2011年10月~12月
【きょうのクロスステッチ Vol. 112】 by 岡村恭子
VOL.112 読書の秋
torsdag den. 27 oktober 2011
手袋をはめて買い物に出かけたら小春日和のポカポカ陽気、
手袋を取り、首にぐるぐる巻いていたマフラーも取り、しっかり止めていた
ジャケットのボタンを外しました。
こんなに暖かくて良いのでしょうか?なんだか、地球全体がおかしな具合に
なって来てしまったようで心配ですが、暖かいお陰で西陽が射し始めた午後の
居間は心地よい温室状態です。こんな時はのんびりと日の当たる場所に
陣取って読みかけの本のページを開くのもよいものです。
我が家の居間には私の指定席があります。
もうかれこれ30年以上も前に家人がデザインした椅子ですが、
今もスウェーデンのメーカーで生産、販売され続けているところを見ると
なかなかのロングセラー商品のようです。たっぷりとしたパーソナルチェアは
座り心地抜群で、おまけに回転します。この回転出来るという所がミソで、
私のお気に入りとしてのポイントも高いのです。
陽射しが眩し過ぎたらクルリンと向きを変えられるし、テーブルの上の物を
取る時も家族とおしゃべりする時も、気の向くままにクルクル…。
ソファなどに座っているよりもずっと便利です。
そして、オットマンに足を乗せて深く沈むようにシートに収まり、
読みかけの本のページを開く時が私のささやかな贅沢な時間なのです。
情報の少ない国に住んでいると物足りないこともあるけれど、代わりに
静かさと充分な時間が有ります。刺繍という根気のいる手工芸の世界が
北欧の女性達に愛され伝授されてきたのも、この静かな環境が有ればこそ。
そして、手芸の苦手な私にとっては読書の時間ということになります。
私は文庫本が大好きです。帰国した際には書店をハシゴして文庫本コーナーを
眺めて飽きる事が有りません。文庫本の何が好きか?と聞かれれば、
まず何方が決めたのか?『文庫本』というその秀逸なネーミングに始まり、
ほぼハガキ大というコンパクトサイズ、そして薄いけれど丈夫な紙質、
縦書きの文章というのは一行が長過ぎても短か過ぎても読みにくいものですが、
文庫本はその点でも完璧です。
毎晩ベッドに潜る時、私は必ず文庫本を一冊手に取ります。
子守唄代わりですから数行文字を追う内に夢の中…ということが多いのですが、
これも持ち重みのしない文庫本だから可能なのです。
ヨーロッパの書店にはハードカバーの書籍しかありません。ペーパーバックは
キオスクで新聞と同格の扱いですしペーパーバックに文学書はありません。
源氏物語も文庫本で読める日本は世界に誇れる活字文化国だと私は思っています。
あまりにも身近で見落としがちな素敵なことのひとつだと思います。
岡村 恭子
http://copensmile.exblog.jp/
美しい紅葉もこの次に風が吹いたら全部落ちてしまいそう。
窓越しに今朝の庭の様子です。
庭のリンゴもほぼ全部収穫終了です。これからジャムを作ります。
私の指定席。後方のブルーの寝椅子は家人の指定席です。