2011年1月~3月
【きょうのクロスステッチ Vol. 79】 by 岡村恭子
VOL.79 31年目のブーケ
torsdag den. 27 januar 2011
年明けから始まった冬のバーゲンもそろそろ終盤にかかり、
入れ替わりに春のコレクションがショーウィンドウを飾り始めています。
クリスマス、お正月とキャンドルを灯し,暖炉を焚いて過ごして
きましたが、気がつけば1月も今週が最後の週末です。
「もう、ここまで来たら大丈夫!」 と、声に出して言いたくなる。
春に向かうと思うだけで気持ちがワクワクしてきます。
これは動物的本能に近い感覚かもしれません。そういえば、庭に来る
小鳥達のさえずりも明るくなって来たような気がします。
そんな気持ちを反映するように、お花屋さんの店先も華やいできました。
デンマークの人々は日常の暮らしの中に花を添えて楽しみます。
友人の家を訪問する時など、手みやげに通りがかりのお店で見かけた
旬の花を持って行く。すると先方も心得ていて、さっそく花瓶に挿し、
共に花を愛で、季節を愛でる。
そんな楽しみ方をデンマークの暮らしが教えてくれました。
寒く暗い季節でも、日常にさり気なく小さな花を加えるだけで、
とても豊かな気持ちになれます。私はもっぱら近所の花屋さんや
スーパーマーケットの「本日の花」コーナーの常連ですが、
ストロイエ近辺には構えも品揃えもお洒落なお店がたくさん有り、
どこも花を求める人で賑わっています。
花を飾る楽しみは見慣れてしまったインテリアをチェンジアップする
楽しさにもつながります。何気なく手に取って選んだ花は、その日の
気分を反映しているものです。
ステッチハウスのページも美しい花のモチーフが溢れていますが、
それもこれも、厳しい自然環境だからこそ、とあらためて思います。
庭仕事の際、目に留まった草花をグラスにさしてみたり、
たっぷり水を張った大振りの器に無造作に投げ入れるのが私流だけれど、
窓の外はまだまだ冬景色です。多分、ムスカリやヒヤシンス達も
私と同じ気持ちで、土の中から外の様子を伺っているに違い有りません。
早春を告げる小さな花達の芽が出てくるまで、しばらくの間お預けです。
それまでは花屋さんの店先から、少し早めの春を抱えて帰ろうと思います。
ところで、デンマークの人々は記念日を大切にします。誕生日をはじめ、
様々な記念日に様々な思いを込めた花が大活躍します。
私事ですが、つい先日の結婚記念日に家人が花束を抱えて帰ってきました。
毎年欠かさず31回、今年もきれいなブーケです。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
一足先に春の気配漂い始めたお花屋さんの店先。
31回目のブーケ。ピンクと白の花が可憐です。
【きょうのクロスステッチ Vol. 80】 by 岡村恭子
VOL.80 小さな国の赤いシンボル
torsdag den. 3 februar 2011
サッカーのアジア杯で日本が優勝を決めた丁度その頃、
デンマークは男子ハンドボールのワールドカップ優勝をかけて
強敵フランスとの決勝戦に挑んでいました。
このハンドボール、日本ではあまり馴染みがありませんが、
ヨーロッパではプロリーグもあるほど盛んです。室内でオールシーズン
楽しめる所が大きな魅力で、人気選手は日本の野球選手のような
もてはやされ方です。いずれもロボットのような体格をした強者揃い、
そんな連中が小さなボールを取り合いゴールを目指す。
かなりの迫力で好ゲームともなると手に汗握ります。前半後半30分ずつ
という短時間勝負というのも私には好ましく感じます。
今回、デンマークは44年ぶりの決勝進出とあって、ロイヤルファミリー
も開催地の南スウェーデン、マルメまで応援に駆つけるという
熱狂ぶりでした。結果は延長戦で惜負してしまいましたが、
お陰で私もトーナメント中ずっと楽しませてもらいました。
スポーツの国際試合というのは自国の選手達を応援するという、
一種高揚した気持ちが多くの人を惹きつけるのでしょう。
デンマークは人口500万人程の小さな国ということも手伝って、
そういう時には国をあげて大いに盛り上がります。
なにしろ、試合前の国歌斉唱の時から大張り切りです。
時には伴奏無しで応援席の観客によるアカペラ大合唱となります。
心から自分たちの国を愛してやまない心情を表現しているかのようで、
外野の私でさえ聞いているだけで感動します。
そして、こういう時に大活躍するのが赤に白十字の国旗です。
打ち振る旗が揺れる中で 応援する人達も紅白で彩られ、 なんとも目出たい
空気が辺りを包みます。
国際試合の応援に限らず、記念日、祝日にはかならず国旗が登場します。
路面バスのフロントの両サイドにちょこんと小旗が飾られていたら、
何かの記念日か、ロイヤルファミリーの誕生日か、さもなければ、
どこかの国の偉い方をお迎えしている最中だとわかります。
国旗をデザインしたグッズもスーパーマーケットに沢山並んでいます。
特に子供の誕生日には欠かせないアイテムで、通りがかりの家の
芝生に沢山の小さな国旗が差し込んであったりすると、
ああ、この家の子供誕生日だと分かる、お祝いのサインなのです。
我が家のメンバーの誕生日にはもちろん!
白地に赤い日の丸と赤に白十字の旗を仲良く飾ることにしています。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
国会議事堂の塔にたなびく国旗。
(昨年4月16日、女王陛下の誕生日撮影)
海辺の街Dragoerにて、青空に白い飛行機雲。赤と白の旗が鮮やか。
お誕生日を迎えた人のケーキにも旗を立てます。
この日はスウェーデンの旗でした。
【きょうのクロスステッチ Vol. 81】 by 岡村恭子
VOL.81 早春の兆し
torsdag den. 10 februar 2011
キッチンの窓辺に置いてあるローズマリーに小さな薄紫の花が咲きました。
昨年買ったミニシクラメンも元気に越冬し、2度目の蕾がつきました。
心配していたオリーブの苗木も枝先から小さな葉っぱが出て来ています。
室内の小さな植物達も明るい季節の到来を敏感に察知している様子です。
きょうのクロスステッチも3度目の春を迎えようとしています。
去年の丁度今頃は何を書いていたのかしら?
久しぶりにバックナンバーをひもといてみたら…
昨年の2月はとても寒く毎日氷点下の日が続いて震えていたのですね。
(Vol.38「インドアボタニク」)
翻って、本日はというと、なんと日中6℃にもなりました。
寒ければ寒いと文句を言うくせに、こうも暖かいと心配になります。
おまけに昨夜は時ならぬ台風がデンマーク上空をフルスピードで通過。
一晩中強風が吹き荒れ、暗闇で大きく揺れる庭の木々の気配に、
子供の頃、障子に映った木のシルエットが風に揺れると、今にも
自分の方に向かって来そうで怖かったのを思い出しました。
まさに真冬の台風です。
そんなわけで、明け方まで寝付かれず、本日は少々寝不足気味です。
週末からはまた気温が下がると聞いて、かえってホッとしたりしています。
台風一過の今朝、さっそく庭に出てみました。
ノラ猫カナちゃんは無事だったかしら?などと思いながら
木の枝が折れていないか?瓦が破損していないか?植木鉢は?
と、家屋周辺をぐるりと点検です。
芝生に沢山の枝が落ちてはいましたが、被害は無かったようで一安心。
おまけに、落ち葉を押し上げるように小さな黄色い花の蕾が土の中から
顔を出しているのを発見しました。
スノウドロップと並んで北欧の早春を告げる花の代表、エランティスです。
ここ数日暖かいお天気が続いたお陰でしょうか?
エランティスが咲き始めると、やがてクロッカス、ヒヤシンス、水仙、ムスカリ
など早春の花が次々と顔を出し始めてくれるのです。
春を迎える準備をしなくては! これから徐々に庭仕事開始です。
思わずため息が出る程やらなければならないことがたーくさん!
でも、うれしい!
今年もまた庭の様子を皆さまにお伝えしてゆけることを
今から楽しみにしています。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
北欧の春を呼ぶエランティスの花。
キッチンの窓辺のローズマリーの花。
シクラメンも元気に越冬しました。
【きょうのクロスステッチ Vol. 82】 by 岡村恭子
VOL.82 寒の戻りの週末散策
torsdag den. 17 februar 2011
前回のこのページで春が来た!と喜んだのも束の間、
ここ数日はグンと冷え込んで冬に逆戻りの様子です。シーソーのように
行きつ戻りつしながら、春に近づいているはずだと我が身に言い
聞かせてみても、しばらくは氷点下の日が続くとの予報にガッカリ…
やっぱり北欧の春はまだまだ先のようです。
お天気に恵まれた週末、家人と散歩に出ました。
どんなに寒くても、明るい陽射しは人々の表情を和らげてくれます。
折しも学校は冬休み。市庁舎前広場では子供達の為のイベント
「Rollespils」の真っ最中でした。これは『○○ごっこ』的な遊びです。
指導するプロのメンバーがいて、申し込めば何処へでも出向き、
『○○ごっこ』に興じてくれる。誕生日会や地域の子供会などの
余興に人気があるのだそうです。カウボーイVSインディアン、
善玉VS悪玉など、それらしくコスプレして “悪者をやっつける!”
男の子にはたまらないでしょう。でも、この遊びにはお姫様役の
登場場面は無さそうで、バーチャルゲーム時代の男の子限定、
”上手な暴れ方指導”のような感じもします。
ストロイエ通りのチョコレート屋さんの店先はバレンタインデーを目前に
ハートのチョコレートを全面にディスプレイしていました。
しかし、何故か日本のような盛り上がりは全く有りません。静かなものです。
男女同権先進国の人にとっては、女の子が男の子に愛を告白するのも、
別に特別な事ではないのかもしれません。とにかく、北欧の女性には
ピンと来ない様子です。ひょっとしたら、バレンタインデーで山ほどの
チョコレートが行き交うのは世界中で日本だけなのかも知れない…と、
ふっと思いましたが、如何でしょうか?
とにかく、デンマークでは笛吹けど踊らず…のようです。
その日の散歩のお目当てのひとつは新しく出来たレゴショップでした。
冬休みの週末という事も手伝って、店内は大変な混雑です。
子供も大人も目を輝かせ、夢中になっていて、何だか可笑しいし楽しい。
レゴはデンマークが誇る『玩具を超えた玩具』だ、とあらためて思いました。
今まではレゴランドまで行かなければ見る事の出来なかった、
レゴによるインスタレーションのミニミニバージョンがこのショップで見られます。
壁面一面のAmagertorv(ロイヤルコペンハーゲン前広場)は、
まるで刺繍のようです。本当にプラスティックのブロックで出来ているのか?
思わず手で触ってみたくなること請け合います。
皆さまもストロイエにいらした際には是非立ち寄ってみて下さい。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
ロビンフット時代の悪者?相手に戦う子供達。
赤いハートでバレンタインデーをアピール?!
レゴショップの壁面のインスタレーション。見事です。
【きょうのクロスステッチ Vol. 83】 by 岡村恭子
VOL.83 紙の世界の陰影礼賛
torsdag den. 24 februar 2011
夕食の支度をしていて、ふと時計を見るともうすぐ5時。
つい先日まではとっくに室内の照明を点けていたのに、
今日はそんな事など忘れて野菜を刻んでいました。
それだけ日照時間が長くなったという証拠です。嬉しいです。
氷点下だけれどカラリと晴れた午後、あまりにも気持ち良さそうなので、
両手をポケットに突っ込んで庭に出てみました。裸ん坊の桜の幹越しに
早春の太陽が微笑んでいるものの、おお、寒い!たちまちフローズンです。
慌てて室内に駆け込むと、お日様がリビングの白い壁に庭木の
シルエットを映し出しています。なぜだかホッとして、
そういえば幼い頃、障子越しに両手を使ってキツネや鷲の影絵を
作って遊んだことを思い出しました。
どんなにライフスタイルがモダンに変化しても私達の精神性には、
昔から木と紙で出来た住宅に親しんできた民族のDNAが今も受け継がれて
いるようです。前述の影絵遊びでなないけれど、障子越しの柔らかな
採光は、室内に自然を上手く取り入れた好例だし、イサムノグチに代表
される和紙を利用した照明などは、日本の伝統から生まれたインテリアの
妙だと私は自信満々です。
また身近な所では、折り紙なども素晴らしい伝統文化で、未だに
デンマーク人の友達に鶴を折っただけで「 ワォ!」と感心されてしまいます。
彼らが不器用という以前に、我々日本人がそれだけ“紙文化”に
親しんで来たという事が言えそうです。
そんな中で最近、様々なモチーフを切り込み、浮かし、透かし、重ねた
ペーパークラフトが人気のようです。カードだったり、立体的な装飾品だったり、
中には建築家が模型制作時に使うジオラマ的なモノもあります。
いずれも レースのように繊細なテクニックを生かしている所が特徴のようです。
去年の私の誕生日には、開いた途端に真っ赤なツリーがピョコン!と
立ち上がるという凝ったカードが届きました。良くよく見ると、
花や葉のモチーフが重なり合って、丸い木の立体になっているのです。
きれいなだけでなく、とても良く考えられていると感心しました。
今年の年賀状にもウサギや梅の木がレースのように重なり合い、
その向こうに富士山、という、実に凝った趣向のカードが届きましたが、
こんな所にも手先の器用な民族性が発揮されている!とあらためて思いました。
それにしても図案考案からカットまで、一体どのように作るのでしょうか?
多分コンピューターのなせる技なのでしょうが、
何事も不器用な私は、針の先で突いたような細かいモチーフに
首を傾げて感じ入るばかりです。
岡村 恭子
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レースのように繊細ペーパークラフト。明かりにかざして陰影礼賛です。
窓辺で揺れるペーパーリース
【きょうのクロスステッチ Vol. 84】 by 岡村恭子
VOL.84 春を呼ぶ-Fastelavn
torsdag den. 3 marts 2011
毎回何を書こうかしら?と頭をひねっている間に、カレンダーは
早くも今年3枚目になりました。
お堀にはうっすらと氷が張っているものの暦の上では春到来。
北極の寒気団に代わって、地中海の方から暖かい空気が北上してくるまで、
もうひと頑張りという感じです。
ステッチハウスのページも、とても春らしくなりましたね。
イースターモチーフのパステルブルーがとても新鮮です。
新企画の展示会のお知らせページも、今まで有りそうでなかった
素敵なアイデアだと思います。
ステッチハウスを通じてますます刺繍を愛する人々のネットワークが
広がるのを、私も楽しみにさせて頂きます。
暗くて寒い冬を耐えてきた北欧の人々にとって、春の訪れは言葉に
尽くせない喜びです。イースターホリデーを迎える頃には
みるみる明るく弾ける太陽の季節になって行く…はず。
イースターは春分後の最初の満月から数えて最初の日曜日という
設定なので毎年違う日程というのも面白く、今年は4月24日です。
それと前後して祭日が続きゴールデンウィーク連休となります。
そうなればもう「 シメタもの」?なのですが、実際にはまだまだ先のお話。
そこで、 イースターまで我慢出来ないでしょう?
早く冬将軍にサヨナラしたいでしょう?…とでも言いたげな楽しいお祭り、
ファストゥラウンが毎年3月初旬に開かれます。
このお祭りは イースターサンデーの7週間前の日曜日と決まっていてます。
元々は一連のキリストにまつわる日ですが、今では冬を追い出すお祭りと
いった感じです。昔は木に吊るした樽に猫を入れ、それをみんなで順番に
たたき割ったそうです。猫を冬将軍に見立てたのでしょうか?
猫こそイイ迷惑だったことでしょう。
現在は猫の代わりにお菓子を入れた樽を叩いて盛り上がります。
今年のファストゥラウンは今度の日曜日(3月6日)。
♪Fastelavn er mit navn♪
思い思いに仮装した子供達が大きな声で唄いながら、コインの入った
空き缶をガシャガシャと鳴らし、賑やかに家々のドアをたたいて回ります。
ハロウィンのデンマーク版という感じです。
街の広場では騎乗した大人が樽をたたいて行く本格的なものから、
スイカ割りのように樽を叩くパーティまで趣向を凝らして楽しみます。
冷たい風なんかに負けるものか!と野外で楽しく繰り広げられイベント=
ファストゥラウンは春を呼ぶ北欧の風物詩です。
岡村 恭子
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窓辺で越冬したゼラニウムに赤ちゃん葉っぱが出てきました。
ただ今人気のマフィン。カラフルなクリームが春っぽいですね。
イースターのテーマカラー、黄色は北欧の春を呼ぶ色です。
おもちゃ屋さんの店先にはファストゥラウンの樽が並んでいました。
【きょうのクロスステッチ Vol. 88】 by 岡村恭子
VOL.88 夏時間導入のすすめ。
torsdag den. 31 marts 2011
今年も届き始めた桜便りに、どんなに辛くても悲しくても
刻一刻と時は経過し、地球は回り季節は巡っている。
そして、人間はその雄大な宇宙的営みの中のほんの小さな存在
でしか無いのだ、ということを痛感します。
4月を目前にした先週末、デンマークは夏時間に切り替わりました。
その日、ヨーロッパ中の人々が一斉に時計の針を一時間早送りします。
明るい季節はみんなで早起き!です。私も家中の時計を早送りしながら、
時計の針を進めたり遅らせるだけで、社会全体を効率よく機能させるとは、
簡単で上手い方法だ、と感心してしまいます。
折りしも電力不足対策の一環として、日本でも夏時間導入を検討中という
ニュースを聞きました。もちろん省エネにもなるのでしょうが、むしろ
清々しい早朝から活動し、早めに帰宅出来たら、それだけでも
健康に良さそうですね。
もう一つ、北欧ではフレックスジョブという考え方があります。
この方法は更に省エネに効果的かもしれません。
もともとは失業対策として取り入れられたシステムで、出来るだけ多くの
人が仕事に就けるよう、限られた就職マーケットをシェアしよう、という
ものです。一人当たりの基本的就業時間をみんなで分け合うのです。
労働時間を決めてその内訳をなるべく各人の都合に合わせる。
ナ~ンダ 早番遅番ね、と言われればそうですが、
全員が9時出勤という画一的なシステムから解放されるだけでも
まず朝晩のラッシュアワー解消に繋がり、ラッシュが緩和されれば
公共機関の省エネになります。時間厳守よりも能率を優先する時代です。
インターネットの進歩で近い将来、在宅で仕事が出来るようになれば
もっと進化した省エネが可能かも知れません。
労働時間が厳しく守られているデンマークでは基本的には残業が有りません。
照明も必要な場所は明るいのですが、不要な場所はうす暗かったりします。
最初は暗いと思っても、少し慣れるとかえって明暗のメリハリが
インテリアを引き立たたせている事に気がつきます。
人生に対する価値観が大きく変わった今、この機会を無駄にせず、
働く環境も少しずつ改革されたら、それはマイナスからの大きな一歩前進だと
思うのです。
岡村 恭子
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エランティスと筆者
オリーブの木も元気に新芽を出しました。
日ごとに庭が賑わって来ています。
大きなお猿さんとチビちゃんたち。
こんなの欲しいんでしょう?延江店長さん^_^
【きょうのクロスステッチ Vol. 87】 by 岡村恭子
VOL.87 夜空を仰いで
torsdag den. 24 marts 2011
ここ数日小春日和の穏やかなお天気が続き、
庭は描きかけのキャンバスのように、日ごとに色が挿しこまれて行きます。
土色だった花壇に緑色や萌葱色のタッチが入り、さらに薄紫や黄色も
加わりました。クロッカスが咲き始めたのです。
レンギョウの枝先も僅かに黄色がかってきたようです。
そんな春の庭で、季節外れの面白いものがひとつ。
植木鉢の枯れ枝に付けたままのクリスマスイルミネーションです。
片付けよう…と思っていたのですが、日増しに明るくなる太陽のおかげで
ソーラー蓄電充分、夕暮れ時から毎晩元気いっぱいライトアップ!です。
お天気の良い日は実に4~5時間も点灯しています。
当然ながら太陽が照らないとダメで、肝心のクリスマス時期は
日照時間が短かすぎ、点いたと思ったら消えてしまう役立たずだったのを
思い出すとちょっぴり皮肉です。この調子で行くと夜中まで明るい夏は
どうなのか?実験を兼ねてこのまま庭のオビジェ代わりに置いておこうと
思います。そして、この季節はずれのツリーを眺めながら、
停電時にはこんな小さな灯りでも助かる事が有るかもしれない。そして、
ソーラーパネルの基地が出来れば良いのになあ、と思わずにいられません。
せめて緊急時の電力供給がソーラー蓄電で可能になれば、
どんなに安心なことでしょう。
庭掃除の最中、植え込みの陰からひょっこりノラ猫カナちゃんが
顔をのぞかせました。今年も厳しい冬をサバイバルして偉かったね!
これからしばらくは彼女にとっても過ごし易い良い季節です。
そう思って様子を見ると、心無しかホッとした表情をしているようです。
季節は巡り、ノラ猫も四肢を伸ばして空を仰いでいます。
節電を余儀なくされている地域の友人から、
夜空がきれいだ、というメールが届きました。
時々口に出して言いたくなる大好きな言葉。
『 好きなもの イチゴ、珈琲、花、美人、懐手して宇宙見物 』(寺田 寅彦)
こんな時だからこそ「 懐手して宇宙見物」も良いかも知れませんね。
岡村 恭子
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カーテンの横からひょっこり顔を出したノラ猫カナちゃん。
クロッカスやスノードロップが早春の庭に彩りを添えています。
お陽さまに向かって葉を広げるゼラニウム。
もう少し暖かくなったら花壇にお引っ越しです。
【きょうのクロスステッチ Vol. 86】 by 岡村恭子
VOL.86 笑顔が戻りますように。
torsdag den. 17 marts 2011
カチカチンに凍っていた庭の土も、
少しずつ解けて…氷が水になり、その水分をたっぷり含んで
スポンジのように柔らかくなりました。
そして、そのスポンジの土の中から春の花の芽が顔を出し始めています。
チューリップ、水仙、クロッカス、ムスカリ、
どれもツンツンと空に向かって元気に伸び始めています。
桜の枝の先も赤くポッテリとふくらみ始めているようです。
厳しい冬をサバイバルした草花達は実に逞しい。
辛い季節を耐えて花を咲かせる準備を始めています。
東京に住む若いママのブログです。
http://ameblo.jp/namiclip/
震災後のショックから立ち上がろうと、気丈に行動している姿は
本当に立派だと思います。
そして、
彼女のように健気に頑張っている人がたくさん、たくさん、いる!
今こうしている瞬間も数えきれない人々の勇気と知恵が日本を救い、
これからも支えて行くのだと信じています。
春は絶対に来ます!
【きょうのクロスステッチ Vol. 85】 by 岡村恭子
VOL.85 ひと鉢の春
torsdag den. 10 marts 2011
先週末のことでした。
強い風が上空を通過した後、気圧配置が春に変わったような気が
した私は、喜び勇んで庭に飛び出しました。ところが、室内から
眺めているのとは大違い、芝生はまだ凍っていてカチカチ状態!
土を掘り返そうとしても、固くてシャベルの先が入ってくれません。
それでも、レンガ塀の近くの比較的暖かそうな場所を掘ってみたら、
霜柱の立った土の中でヒヤシンスの芽が尖った頭を空に向けて伸ばし
始めていました。
故 武田百合子さんのエッセー「富士日記」の中に、深沢七郎さんから
もらった何本もの梅の苗木を凍っている土に黙々と植えて行く場面が
あります。植えた後も無事に育つかどうか?ハラハラするのだけれど、
しっかり根付いて花を咲かしてくれた。それを見て彼女は、
案外凍っていた土だったことが幸いしたのではないか?
解けた水がじわじわと根っこに吸い込まれていったのではないか、と
思うのです。本当の春が来るのを待ちきれずに霜柱の立っている土を
いじり始める今頃になると思い出す一節です。
でも、這いつくばるようにして凍土と格闘する彼女にはとうてい叶いません。
私はすぐにギブアップです。
この国の人の花好きに関しては今までに何度となく書いていますが、
今頃ですと鉢植えのパンジーやムスカリなどの早春の小さな花達が
店先に並び始め、人々が気軽に買い求めてゆきます。
リンゴを一つ買い足すような気軽さで小さな花を手にする。
親しい人を訪ねる時のお土産も”ケーキ”ではなくて”花”なのです。
私がデンマークに来た頃から少しも変わらない、人々の暮らしに
根付いた美しい生活習慣だと思います。
そして『豊かな暮らし』というのは、案外こんなささやかな心のゆとりから
生まれるのではないかな?と思ったりしています。
植物は生き物ですから水やりやを怠れば、すぐにダメになります。
そのかわり、鉢植えなら室内で充分楽しんだ後、庭やベランダに植えてあげると、
何年も咲き続けてくれる事だってあります。
忙しい時間の合間に面倒をみてあげるのも、『心のゆとり』が有るからこそ
と言えそうです。
家人は気が向くと帰宅途中に花屋さんに立ち寄り、一束抱えて帰ってきます。
さしずめ駅前のケーキ屋さんの菓子折り代わりという感じです。
先日はチューリップを30本でした。
買って帰って来たときはオレンジっぽかった花は水をたっぷり吸って
翌日には目にも鮮やかな赤い色になりました。
春近し…です。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
ひと鉢の春を楽しむ…パンジーと水仙
カチカチに凍った土の中から顔を出したムスカリ
窓辺で花開いた赤いチューリップ。赤い色に元気をもらって。。。