2011年10月~12月

【きょうのクロスステッチ Vol. 120】 by 岡村恭子

VOL.120 今年最後のクロスステッチ

torsdag den. 22 december 2011

きょう22日は冬至、 北欧の闇もクライマックスを迎えました。

まだ夜のようにまっ暗なAM7:00 、 このまま冬眠?していたい気持ちを
グッと押さえベッドから抜け出ます。明かりのスイッチを順番に
入れながら階下に行き、キッチンのキャンドルを灯す事から一日が
始まります。朝からキャンドルを灯すのですから、目覚め爽やかという訳
には行きません。でも、冬至を境にほんの少しずつだけれど日照時間が
長くなると思うと、それだけで気持ちが明るくなります。
クリスマス直前という絶妙なタイミングに、これこそ北欧の人々への
最高のプレゼントだ!とさえ思えて来ます。

♪さあ、クリスマス♪クリスマスがやって来た♪
クリスマスのお次はイースターだね♪
違うよ、まだだよ♪その前に断食デーがあるのをお忘れなく♪

これはデンマークの代表的なクリスマスソングです。
プレゼントが沢山置かれたツリーの周りをみんなで手を繋ぎ、
ぐるぐる回りながら歌うのですが、良く聞けば何と気の早い!
もう春のイースターを楽しみにしているではありませんか。事程左様に
春を待ちわびる…北欧の人々の正直な気持ちが出ていて微笑ましいですね。
さあ、歌いながらプレゼントを開けるまでいよいよあと2日となりました。

そして、12月に入ってから” 毎日がクリスマス “ の様子を綴ってきた
このページも今年最後のページとなりました。
締めくくりに冬の庭の様子をご覧頂きたいと思っていたのですが、
とにかく気温が高く、花壇には未だ季節はずれのマーガレットが咲き、
芝生も鮮やかな緑色です。どう見ても北欧の冬景色らしくありません。
天気予報のクリスマス降雪確率予報も早々とゼロ%宣言済み。それどころか
日中の気温が7℃と記録的に暖かいクリスマスになるとの予報です。
どうも、最後までお天気に振り回された年になってしまいましたが、
晴れたと言っては歓び、雨だと言っては嘆いていた『きょうのクロスステッチ :
2011』お楽しみ頂けたでしょうか?
来年も北欧暮らしのエピソードを綴って行きたいと思っています。
刺繍の手を休めてお楽しみ頂ければ幸いです。

********************************************************************************************
今年は生涯忘れられない年になりました。
多大な犠牲の上で私達に教えてくれた様々な事を絶対に忘れず、考え続けて
行く事が大切なのだと強く思います。
これからも自分に出来る事は何か?と考え、実行して行こうと思っています。

新しい年はどうか平和でありますように心から祈りつつ…
Merry Christmas & A Happy New Year 2012

岡村 恭子

http://www.copenhagensmile.weebly.com/
http://copensmile.exblog.jp/



普段ならお花を外に出せないこの季節、
今年はお花屋さんの店先もご覧お通り。

お友達がデザインしたペーパーリースです。
庭には季節外れのマーガレットの白い花が…

【きょうのクロスステッチ Vol. 119】 by 岡村恭子

VOL.119 もうすぐクリスマス☆

torsdag den. 15 december 2011

クリスマスカレンダーも2週間が過ぎ、24日のクライマックに
向かって、街中が気ぜわしい雰囲気に包まれています。

それにしても、去年の今頃は毎朝雪かきに追われていたのに
今年は暖かく、低い空から降ってくるのは白い雪ならぬ冷たい雨です。
この調子では残念ながらホワイトクリスマスは望み薄ですが、
それでも、街はプレゼントを求める人で賑わい、町内の広場には
ツリー屋さんも店開きしました。

娘が幼かった頃はツリー屋さんが店開きするのを首を長くして
待ったものです。夕暮れ時、ランタンを灯したツリー屋さんは、
そこだけポッと明るくて、三々五々品定めに来る人達で賑わいます。
大人の背丈よりも高いツリーの横に、赤ちゃんみたいにチビのツリーが
立てかけてあったりして、ちょっと季節外れの植木市のような風情です。
ぐるぐるに襟巻きをした幼い娘と手をつないでツリーを買いに行った
時の事は今も楽しい思い出です。
そうして、毎年欠かさず購入して来たクリスマスツリーですが、
今年は庭の木の枝をツリーに見立てて飾る事にしました。
さっそく適当な太さのを選んで室内に取り込みましたが、なかなか良い
感じです。ホームメイドのツリーが完成した居間で、年末のご挨拶の
手紙をしたためたり、日本の家族や友人達に送るプレゼントを包んだりして
過ごすのも今頃ならではの楽しいひと時です。
暖炉を焚き、キャンドルを灯せば気分も上々、 エーブルスキーバーという
まん丸いドーナッツや赤ワインベースのホットドリンクで、日増しに
カロリー過多の日々となって行くのです。
(VOL.31「悩ましいクリスマスコンデトリー」参照)

そして、きょうはステッチハウスのお二人と楽しいクリスマスランチでした。
昼下がりのレストランはとても寛いだ雰囲気で、おしゃべりをしていると
時の経つのも忘れてしまいそうです。
延江店長さんは早くも来年5月の東京展示会に向けて、元気いっぱい、
夢いっぱい!…どんな内容になるのでしょうか?今から楽しみですね。
私はデンマーク刺繍の世界が日本で大きく花開くような予感がしています。
文化的にも大いに意味のある、本当にステキな事だと思います。

『今年もお世話になりました。来年もどうぞよろしく!』。。。
そんなご挨拶を交わすのも今回で3回目です。
彼女達の笑顔を前に、ふと、人のご縁の不思議を感じて嬉しくなった
クリスマスまであと10日の午後のひと時でした。

岡村 恭子

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遠くに住む懐かしい人達にプレゼントを送るのも楽しみのひとつです。

街の広場はクリスマスマーケットで賑わっています。

クリスマスランチは只今人気のレストラン『Nyhavn 14』で。
スパークリングワインのグラスを重ねて、昼下がりからイイ気持ち。。。

【きょうのクロスステッチ Vol. 118】 by 岡村恭子

VOL.118 師走のトンテンカン

torsdag den. 8 december 2011

このところ、早朝から職人さんが出入りして慌ただしい毎日です。

5ヶ月も前の事なので覚えている方も少ないと思いますが、
記録的な集中豪雨でコペンハーゲン中が浸水した夏の大雨騒動(VOL.96)
あの時、我が家の約170㎡ある地下スペースも最深で20センチ程浸水して
しまいました。(排水作業とその後の大掃除の大変だったこと!)
湿気が大敵だということで、水がひいた後も業務用のレンタル除湿機を
50日間フル稼働、どうやらカビの発生は免れたものの
メンテナンスが必要になった箇所が一カ所ならず判明しました。

工務店にチェックを頼み、見積もりを取り、同時に災害保険の申請をし、
保険会社の審査終了後、あらためて工務店に正式に仕事依頼する…
この一連の手続きに4ヶ月かかりました。こういう時デンマークは不思議な
くらい時間がかかります。最初のうちは進展しない状況に一人焦って
いたのですが、そうこうしているうちに暖房を入れる季節になり、
今や地下室の乾燥状態も完璧です。このままでも日常生活に支障はないし、
外は寒くて暗いし、おまけにもうすぐクリスマスです。
今さら面倒だと思い始めた頃になって工務店から連絡が入り、その途端に
翌日から工事開始と相成りました。
散々待たせておいて、いざ始まると早い早い! こちら側の都合など気に
する様子も無く、初日には合計5人の職人さんがやって来ました。
マスター(棟梁)の指示に従い工事する箇所をドリルや金槌で
ガンガン壊し?始め、翌日は早朝から地下ランドリー室のタイル修復と
配水管工事が始まりました。
前回の集中豪雨では、大量の雨水が各家庭の配水管を逆流して流れ込んだことが
大問題になりましたが、今回我が家に設置されるのはその逆流を防ぐ画期的な?
配水管システムなのだそうです。
実力の程は次回の集中豪雨までお預けですが、ちょっと楽しみになってきました。

デンマークの職人さん達の朝は早く、毎朝8時には地下でトンテンカンと
いう音がし始めます。早く始めるかわりに早く終わる。午後2時頃には
その日の仕事終了です。 職人さんと言ってもマスター以外は20代前半の
若者達という感じです。 デンマークでは今も職人の世界に伝統的な
マスター制度の名残が有り、腕の良い職人さんになるには優秀なマスターの元で
見習いから始めることが最短距離なのだそうです。

午後2時、職人さんが帰った後のランドリー室には塵ひとつなく
気持ち良いくらいきれいに片付けられていました。
マスターの指導が良いのだと思います。
クリスマスまでには全てのメンテナンスが終了しますように☆

岡村 恭子

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デパートIllumのクリスマスディスプレイ。
レトロな演出でノスタルジックな北欧のクリスマスという感じです。

日曜日の朝のお楽しみ。今年のアドベンツカレンダー。

これが最新配水管システム。効果を期待しましょう。

【きょうのクロスステッチ Vol. 117】 by 岡村恭子

VOL.117 赤い♡のクリスマス

torsdag den. 1 december 2011


先週末は台風が通過、コペンハーゲンと南スウェーデンを挟んだ
狭〜い海峡をものすごい勢いで駆け抜けました。
瓦屋根が飛ばされるかと思う程の強風、木々の揺れる音、
何かが転がったり倒れたりする音、遠くでサイレンの音…。
わけも無く不安にさせる様々な音に眠れぬ夜を過ごした台風一過の翌朝、
さっそく家の周囲点検です。
庭は芝生が隠れてしまうほどの大量の落ち葉や木の折れ枝などで埋もれ、
雨樋も下から見えるほど葉っぱで一杯になっていましたが、その他は
お気に入りのテラコッタの植木鉢が倒れて割れてしまった以外は、
どうやら無事のようです。
家人と片付けをしながら大きな破損が無かった事を喜びました。

気を取り直して、クリスマスプレゼントを探しがてらショッピングです。
街は前夜の台風など嘘のように賑わい、点灯式を終えたばかりの
市庁舎広場のクリスマスツリーもどうやら無事だったようです。
その広場で只今人気なのが『 Wall 』(企画 : コペンハーゲン市立博物館)
というインスタレーションです。プロジェクトのきっかけは地下鉄の
工事現場から次々と出土する中世時代の発掘品だそうです。
この機会にコペンハーゲンの歴史を地域住民に知ってもらおうというもので、
タッチパネルでコペンハーゲンの歴史やトピックスなどを年代、場所など
様々な角度から検索出来ます。見た目よりも中身が濃く、街角イベントだから
と侮れない充実の内容ですが、いつまでも遊んでいられません。
急ぎ足でショッピングです。

ストロイエ通りは今年も道行く人々の頭上で赤い♡のオーナメントが
揺れています。このオーナメントは私がデンマークで暮らし始めた当時から
少しも変わっていません。多分これからもずっと変わらずクリスマスの
シンボルであり続けるのでしょう。何事もめまぐるしく変化する時代の中で、
コペンハーゲンのクリスマスを彩る風物詩的存在です。そう言えば
ご存知の方も多いと思いますが1kr. 2kr. 5kr.コインにも可愛らしい♡が
付いています。デンマークの人々はハートに博愛精神を託し、表現しているの
ではないかなあ、と私は思っています。

そして、いよいよ12月になりました。これから聖夜まで北欧は毎日が
クリスマスです。今年の冬至は22日、聖夜の2日前。寒さ厳しい本格的な冬は
まだまだこれからだけれど、冬至が過ぎればもうシメタもの、もうこれ以上は
暗くならないし、ほんの少しずつだけれど、また明るくなって行く!… 
もしかしたら赤い♡は北欧の暗い季節の灯火なのかもしれないな、と 
そんな事を思ったりしています。

岡村 恭子

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チボリもクリスマスオープンです。

市庁舎前広場の『Wall』タッチパネルインスタレーション。

ストロイエの赤いハートはクリスマスの風物詩。

クリスマスが近づくと焼き菓子を焼いて、
いつでもつまめるようにテーブルに置いておきます。

【きょうのクロスステッチ Vol. 116】 by 岡村恭子

VOL.116 クリスマスのプレゼント事情

torsdag den. 24 november 2011


ニュースで市庁舎前広場に設える大きなツリーを伐採しているところを
放送していました。50年、手塩にかけて育てた選りすぐりの一本だそうです。
今週末はそのツリーの点灯式、今年もクリスマスシーズンが始まります。
そして、誰もがプレゼントに頭を悩ます頃となりました。

キッチンのコーナーに山となったデパートのクリスマスカタログ、
家事の合間などに「どれどれ…」なだと言いながらページをめくるのですが、
ワクワクするのも最初だけ、内容は何れも似たり寄ったりで、これぞ!と
いうようなアイデア溢れるアイテムは見当たりません。
おまけにいつの頃からでしょうか、最近ではせっかくのプレゼントも
気に入らない時は返品や換金する事も憚らないようになってしまい、
北欧のクリスマスも実はかなり現実的な様子です。

ところで、ここデンマークは離婚率が高い事でも知られています。
パーティーに離婚した同士がお互いの新しい家族を伴って
出席することも珍しくない。たまたまそんな場所に同席すると、私の方が
戸惑ってしまいますが、本人達は案外ケロリとしています。お互いの
新しい人生を認め合い、楽しもうとする逞しさを感じます。
離婚が社会的ダメージにならないし、子供の養育に関しては法的にもしっかり
フォローされていて心配が無いのも手伝ってか、いとも簡単に
…と言ったら何処からか反論が出そうですが、私の目から見ると少々
こらえ性が無いなあ、という印象は否めません。

話が少し逸れてしまったようですが、そんなお国柄ですから再婚した途端に
家族が増えて、クリスマスプレゼントを買い揃えるのも一苦労!となります。
たとえ夫婦が別れてしまっても子供にとっては両親に変わりなく、
このチャンスに、と親はプレゼントに愛情を託します。子供達は本当の両親、
新しい父親や母親、本当の祖父母に新しい叔父叔母さん…新旧家族が入り交じり
連日プレゼント攻めということになります。
知人の子供が屈託なく喜んでいる様子に、他人ながら安堵する一方で、
健気に平気を装っているのかも知れないな、と思ったりしたものです。

そんなこんなで家庭ごとに事情は異なっても、クリスマスには家族が集い
ご馳走を囲み沢山のプレゼントのリボンが解かれ、子供達が平和な眠りにつく、
昔からの伝統は今も変わらず息づいています。
聖夜まで丁度ひと月、我が家は様々なことの起こった今年を振り返りながら
静かに過ごす予定ですが、やっぱりプレゼントは上げたいし貰うのも大好き!
…と言うわけで、そろそろお目当てのモノを探しに出かけようと思います。

岡村 恭子

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お花屋さんの店先にはクリスマスリースがたくさん!
ナチュラルな素材を上手に使ってアレンジしています。
手作りリースのヒントになりそうですね。


デンマークファンにはお馴染みのあの店この店からクリスマスカタログが…。

【きょうのクロスステッチ Vol. 115】 by 岡村恭子

VOL.115 秋晴れの明るい話題

torsdag den. 17 november 2011

ここ数日お天気に恵まれ、明るい陽射しを受けて気持ち良い日々です。
太陽の位置が低いので、真横からの陽光がサーッと部屋の奥まで
射し込んで室内を明るく照らします。もうそれだけでとても嬉しい。
北欧では南西向きにリビングルームを配置するのが一般的です。
我が家のリビングとダイニングルームも南西向きです。
日照時間の短い季節に少しでも外光を室内に取り込もうとする、
これは北欧型『暮らしの知恵』ですね。
窓辺に置いたゼラニウムに水をあげながら、おまじないのようにわざと
ゆっくり言ってみました。…「お天気が続いてくれますように…」

何事もお天気次第の北欧暮らし。
ペダルも軽く自転車で近所のスーパーマーケットに出かけたら、ほらっ!
やっぱり今日は良い日。何故って、店先に山積みのお塩発見です。
お塩といってもお料理用ではありません。
雪が降った時に溶解用に使用する、その名もズバリ!『道路塩』です。
私は家に飛んで帰り、たまたま在宅で仕事をしていた家人を急かして
車で出直しました。 1袋20kgもあるのでさすがに自転車では無理
なのです。取りあえず3袋、計60kgを購入して、ほっと一安心です。
何をそんなに慌てるのか?とお思いでしょうが、この道路塩、
いつも有ると思ったら大間違いなのです。一度雪が降り出したらたちまち
売り切れてしまい、その後なかなか手に入らなかったりするのです。
雪が多かった昨シーズンは市当局が確保していた公共道路用の塩も
底をつく程の深刻な塩不足でした。今回は売り切れないうちに購入出来て
ラッキーでした。

そして、もうひとつ秋晴れに相応しい話題。
娘がファイナリストに選ばれたコンペティション『クリエーティブビジネス
カップ大賞』の授賞式に招待され、コペンハーゲン市庁舎に行ってきました。
1894年から11年もの歳月をかけて完成したという市庁舎は、
マホガニーやオークなど黒光りするくらい磨かれた木材、モザイクタイルや
階段部分の美しい壁画など、随所に長年大切に使われて来た建築だけが持ち得る
趣があります。そんな重厚さとは対照的に明るい雰囲気に包まれた会場で
コンペティションの授賞式が執り行われました。
デンマークと日本、大好きな二つの国を結ぶデザインビジネスは
始まったばかりです。これを機に彼女の夢は更に大きく膨らんで行く事でしょう。
会場を後にした時に、丁度コペンハーゲン市庁舎の時計台が4時を鐘を打ち、
折しも太陽がチボリ公園の向こうに沈みかけ黄金色に輝いていました。
明日も晴れてくれますように。。。

岡村 恭子

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『クリエーティブビジネスカップ大賞』
詳しくは下記をご覧下さい。
SÆSONのページで本人がコンセプトを説明しているPV : ビデオが観られます。
http://www.ayanomimi.com/


コペンハーゲン市庁舎

重厚なインテリアの市庁舎内

クリエーティブビジネスカップ大賞 授賞式風景


アンデルセンもチボリの向こうに沈む夕日を眺めているようです。

【きょうのクロスステッチ Vol. 114】 by 岡村恭子

VOL.114 芸術の秋

torsdag den. 10 november 2011

街路樹の落ち葉が風にカサコソと乾いた音を立てながら風に舞っています。
枯れ葉の舞い踊るシーンが印象的だった、映画「アメリカンビューティー」の
ラストシーンを思い出しました。
秋、人は木の葉が落ちる姿に人生の悲哀を感じるようです。
でも、落葉は言い換えれば再生の兆し、やがて来る芽吹きの準備の合図なのです。
春の大震災からちょうど8ヶ月が過ぎました。
何億年もの昔に誕生して以来、様々な現象を繰り返しながら豊かな自然環境を
育んできた地球という惑星。人類もその雄大な営みの中で生息しているのだ、
ということに思い至り、謙虚にならなくては行けないと改めて思います。

晩秋の庭は静かです。見上げた空は薄いグレー色に霞んで、朧げな太陽が
低く遠くに浮かんでいます。
ここ数日で急に冷え込んで来た大気の中で植物達も密やかに土中に
戻ろうとしているかのようです。
そんな秋も深まって来た昼下がり、久しぶりに美術館に出かけました。

ビールで有名なCarlsberg社を創設したCarls Jacobsenのプライベート
コレクションで知られるNy Carlsberg美術館で、彼の生誕200年を
記念した特別展「ゴーギャン展」が開催されているのです。
Jacobsen氏は印象派の絵画を蒐集、ゴッホ、マネ、モネ、ドガなど、
芸術に疎い私でさえ、あらっ?どこかで見たことが有るような…という名作を
数多く所蔵しています。中でも有名なのがゴーギャンのコレクションです。
ゴーギャンは印象派というよりもプリミティブな手法を生み出した
タヒチ時代の作品で有名ですが、実はタヒチに行く前に一年間コペンハーゲンに
暮らしていたのだそうです。そんなこともあってか、ゴーギャンはデンマークの
絵画ファンにも人気があるようです。
同美術館は市庁舎から徒歩3分、チボリのお隣りに有り、気軽に立ち寄れるのも
魅力です。
正面ホールの天井まで木々が茂るガラスドーム、アーチ型のバルコンを巡る回廊、
モザイクタイルの床など、重厚なヨーロッパ建築の中に身を置いているだけで
心が安らぎます。
絵画の他にもエジプト、ギリシャ、 メソポタミア時代の彫刻や出土品なども
解り易く展示されているので子供連れで訪れる人も多く、
こじんまりしているけれど、なかなか充実した内容の美術館です。
一個人のコレクションを国家に寄贈、今では誰でも気軽に鑑賞できるのですから
素晴らしい事ですが、よーく考えるとビール会社のJacobsen氏が惜しみなく高価な
絵画を蒐集が出来たのは、商売繁盛のお陰、ということは?…ビール大好きな
皆さんの貢献度大とも言えそうですね。 

岡村 恭子

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Ny Calsberg美術館の外観

ゴーギャン展は新館で開催されています。建築的にも美しい。

亜熱帯の木が生い茂る正面ホールはまるで植物園のよう。


バルコンのカフェは行列が出来るほどの人気です。

【きょうのクロスステッチ Vol. 112】 by 岡村恭子

VOL.112 読書の秋

torsdag den. 27 oktober 2011

手袋をはめて買い物に出かけたら小春日和のポカポカ陽気、
手袋を取り、首にぐるぐる巻いていたマフラーも取り、しっかり止めていた
ジャケットのボタンを外しました。
こんなに暖かくて良いのでしょうか?なんだか、地球全体がおかしな具合に
なって来てしまったようで心配ですが、暖かいお陰で西陽が射し始めた午後の
居間は心地よい温室状態です。こんな時はのんびりと日の当たる場所に
陣取って読みかけの本のページを開くのもよいものです。

我が家の居間には私の指定席があります。
もうかれこれ30年以上も前に家人がデザインした椅子ですが、
今もスウェーデンのメーカーで生産、販売され続けているところを見ると
なかなかのロングセラー商品のようです。たっぷりとしたパーソナルチェアは
座り心地抜群で、おまけに回転します。この回転出来るという所がミソで、
私のお気に入りとしてのポイントも高いのです。
陽射しが眩し過ぎたらクルリンと向きを変えられるし、テーブルの上の物を
取る時も家族とおしゃべりする時も、気の向くままにクルクル…。
ソファなどに座っているよりもずっと便利です。
そして、オットマンに足を乗せて深く沈むようにシートに収まり、
読みかけの本のページを開く時が私のささやかな贅沢な時間なのです。

情報の少ない国に住んでいると物足りないこともあるけれど、代わりに
静かさと充分な時間が有ります。刺繍という根気のいる手工芸の世界が
北欧の女性達に愛され伝授されてきたのも、この静かな環境が有ればこそ。
そして、手芸の苦手な私にとっては読書の時間ということになります。

私は文庫本が大好きです。帰国した際には書店をハシゴして文庫本コーナーを
眺めて飽きる事が有りません。文庫本の何が好きか?と聞かれれば、
まず何方が決めたのか?『文庫本』というその秀逸なネーミングに始まり、
ほぼハガキ大というコンパクトサイズ、そして薄いけれど丈夫な紙質、
縦書きの文章というのは一行が長過ぎても短か過ぎても読みにくいものですが、
文庫本はその点でも完璧です。
毎晩ベッドに潜る時、私は必ず文庫本を一冊手に取ります。
子守唄代わりですから数行文字を追う内に夢の中…ということが多いのですが、
これも持ち重みのしない文庫本だから可能なのです。
ヨーロッパの書店にはハードカバーの書籍しかありません。ペーパーバックは
キオスクで新聞と同格の扱いですしペーパーバックに文学書はありません。
源氏物語も文庫本で読める日本は世界に誇れる活字文化国だと私は思っています。
あまりにも身近で見落としがちな素敵なことのひとつだと思います。

岡村 恭子
http://copensmile.exblog.jp/


美しい紅葉もこの次に風が吹いたら全部落ちてしまいそう。

窓越しに今朝の庭の様子です。

庭のリンゴもほぼ全部収穫終了です。これからジャムを作ります。

私の指定席。後方のブルーの寝椅子は家人の指定席です。

【きょうのクロスステッチ Vol. 113】 by 岡村恭子

VOL.113 冬時間とキャンドルの関係

torsdag den. 3 november 2011

冬時間になりました。
毎年、時計の針を1時間遅くした最初の朝だけは寝坊ができて
得した気分になります。たった1時間の差ですが、とても明るく感じ
目覚め爽やかです。ところが、その分日没が早くなってしまう。
昨日まで夕方6時だったのが、冬時間にした日から5時になるわけ
ですから、まだ夕方なのに真っ暗!になってしまいます。
このトリッキーな時差に慣れるのには、どうしたって数日かかります。
それに目覚め爽やかなのもここしばらくの間だけ、日増しに太陽は
遠ざかり、終日室内に照明が必要になるのです。

北欧にはいわゆる梅雨が無いので6月はもう夏、夏至に向かい日増しに
明るくなり、人々は仕事もそっちのけで日光浴にいそしみます。
やがて、真上から輝いていた太陽が少しずつ低くなり、
つるべ落としの秋が来て、更に急降下で冬に突入してしまう。
緯度の高い北欧に暮らしていると季節の移行を気温の高低ではなく、
日照時間の長短で実感します。夏至を境に確実に暗くなって行く。
そして、冬時間になった途端に日照時間が ”ガタン!”と音をたてるように
短かくなってしまったような…、階段を3段くらい飛び降りしてしまったような…
そんな気持ちになってしまうのです。
それほど北欧の四季のグラデーションは極端です。
でも、極端だからこそ上手に季節を楽しむ術を心得ているのかもしれません。
室内での暮らしが 中心になるこれからの季節、インテリアを工夫して暮らしを
楽しく演出するのが上手なのも なるほどね、と頷けます。そして、
丁度今の季節になると恋しくなるのがキャンドルです。

スーパーマーケットには色もカタチも様々なキャンドルが紙ナフキンや
テーブルクロスなどと一緒にカラーコーディネートされて並んでいます。
カラフルでなかなか楽しい。お肉や野菜を選ぶような気安さで買える
キャンドルは季節を問わず手軽な生活必需品なのです。
特にこれからの暗い季節、人々はをキャンドルを上手く生かして心地よい
空間を演出します。
部屋中を隅々まで明るくせずスポット照明と併用することで
陰影のある空間が生まれます。 キャンドルの揺らめきはほの暗い方が
美しく効果的なのですね。

この秋は節電を兼ねて室内の陰影礼賛。照明を工夫してみるのも一興かも
しれません。見慣れた空間が新しい表情を見せてくれるはずです。

岡村 恭子


ホームページを新しくしました。
まだ未完成ですが、時間のある時に少しずつ更新して行こうと思っています。
http://www.copenhagensmile.weebly.com/



深い茶黄色、ボルドー色… 庭は晩秋の彩りです。

紅葉の中で月桂樹の葉はツヤツヤの緑色。乾燥させてお料理に大活躍です。


簡単な食事の時にもキャンドルは欠かせません。

【きょうのクロスステッチ Vol. 111】 by 岡村恭子

VOL.111 カルチャーナイト 2011

torsdag den. 20 oktober 2011

昨夜一陣の風が吹いて、庭はすっかり落ち葉で埋もれてしまいました。
今年は天候不順で庭の木々も紅葉時期を迷っているようでしたが、
それでも芝生の上は一面桜の黄茶色い葉の絨毯を敷いたようになりました。
公園や街路樹も紅葉して、深まり行く北欧の秋の景色を彩っています。

例えば運動会や文化祭の声を聞くと 秋本番!と思うように
コペンハーゲンでは”カルチャーナイト”(VOL69でも紹介)が
話題に上り始める頃になると秋も深まって来たな、と実感します。
ちょうど学校が秋休みの金曜日の夜6時から12時迄、わずか6時間だけ
という決まりですから、シンデレラでなくても慌ててしまいそうですが、
人々はこの時間限定のイベントを大いに楽しみます。
カルチャーナイトは毎年良いお天気になる、というジンクスに違わず、
今年も風のない穏やかな秋の宵となりました。

私も娘と待ち合わせて出かける事にしました。
夕食後の外出は久しぶりです。
私に限らず主婦は夕食の準備を始める頃から毎日家にいて雑事に追われる。
まあ、当然と言えば当然ですし、用事もないのに夜遅く外を歩いても良い事は
無さそうです。でも、たまには気分転換に夜の外出も良いかもしれません。
家人に留守を頼んで外に出ると、既に日が暮れて夜空に星が瞬いています。
ついこの間まで夕食後も庭で寛いでいたのが嘘のようです。
そんな小さな発見も新鮮に感じられます。

バスとメトロを乗り継いで街に出ると昼間のような賑わいです。
家族連れも多く、子供達は夜中までイベントを楽しめるとあって
一様にはしゃいでいます。動物園も植物園もプラネタリウムも夜中の
12時までオープン!なのです。人気スポットの国会議事堂は長蛇の列なので
パスし、私達は迷わず技術専門学校のイベントに行きました。
毎年恒例となったデザイナーと技術学生のコラボレーション作品が展示
されているのです。家人も学生の為に毎年デザインを提供しています。
若者達に少しでも家具作りの楽しさを伝えられたら、そして、
一人でも多くの優れた家具職人が育ってくれたら、と思っているそうです。
今年は可愛らしい子供用家具でした。学生さんも楽しんで作ってくれたの
ではないかな?と思っています。
隣のホールではTーシャツやトートバッグに自分で好きな絵を描こう!という
ワークショップが開かれ賑わっていました。
文化祭のような和気あいあいとした雰囲気に包まれたイベントを
楽しんで帰宅すると、暖かい珈琲が待っていました。
たまには”主婦の夜の外出”も良い効果があるのかもしれません。

岡村 恭子
http://copensmile.exblog.jp/


公園も紅葉して。

映画館ではありません。技術学校の正門です。

ワークショップの様子。みなさん真剣に図案を考案中。

展示風景から。こんな感じの子供用家具でした。

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