2015年1月~3月

【きょうのクロスステッチ Vol. 271】 by 岡村恭子


VOL.271 今年もどうぞよろしく!

torsdag den. 8 januar 2015


新年明けましておめでとうございます。
今年もコペンハーゲンから日々の暮らしのお便りをお届けして行きたいと
思います。どうぞ刺繍の手を休めてお楽しみ下さい。

デンマークでは大晦日からシャンパンと花火で賑やかに過ごした後は
街中がシーンと静まり返ってしまいます。道路には花火の残骸が散乱して、
“ 強者どもが夢の後 “ 状態。どうにも「清々しい」とは言いがたいのですが、
その代わり、元旦明けの翌2日から素早く日常に戻ります。
これはもう見事な早業です!
人々はクリスマスシーズンの甘くハイカロリーなご馳走の日々から
一挙ダイエットモードに。街はキラキラ輝くクリスマスイルミネーションから
派手なバーゲンセールの張り紙に早変わりです。
例えば映画の幻想的な夢のシーンが一瞬でパッと明るい昼下がりの場面に
一転したような、ちょっとお腹でクスッと可笑しくなってしまうくらいに、
それは見事に周囲の雰囲気が一変します。
そんな北欧の呆気ないお正月ではありますが、我が家ではせめて元旦くらいは
と、おせちのまねごとを作りテーブルを囲みます。
その後は、半紙に筆と墨汁を並べて書き初めです。
各々好きな言葉を書いてゆきます。筆を手にして「さて何をか書こうか?」と
頭をひねるのも気分が改まって良いものです。今年も家族それぞれ
ユニークな言葉が並びました。
そして、もうひとつの元旦のお楽しみ、それは日本の家族や友人達に電話で
新年のご挨拶をすることです。今年は電話に代わってスカイプが大活躍でした。
スカイプの素晴らしい点は何と言っても相手の姿を見ながらおしゃべり
出来ことです。電話は一対一ですが、スカイプはみんなの顔を見ながら
おしゃべり出来る。それだけでも充分嬉しいのに、何時間話しても無料という
のですからこれ以上有り難いことは有りません。長電話をした後の国際通話料金
の請求書にプリプリ!していたのも今は昔、テクノロジーの進歩に感謝しつつ
スカイプし放題、まるで家族と一緒に過ごしているようなひとときを楽しみました。

お正月明けの、めずらしく朝から青空が広がった昼上がり、
家人と連れ立って初詣代わりの散歩に出かけました。
海岸線の向こうまで透き通るような青空が広がっています。
初春という言葉がピッタリです。ああ、何と気持ち良いのでしょう 。
お日様に顔を向けて日光浴をしている人もいます。
王宮広場では丁度衛兵の交代式をしていました。
宮殿の塔に大きな旗が翻っています。女王さまがもご在宅の印です。
窓のカーテン越しに衛兵の様子をご覧になっているかも知れません。
そういえば、思いなしか兵隊さんもキリリとしている様子でした。



岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/





この大きな旗が揚がっているときは女王様が宮殿にご在宅です。



どんなに寒くてもジッと動かない衛兵。早く交代して温まりたい事でしょう。



この日は隊列を組んでの大きな行進の日でした。







街角の花屋さんにも早春の花が並び始めて…気持ちが明るくなります。

【きょうのクロスステッチ Vol. 272】 by 岡村恭子


VOL.272 不器用返上!・・・できるかな?

torsdag den. 15 januar 2015


ヨーロッパは年明け早々テロ騒ぎで不穏な幕開けとなってしまいました。
おまけに先週末は2つの台風が立て続けにデンマークの上空を通過、
自然界も愚かな人間達に怒っているかのようでした。
この先はどうか平和な一年になるようにと願うばかりです。

先週の土曜日、マーケット(Torve Hallen)に買い物に出かけると、
https://www.stitchhouse.jp/hpgen/HPB/entries/578.html
台風接近で暗雲立ちこめる中、最寄りのNørport 駅の工事完成式典が
開催されていました。そうか、ようやく完成したのね、と頷きつつ、
しかし荒れ模様のお天気です。完成式典を横目に急ぎ買い物を済ませ帰宅、
こういう日は家でのんびり過ごすに限ります。お菓子を焼いたり、
本を読んだり、文章をしたためたり…に加えて最近は編み物をするという
楽しみが出来ました。手芸には縁遠くステッチハウスのページを羨望の
眼差しで眺めている私が編み物デビューですから、これは我ながら画期的な
出来事なのです。そもそもは昨年末の里帰りの際、気まぐれに毛糸と編み棒を
トランクに潜らせたのが事の始まりでした。時差ボケで寝付けない真夜中に
編み始めたら止まらなくなりました。…と言っても難しいことはできないので
ひたすら長く編んで行く。完成したらマフラーにしかなり得ないという代物です。
自然&当然のように家族のマフラーがどんどん完成して行きます。
迷惑がるかと思ったら存外喜んでくれている様子にすっかり気を良くして
現在も進行形です。ふうんわりとした毛糸を触っていると気持ちが安らぎます。
この調子で行けば刺繍に挑戦!も夢では無いかもしれません。
というわけで、今年は “ 不器用恭子返上 “ を目標にがんばります。

それにしても、年が明けてからも暖かい毎日です。
いっそこのまま春になぁれ…と思う私の気持ちを見透かすように、
天気予報キャスターがニッコリ笑って「来週は寒波襲来 ! 」と断言しました。
やっぱりそうは上手く問屋が下ろしてくれない、と分かったからには
早めに「お塩」を買いに行かないと売り切れてしまう!
…そうです。歩道の解雪用の塩の買いだめです。 暖冬なものだから
解雪用の塩のことなどすっかり忘れていました。多分ご近所の人も皆同じ
事を考えるので、雪が降り始めると忽ち売り切れてしまうのが目に見えています。

次回は雪かきで忙しく、編み物どころではなくなっているかもしれません。



岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/









お花屋さんで「小さな春」を発見!… 寒桜の蕾の小枝と色鮮やかなアネモネ。



進行形の編み物です。ひたすら鹿の子編みの練習で長さ2mになりました。



N.ANxrport駅(地下駅)の完成式、台風接近中というのにたくさんの人で賑わっていました。
特設展望台?の人達はみんな寒そうに風に煽られていました。 

【きょうのクロスステッチ Vol. 273】 by 岡村恭子


VOL.273 離婚も簡単?!デジタル先進国

torsdag den. 22 januar 2015


先週の「寒波襲来!吹雪になる」という天気予報が見事に外れて、
解雪用に買った塩もまだそのまま置きっぱなし、久しぶりの雪景色を
載せようと張り切っていたのに残念ながら無理のようです。
ようやく編み上がったマフラーは家人の首に巻き付けました。
雪かきの時に使うと喜んでいましたが、その雪かきもお預けです。
冷たいミゾレまじりの雨で濡れた庭は何だか淋しそう…。
それでも年明けから3週間が過ぎて、少しずつ日が延びて来たのを
感じるようになりました。今が辛抱我慢の北欧暮らしです。
僅かな春の兆しを日常に見つけながら過ごしたいと思っています。

ところで、世界一のデジタル国を目指し着々とその方向に進んでいる国=
デンマークに暮らしていると「私はアナログ人間です。」などと
言っていられません。ネットバンキング化で街角から銀行の姿が激減、
市役所からの通知もデジタルメール、学校の授業もますますデジタル化が
進んでいます。ペンで文字を書けなくなると心配な一方で、小学生でも
非常に上手に使いこなしているのには感心します。
ノートパソコンの中に教科書も辞書も入っているのですから、いやはや
重い本を鞄に入れていた時代は遠い昔となりました。職場のデスクにも
書類の山は見当たらずスッキリ!しています。仕事の出来る人ほど
デスク周りがきれいというのがこの国の常識なのだそうです。
国ぐるみで効率&能率アップ、紙類=資源の無駄遣いを無くして一石二鳥。
こういう時、デンマークは見事なほどシステム化が上手です。
市民サービスのホームページも見易く充実しています。
暇な時に見ておくと何かの時に役立つかもしれない…どれどれ…
職場、学校、年金、引っ越し、デジタルポスト、家族と子供 etc.
まだまだありますが、取りあえず家族のページに入ってみると、結婚、育児、
教育、引っ越し etc.そして離婚…参考の為に開いてみましょう。
すると親権をはじめ、離婚後のエコノミー、養育費など様々な項目の中に
「もしも両親が離婚した場合」という子供の立場の手引きもあります。
微に入り細にいり、懇切丁寧な手引きになっています。それでも不明な場合は
メールまたは最寄りのサービスセンターに行けば職員が親切に教えてくれる。
さすが福祉国家だと感心します。離婚届けもインターネット上で簡単にできる
ようですよ。離婚が日常茶飯事のデンマークならでは、と思わず笑って
しまいました。

昨年度の20才〜75才を対象にした調査で、コンピューターを使える人は
20才〜40才ではほぼ100%、60才以上でも85%だったそうです。
平均したら95%です。今年は全員インターネットを使いこなす様になるでしょう。
習うより慣れろ。私も負けずについて行かなくっちゃ!と思っている所です。



岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/





日曜日の遅い朝、キッチンでニュースを見ながらのんびり過ごします。



暖冬のお陰で暮れから何度も咲いては散る小さなピンクの花。
この木のデンマーク名は「Japanske Kiasbærtræ= 日本の桜」なのです。



どっさりとチューリップの山!みんな気軽に買って帰ります。



ストロイエから国会議事堂を望む。雲の合間から青空が…嬉しいな。

【きょうのクロスステッチ Vol. 274】 by 岡村恭子


VOL.274 日本のSuicaとデンマークのICチケット

torsdag den. 29 januar 2015


前回、デンマークはデジタル先進国と書いたばかりですが、いやいや、
日本のSuicaだってスゴイ!という話になりました。
人々が流れるように通り抜けて行く自動改札の様子をデンマーク人が
見たらさぞかし驚くことでしょう。

Suicaが出回り始めた頃の事、初めて手にして喜ぶ “ お上りさん “ の私に、
友人がバッグをセンサーにポン!と乗せて改札を抜けながら
「 ほらね、バッグの上からでもOKよ!」と笑いながら教えてくれました。
そんな、いわば “ 乗車切符 “ が今ではショッピングやキャッシングも可能な
マルチICカードとして活用されているのですから躍進的進歩だと思います。
更にクレジットカードでもチャージが出来るようになったら申し分無しですね。
翻って、ここデンマークではICチケット導入に未だ手こずっています。
本当なら去年の春には本格的導入の計画だったはずがトラブル続出、
どうやらデンマークには改札が無いという事が問題をややこしくしている
原因の一つのようです。乗り降りの度に改札を出るという生活習慣が
全く無いので、ICチケットになったら乗降時にチェックイン&チェックアウト
しなければならないということがピンと来ないようです。
うっかりチェックアウトせずに出てしまったらどうなるのか?…とか、
今までは全て(バス、電車、メトロ)一時間以内は乗り換え自由だったから
チケット一回分で往復することも可能だし、回数券の割引料金も有る。
これらのサービスがICチケットではどうなるのか?etc.
私も細々とした疑問点が残っていて首を傾げているところです。
インターネットのガイダンスでは懇切丁寧に説明しているけれど、
実際はどうなの?… 本当に正しい料金が落とされるの?…と、何となくモヤモヤ
している。まだ信用出来ない。みんな様子見状態です。
インターネット普及率ほぼ100%のデンマークですが、ことICチケットに
関してはみんなどうも腰が重いようです。
何事も自分で納得してから行動する国民性がこの辺にも出ているようです。
ICチケットが定着するにはこの先また一年くらいはかかる でしょう。

この原稿を書いていたら、家人が大きな紙包みを抱えて帰って来ました。
包みの中からほわぁりと真白なかすみ草。
これからもよろしく…なんて、改まってどうしたのかと思ったら
結婚記念日でした。すっかり忘れていました。

Suicaが普及したように日本でも男の人が花を買うのが習慣になると良いですね。




岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/





黄色いボックスは従来のチケット用、青いランプがICチケットのチェックインセンサー。
チェックアウトも同じなので見分けにくいです。



車ホーム風景。改札は無く上記と同じシステムです。
自転車も乳母車も、もちろん車椅子でも!乗車出来ます。



これは24時間フリー切符。こういうアナログ切符が無くなってしまうのは淋しい気もします。



かすみ草を置いたら明るい春のようになりました。

【きょうのクロスステッチ Vol. 275】 by 岡村恭子


VOL.275 2月になって・・・。

torsdag den. 5 februar 2015


2月になりました。
立春も過ぎてそろそろ早春の気配漂い始める頃ですが、
冷え込んでいます。数日前からの雪が溶けずに凍り付いています。
それでも春の訪れを告げるエランティスが黄色い花頭をもたげ、
雪を押し上げるようにお日さまに顔を向けているのを発見!
北欧にももうすぐ春が来ると教えてくれています。
2月はきっちり4週間。瞬く間に3月がやって来ます。
日照時間も長くなって来ています。つい先日まで窓辺に欠かせなかった
キャンドルに代わりブラインドを開けました。
外光が差し込む朝のキッチンは雪景色も明るく朗らかに感じられます。
室内で温々と越冬中のゼラニウムにも小さな花が付きました。
それだけでも嬉しい春の予感です。少しずつ明るい季節に移行しているのを
実感する今日この頃、きっと庭の草花達も土の中で発芽の準備をしていること
でしょう。春の庭仕事が今から楽しみです。

さてさて、そんな気持ちのよい朝のひと時、珈琲カップ片手に新聞を開くと、
いかにもこの国らしいICチケットについての記事があったので前回の続きを
少しばかり。ICチケットを導入した昨年一年間で “ チェックアウト “ し忘れた
乗客が81万人以上にもなったと。まあ、チェックアウトと言っても
改札が有るわけでもない、実際にはパネルにカードをタッチするだけなのです。
今まで切符を買ったらその後はフリーで改札なんてない。そういうことが
習慣になっている人々に急に義務づけても所詮無理というものです。
つい忘れてしまっても仕方ない。さもありなん…と読み進むと、あらら?
なんということか、チェックアウトし忘れた人は罰金50kr.(約千円)
ですって?!違反したということでしょうか?でもねえ…と思って更に
読み進んで笑いました。利用者からブーコール!大不評だったそうで
(当たり前ですよね)今年は罰金を半額の25kr.に値下げという朗報?です。
これが今回のICチケットニュースの “ オチ “ のようですが、罰金制にしないと
いつまでたってもチェックアウトの習慣が身に付かないということのようです。
普段はシステム作りが上手で感心させられるのに、ことICチケットに関しては
国民的に面倒がっているようで、それもまたこの国らしいなあ、とホッペの
筋肉がゆるみますが、いやいや人事と笑ってばかりいられません。
私もチェックアウトし忘れないように気をつけなくっちゃ!



岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/





外は雪、窓辺のゼラニウムも春が待ち遠しそうです。



雪の中から顔を出したエランティス。綿帽子を冠って外の様子を見てるのかな?



今朝の庭から。 柔らかい早春の陽がさしています。



アネモネのビビッドなピンクに元気をもらいます。

【きょうのクロスステッチ Vol. 276】 by 岡村恭子


VOL.276 Fastelavn : みんなで冬を追い出そう!

torsdag den. 12 februar 2015


ここ数日気温が上がり雪解けの黒い土から黄色いエランティス、
真っ白いスノウボールに混ざって、クロッカスやムスカリの葉っぱ達が
元気に背伸びを始めました。
冬の間ジッと冷たい土中で芽吹き時を待っていた植物達の忍耐強さ、
太陽の恩恵を受けようと陽射しに向かって成長してゆく逞しさに
エライね!と思わず声をかけてあげたくなります。
少しずつグラデーションで移り行く日本の四季とは異なり、
北欧の季節は極端で明暗くっきり、急速に暗くなって行く秋から冬とは
正反対にこれからはグングン!という感じで明るくなってゆきます。
何年経ってもこのコントラストに一喜一憂、もちろん今は喜びの毎日です。

ステッチハウスのページも春の装いですね。
愛らしいヒヨコを始めイースターのモチーフを見ているだけで明るい
気分になります。お菓子屋さんにも卵形のチョコレートなどイースター限定
のお菓子が並びはじめました。でもね、今年のイースターは4月の第一週目、
まだもう少し先なのです。(3月21日以降の満月の日の次の日曜日前後
なので毎年日にちが異なるのです。)
明るくなったといってもまだ2月、暖かくなったといっても3℃4℃…、
まだまだ寒い!今週は学校が冬休み。そして今度の日曜日は子供達が楽しみに
しているFastelavn : ファストラゥンです。
イースターがキリストの復活を祝うホリデーならファストゥラウンは懺悔の日
というのが起源らしいのですが、そこに北欧の伝統行事が混ざり合って
今では冬を追い出すお祭りです。昔は樽の中に押し込んだ猫を樽を叩き割って
追い出したそうですが、今は猫の代わりに割った樽からお菓子がこぼれ落ちると
いう仕掛けです。この日、子供達は仮装して一日楽しく過ごします。
歌を歌い家々を回り、お小遣いやお菓子を集めます。アメリカのハロウィーンに
似ていますが、ハロウィーンのように人を怖がらせたりせず、
素朴で可愛らしい所が子供らしくて好ましいのです。

カナ猫の姿が見えなくなってから一年が過ぎました。
今でも庭を眺めている時などに、ふと彼女の姿が見えるような気がして
一瞬視線がその辺りを彷徨ったりします。
ファストゥラウンだし、早春の庭で寛ぐカナ猫を思い出しながら
猫型クッキーを焼きました。今回はミューズリーを混ぜ込んでみたので
焼き上がりは「まだら猫」になってしまいました。



岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/









フェストゥラウンで樽を割りに興じる子供達。(2013年より。今年はどんなかな?)











ネコ型クッキーです。楊枝で目を入れると表情も豊かに。
焼き上がっらリボンでおめかしです。お菓子作りはプロセスも楽しい!

【きょうのクロスステッチ Vol. 277】 by 岡村恭子


VOL.277 図書館の役割

torsdag den. 19 februar 2015


先週末は騒然となったコペンハーゲンですが、その後単独犯と確定され、
背後関係もあまり無いということで、ひとまず安堵の胸をなで下ろしたと
いうところです。今日は久しぶりに青空が広がり、お陰で沈んでいた気持ちも
晴れやかになりました。
明るくなると急に気持ちが外に向いて来ます。
「読書の季節」から「庭仕事の季節」に変わるまでもう少しの辛抱です。

暗くて寒い北欧の冬を過ごすのに読書はもってこいの時間つぶしです。
外に出られない季節、暖かい部屋で温々としながら気の向くままに
ぺーじを開くのもそれはそれでなかなか良いものです。そんな事もあって、
日本に帰った時には本屋さんに行くのが大きな楽しみの一つとなりました。
新刊書の香りに包まれて背表紙を眺めるだけでも充分楽しい。そして、
ずらーっと並ぶ平積みの本を端から順に眺め、ようやく “ 本日の一冊 “ を
見つけた時の喜び。どの書店も専門書から雑誌まで充実の品揃えに感動します。
そして、トランクに詰め込み持ち帰った本は何度も読み返して楽しみます。
翻って、日本から来た友人をコペンハーゲンの本屋さんに案内すると
「これだけ?」とガッカリされます。無理も無いのです。
デンマークの書店に置いてあるのはハードカバーの専門書中心でおまけに高価です。
気軽なペーパーブックや雑誌類はKIOSKアイテム。店先のラックに角の折れた
バックナンバーがいつまでも挟まっているという感じです。
それじゃあ、デンマークの人は本を読まないのか?と言うとそうでもない。
みんな図書館を利用するのです。
この国では図書館がとても身近な存在です。そうそう教科書も使い回しです。
新学期が始まると子供達はまず配られた教科書にカバーをし、裏表紙に
差し込まれているカードに自分の名前を書き込みます。ちょうど、昔の図書館の
貸し出しカードの用です。大切に使わないとバレちゃいます!
授業でも頻繁に近所の図書館を利用します。先生と一緒に図書館に行くのは
ちょっと楽しいし、たくさんの本に囲まれる喜びを知ることもあるでしょう。
こうして「本は共有の財産」という考えが 子供の頃から育まれてゆくのだろうと
思います。

図書館では併設されたカフェの珈琲をテーブルに運び、のんびりと
新聞を広げている人もいれば、課題に関するミーティングをしてる学生もいます。
静かだけれど活気がある。壁際にはズラーッと検索用のPCが置かれていて自分で
検索して行けます。分からない事が有ればサービスカウンターの専門家が
アドバイスしてくれる。そんな人々の様子を見ていると
「本はみんなの共有財産」という考えが浸透していることが自然に伝わって来ます。


岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/





久しぶりの青空に木々のシルエットが美しい。芽吹くまで少しの辛抱です。



通りかかった教会で古本市が開かれていました。



子供の絵本専門店には絵本が山積みです。







図書館の本返却コーナーと閲覧コーナーの風景。
みんなが上手に " 使いこなしている感 " が漂っていますね。

【きょうのクロスステッチ Vol. 278】 by 岡村恭子


VOL.278 デンマーク的「カワイイ」アイテム

torsdag den. 26 februar 2015


三寒四温。
先ほどまで朝の光が差していた窓辺が急に陰り始めて、嗚呼、また冷たい
雨が降り始めてしまった…と、そんな風に一喜一憂しながら、
それでも確実に春の足音が近づいて来ました。
もうすぐ彌生3月ひな祭り。お雛さまのモチーフをクッションや壁掛けに
刺繍出来たらステキだろうな、と想像しながら…。

某日遊びに来ていた友人が「カワイイ!」と、お財布からコインを
出して裏表を丁寧に見てからニッコリ嬉しそうに言いました。
デンマークの5、2、1クローネそして更に細かい50オーレのコインには
小さな♡のマークがついています。普段あまり気に留めていないけれど、
そんなに褒めてくれるなら…とあらためて見ればハートを使いながらも
玩具っぽくない。なかなか良いデザインです。
この♡マークは王立鋳造所謹製の印だということを何かで読んだ事が有りますが
定かでは有りません。理由はともかく自国の貨幣にハートの意匠を取り入れる
なんて、おそらく世界広しといえどもデンマークだけではないでしょうか。
道路標識のアルファベット ” I “ の頭にちょこんと赤いハートを付けた通りも
あります。イタズラではありません。そのようにデザインされたれっきとした
道路標識です。それからもう一つよく見かけるのが王冠のマークです。
このハートのコインにはもちろん!のこと、パン屋さんのマークの上にも
お菓子のパッケージにも、それからビールの缶にも大きな王冠がついています。
これからの季節はこの王冠のついた緑色の缶がみんなのノドを潤してくれるのです。
その他にも様々な食料品、例えば手近な所では魚の缶詰にも小さく王冠がついて
いたりして、こんなにカジュアルで良いのか?とも思いますが、王冠マークが
付いているか否かが品質基準の目安にもなっていて、買い物の時のチェックポイント
の一つです。
それからもうひとつ良く見かけるのが国旗です。
日本に進出して話題になったデンマークの百円ショップ「フライングタイガー」の
本拠地のお店に行くと国旗をモチーフにしたグッズがたくさん!
誕生日や結婚式など様々なお目出度い場面で欠かせない必須アイテムです。

日本のように人気キャラクターは無いけれど、いずれもデンマーク的
「カワイイ」を発信しているような気もします。
それが証拠に、件の友人はたくさんの “ ♡のコイン “ をお土産にして
帰って行ったのでした。… また会える事を楽しみに!



岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/





王冠に囲まれる様にマーガレーテ女王の " M " その上の♡も又小さな王冠の様ですね。






パン屋さんのマークやビールの缶にも王冠。いずれも " カワイイ " デザインでしょ?



今朝の庭から。  黄色いクロッカスが咲き始めました。

【きょうのクロスステッチ Vol. 279】 by 岡村恭子


VOL.279 春の観光 ラウンドタワー

torsdag den. 5 marts 2015


例えばパリにエッフェル塔、ニューヨークにエンパイアステートビル、
そして東京にはスカイツリーが有る様ように、コペンハーゲンにだって
市街地を見下ろせるタワーが有ります。レンガで出来た筒型の塔は、
その名もラウンドタワー。コペンハーゲンの観光スポットです。でも…
スカイツリーの展望デッキは地上350mと天空の感があるのに比べ、
方やラウンドタワーはたったの35m弱、丁度10分の1の高さ(低さ)
しかありません。これで、街を見渡せるのか?と思うかも知れないけれど、
大丈夫。コペンハーゲンの旧市街地は保存地区なので高層ビルは皆無です。

ラウンドタワーは1600年代に時の王様クリスチャン4世が建てた
ヨーロッパで最も古い天文台のひとつ。丁度同じ頃に天体望遠鏡も
登場したというから、新しもの好きな王様の間で天体観測ブームだった
かもしれませんね。他にも国会議事堂や毎年今頃になると延江さんが楽しみに
している “ クロッカスの庭“ のローゼンボー城なども、クリスチャン4世の
時代に建てられた、まさに繁栄の時代を築いた名君主の誉れ高い王様なのです。
さあ、そんなマメ知識を得た所で、観光客に紛れて私達も登ってみましょう。

もちろん?!エレベーターなど有りません。展望デッキまで徒歩です。
円筒形に沿った緩やかな螺旋スロープが上へ上へと続いています。
白く塗られたレンガ壁にくりぬかれた窓から外光が差し込み、カーブを描いた
天井を明るく照らします。それがとてもきれいです。
王様は馬車を仕立てて、このスロープを一気に駆け登ったそうですが、
現在はかけっこをしながら登る子供達の歓声が響く中をテクテク…。
途中にガラス張りのドアが現れます。 かつて図書館だったスペースが広々とした
展示会場になっています。一年を通して様々な展示会が開催されているので
運が良いと美術鑑賞の気分を味わえるのもラウンドタワーの魅力です。
スロープの後に続く螺旋階段を登り切れば、ようやく展望デッキ到着です。
展望台からはコペンハーゲン市が一望、 天気がよければ赤煉瓦の屋根の
連なる向こうにニューハウンの先の運河まで見渡せます。
眼下には沢山の人が行き交うショッピングストリート。買い物に疲れた時などに
街の景色を眺めながら休憩…というのも良いけれど、その前にスロープと階段が
あると思うとちょっと…ですね。



岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/





ラウンドタワー全景。











市街地が一望できる展望台。これからの季節は連日沢山の観光客で賑わいます。

【きょうのクロスステッチ Vol. 280】 by 岡村恭子


VOL.280 街を歩けば犬に当たる?!

torsdag den. 12 marts 2015


「犬も歩けば棒に当たる」というけれど、私は街を歩いていて犬に
当たりました。いえね、本物の犬にぶつかったのでは有りません。
石で出来た犬です。

話が少し飛びますが、
例えばスーパーマーケットで買った食材を改めて眺めてみると、
相も変わらずのワンパターンなことに我ながら呆れてしまう、と
いう事はありませんか?私は大いにあります。
目新しいものを買おうと思っていたのに、結局安心できるアイテムと
言うのでしょうか、食べ慣れた食材中心になってしまう。
街を歩いていても慣れた道を選んでしまう。赤鉛筆で動線を地図に
なぞれば同じ通りだけ真っ赤になるに違い有りません。こうして
日常生活が知らず知らずの内にルーティーンにそってしまっている。
その他にも、例えば旅行前に地図を見ながら…
フムフムこの辺りに美味しいもの屋さんが沢山ありそう、とか
この辺を散策したいとか想像の羽根は自由に飛ばすけれど、実際には
そこまで辿り着けず、何となく安全確実な線に落ち着いてしまう。
そんなことをつらつら思っていたある日のこと、頼まれた用を済まそうと
目的の方向に向かっている時、ふと、いつもと違う通りを歩いてみようかな?と
思い立ちました。日常の ” ワンパターンからの脱却!” です。
お天気も上々です。春の陽光にすっかりご機嫌になって路地→大通り→裏通り…
とジグザクに歩いていた、その時に件の “ 石の犬 “ にバッタリ遭遇したのでした。

大きな建物のファサードに彫り込まれた向かい合わせの犬2匹。
百獣の王ライオンの石像だったらわかるけど退屈そうな顔をした犬です。
思わず立ち止まってまじまじ顔を見ると何だか眠そうだし、やる気無さそうだし、
少々悲し気にも見えます。
凛々しい表情で建物を支えているビール会社の2頭の石のゾウと対照的です。
https://www.stitchhouse.jp/hpgen/HPB/entries/1087.htmlと
建物のオーナーの飼い犬だったのでしょうか?
番犬のつもりなのかな?でも、どう見ても番犬になりそうもない様子が
ユーモラスです。
2匹の犬にバイバイしながら、
知ったつもりの街でもまだまだ知らない場所がある。
目線を変えたら面白い発見が有るかも知れない。そんなことを思った午後でした。



岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/








通りがかりにバッタリ出会ったワンちゃん2匹のこの情けない表情ったら…!



あっ!屋根の上に人が!… 見慣れた街も目線を変えると新鮮です。



上を向いて歩いていると楽しい看板が目につきます。これは帽子屋さんの看板。

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