2011年10月~12月
【きょうのクロスステッチ Vol. 114】 by 岡村恭子
VOL.114 芸術の秋
torsdag den. 10 november 2011
街路樹の落ち葉が風にカサコソと乾いた音を立てながら風に舞っています。
枯れ葉の舞い踊るシーンが印象的だった、映画「アメリカンビューティー」の
ラストシーンを思い出しました。
秋、人は木の葉が落ちる姿に人生の悲哀を感じるようです。
でも、落葉は言い換えれば再生の兆し、やがて来る芽吹きの準備の合図なのです。
春の大震災からちょうど8ヶ月が過ぎました。
何億年もの昔に誕生して以来、様々な現象を繰り返しながら豊かな自然環境を
育んできた地球という惑星。人類もその雄大な営みの中で生息しているのだ、
ということに思い至り、謙虚にならなくては行けないと改めて思います。
晩秋の庭は静かです。見上げた空は薄いグレー色に霞んで、朧げな太陽が
低く遠くに浮かんでいます。
ここ数日で急に冷え込んで来た大気の中で植物達も密やかに土中に
戻ろうとしているかのようです。
そんな秋も深まって来た昼下がり、久しぶりに美術館に出かけました。
ビールで有名なCarlsberg社を創設したCarls Jacobsenのプライベート
コレクションで知られるNy Carlsberg美術館で、彼の生誕200年を
記念した特別展「ゴーギャン展」が開催されているのです。
Jacobsen氏は印象派の絵画を蒐集、ゴッホ、マネ、モネ、ドガなど、
芸術に疎い私でさえ、あらっ?どこかで見たことが有るような…という名作を
数多く所蔵しています。中でも有名なのがゴーギャンのコレクションです。
ゴーギャンは印象派というよりもプリミティブな手法を生み出した
タヒチ時代の作品で有名ですが、実はタヒチに行く前に一年間コペンハーゲンに
暮らしていたのだそうです。そんなこともあってか、ゴーギャンはデンマークの
絵画ファンにも人気があるようです。
同美術館は市庁舎から徒歩3分、チボリのお隣りに有り、気軽に立ち寄れるのも
魅力です。
正面ホールの天井まで木々が茂るガラスドーム、アーチ型のバルコンを巡る回廊、
モザイクタイルの床など、重厚なヨーロッパ建築の中に身を置いているだけで
心が安らぎます。
絵画の他にもエジプト、ギリシャ、 メソポタミア時代の彫刻や出土品なども
解り易く展示されているので子供連れで訪れる人も多く、
こじんまりしているけれど、なかなか充実した内容の美術館です。
一個人のコレクションを国家に寄贈、今では誰でも気軽に鑑賞できるのですから
素晴らしい事ですが、よーく考えるとビール会社のJacobsen氏が惜しみなく高価な
絵画を蒐集が出来たのは、商売繁盛のお陰、ということは?…ビール大好きな
皆さんの貢献度大とも言えそうですね。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.weebly.com/
http://copensmile.exblog.jp/
Ny Calsberg美術館の外観
亜熱帯の木が生い茂る正面ホールはまるで植物園のよう。
バルコンのカフェは行列が出来るほどの人気です。