を買って来ました。
植木鉢に腐葉土のお布団を敷いて、暖かい陽射しの窓辺で寝かしてあげます。
パセリのあかちゃんが育ちますように。
岡村 恭子
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黄色い色はイースターの色。北欧の春の色。
お花屋さんの店先で見かけた梅の花。
パセリの種と日本のお友達に貰った朝顔の種。 どちらも楽しみです。
【きょうのクロスステッチ Vol. 42】 by 岡村恭子
VOL.42 春一番の大掃除
torsdag den 11. marts 2010
スーパーマーケットの広告に掃除道具や洗剤が目立つようになりました。
冬の間、ぴったりと窓を閉めきり、暖炉を焚いたり一日中キャンドルを
灯していたので、室内はかなり煤けてしまっていますが、
暗い季節は部屋の隅の方まで目が届かないし、例えば、薄暗いバーなどに
入った時に感じる穴蔵的な心地良さに似て、少々のホコリなど気にならない、
否、その方がかえって暖かいような気さえするものです。
デンマークではこんな時に“hyggelig”(ヒュックリー)と言います。
本当にみんなが冬の間中ヒュックリー!を連発しながら、キャンドルを灯して
ヌクヌクしていたわけです。
それが、室内に陽光が差し込むようになった途端に、汚れが目立ち始め、
どうにも放っておけなくなる。明るい季節を迎える準備をしたくなります。
本日の気温は+3℃。曇天。少し寒いけれど、私もお掃除開始です。
えいっ!思い切って窓を大きく開けました。一気に新鮮な空気が室内に
流れ込んで、冷たい風もいっそ気持よく感じられます。
デンマークは洗剤の種類が豊富です。
床やガラス磨きに始まり、家具専用ポリッシュなどに混ざって
カルキ除去剤など、日本ではあまり馴染みの無いものまで、
スーパーマーケットの棚には何十種類もの洗剤や専用ポリッシュが並んでいます。
確かに、我が家を例にしても、フローリング、レンガ、大理石、コルクと、
床だけでもこんなにいろいろです。洗剤選びは悩ましく、デンマーク語の
成分説明書を解読しながら首を傾げてしまうこと幾度か。
そうして行き着いたのが、この国で昔から使われて来た万能ソープでした。
名前をブラウンソープと言います。100%自然素材ですから、
床磨きからオーブン調理機の内側までOKという優れものです。
テレビのCMに登場する有名ブランドの洗剤のような派手さは一切無いし、
地味で廉価で店頭でも棚の下の方に並んでいます。真の実力者は目立つ
必要など無いというわけです。
この実力者さえ居てくれれば鬼に金棒。あとは床用の大判雑巾をデッキブラシの
下に敷いてブラシごと拭いて行くだけ、流行りの掃除キットなどは不要です。
要するに一昔前の床磨き方法ですが、
デンマークのおばあちゃん達が見たら、「そうそう、それが一番!」と
大きく頷いてくれそうだなって思っています。
岡村 恭子
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キッチンの窓の寒暖計で気温をチェック!(デザイン:Tommy Larsen)
これが私の床磨きセット。
デンマークの水道水にはカルキが含まれている為、
こまめにカルキを取り除く必要があります。
写真は洗濯機用とコーヒーメーカー用のカルキ除去剤。
【きょうのクロスステッチ Vol. 43】 by 岡村恭子
VOL.43 人とモノとの気長なお付き合い
torsdag den 18. marts 2010
北欧の今頃は三寒四温ならぬ四寒三温、まだコートにマフラー&手袋が
必携です。庭仕事はもう少し待たなければなりません。
そのような訳で、またまたお掃除の話で恐縮ですが、今回は床や窓拭きに
続いてダイニングの壁に取り付けてある、ガラスケースをきれいにした時の
ことです。
ケースの中には椅子のミニチュアなどと一緒に、木製の動物達が鎮座して
います。小熊に小鳥、お友達がデザインした猫、一番下の棚にはワニも
うずくまっている。ケースに納まっている時は、ほとんど見過ごして
いるこれらの置き物を、お掃除ついでに明るい所に出してあげました。
テーブルに並べてみると、なかなかどうして可愛らしい…そう言えば、
他にもサルの親子や家人がデザインした木馬が白、黒、ナチュラルと3頭、
ソファの影には、これまた家人が若い頃デザインしたというダックスフンドが
吠えもせずジッと静かにしています。
ここは玩具屋さん?と我ながら呆れますが、木製ということもあるのでしょう。
違和感なく室内の空間に溶け込んでいます。
みんな、日向に出ておいでー。
お掃除ついでにチークオイルを湿したタオルで、ひとつずつ丁寧に拭いて
あげました。ナチュラル仕上げのモノはオイルで磨くと、更に良い味が出て来ます。
今回に限らず家具や日用品など木工製品は、年代と共に風合いが変化して行く
所が大きな魅力のひとつだと思います。陽に焼けて色褪せたり、
何かの拍子に凹んだり傷付いた箇所に、転んで怪我をした子供に薬を
塗ってあげるように、優しくオイルをすり込んであげる。
そんな人とモノとの気長なお付き合いが大切だよ、と教えてくれているようです。
デンマークには伝統的なクラフトマンシップから生まれた数多くの
優れたデザインの木工製品が有ります。最近はグローバリゼーション化の波に
揉まれて苦労しているようですが、家具デザイナーと一緒に暮す私は、
密かにそんな時代だからこそ、丁寧に作られるデニッシュデザインが意味を
持つと信じています。
おう、玩具のお話から結構ちゃんとしたデニッシュデザインのお話にまで
たどり着けました。ホッ!…。
デンマークに暮して数十年、すっかり北欧の世界が日常になってしまい、
ともすると忘れてしまいそうな大切なことを「きょうのクロスステッチ」を
したためる度に気付かせてくれます。
ありがとう。
岡村 恭子
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一つ一つに懐かしい思い出と愛着がある、我が家の木製玩具&オブジェ
Design: 猿&小熊=Kaj Bojesen
小鳥 =Kristian Vedel
猫 =Chiori Ito
木馬&犬=O&M DESIGN