2017年10月~12月
【きょうのクロスステッチ Vol. 407】 by 岡村恭子
VOL.407 中秋の名月の頃 : 窓辺の灯り、月明かり
torsdag den. 5 oktober 2017
一雨ごとに秋も深まって、室内の照明が暖かく感じられるように
なってきました。
昨日のこと、
出張でコペンハーゲンを訪れた某氏が笑いながら言いました。
「デンマークの人は夜もカーテンをしないんですね。
通りから室内が丸見えでした。」
確かに、デンマークの人はカーテンをしない… というよりも
T.P.O.で使い分けているという方が正しいかもしれません。
とにかく、夜になったからと言ってカーテンで閉め切ってしまうと
いうことはありません。たとえ見られてもあまり気にしないし、
それに じっくりと覗き込まない限り、中の様子までは案外見えないものです。
それよりも“ 外からどう見えるかな? “ と考えながら窓辺をディスプレイ
して楽しむ。住人のセンスがそんな所でも発揮されるのです。
住宅以外にも、例えば、夜更けに大通りの商店街を歩くと、
閉店時間なのにショーウィンドウは煌々と照明されていて明るい!
これは防犯対策です。最初見た時にはなんと不経済な!と思いましたが、
考えればとても理に叶っている。現在では全てLEDで省エネだし、
おかげで夜中も大通りは明るく安全。まさに一石二鳥です。
さて、カーテンの話題ついでに我が家のカーテンは、というと、
なんと全室ぜーんぶ私が縫いました。よく見ると “手作り感 “ 満載です。
この不器用な私が!と我ながら感心してしまうのですが、
この家に引っ越してきたばかりの頃は無我夢中で、
IKEAで大量のカーテン生地を買い込み、来る日も来る日もカーテン作りでした。
そんな遥か昔の手作りカーテンが今も健在です。長持ちの秘訣は簡単、
西陽が眩しい時に引く以外、ほとんど使わないからです。
四季を通じてなるべく陽光を取り込み、室内から窓越しの庭を楽しむこと、
これも長年の北欧暮らしで学んだ日々の楽しみ方の一つです。
秋の夜長、
尽きない話を惜しみつつ某氏を見送りながら、見上げた夜空に朧月です。
そう言えば、10月4日は十五夜でした。
コペンハーゲンはあいにくの雨降りでお月様は見えなかったけれど、
十五夜など知らないデンマークの天気予報士が
6日の金曜日が満月だと伝えていました。
てっきり十五夜が満月だと思っていたけれど、どうやらそうとも限らないらしい。
というわけで、今夜お月見をしたいと思います。
お月様がらみでもう一つミニトピック。
毎年秋に見られると勝手に思い込んでいたスーパームーンですが、
残念ながら年内に周期は巡って来ず、次回は年が改まった
2018年の元旦だそうです。
2018年は初日の出とスーパームーンの2大競演で幕が開く。
晴れがましいと照れてしまって、文字通りお月様が雲隠れしませんように。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
ススキの穂が風に揺れ、レンガのツタも色づいて、街も野原も秋の装いです。
隣家の庭越しに望むお月様、この夜は丁度ハーフムーン。
夜の庭から眺めた我が家の窓辺。手作りカーテンも遠目には良い感じです。
【きょうのクロスステッチ Vol. 408】 by 岡村恭子
VOL.408 気まぐれお天気の楽しいひと時。
torsdag den. 12 oktober 2017
日毎に日没時間が早くなり、夜の闇が深くなってきました。
今週金曜日の夜は恒例のカルチャーナイト、そして秋休みが始まります。
子供達はカボチャのキャンドルを灯し、怖い?仮装をして過ごすハロウィン、
ドングリ拾いにキノコ採り、そうこうしているうちに秋は足早に過ぎて行き、
(ステッチハウスのページにもたくさん並んでいる)
赤い帽子をかぶったNisse達が目を覚まし、屋根裏でクリスマスの準備を始めて
いるような、そんな気もする今日この頃です。
朝、出かけようとしたらサラサラと音がします。雨です。
さっきまで青空が広がっていたのに、本当に変わりやすいお天気…。
西の空を睨んで雲が切れたのを確認して出かけました。
今日は久しぶりに延江さんとランチをする約束なのです。
秋のオープンステッチハウスの話を聞くのが楽しみです。
でも、その前にちょっと足を伸ばして衆院選の期日前投票を済ませてしまおう!
ちょっと、と言う割には交通のアクセスが悪い場所で、毎回行く度にどうして
こんな不便な場所に移転したのだろう?(以前はストロイエからほど近くて
便利でした。)と首を傾げてしまう。文句を言いつつ、つい先日も
パスポート申請で来たばかりなものだから、ガードマンとは顔なじみ?です。
https://www.stitchhouse.jp/hpgen/HPB/entries/1724.html
「やー、今日は 」と笑顔でドアを開けてくれました。
前回は “ 俄か健康オタク “ になってウォーキングで街に戻ったけれど、
今日はそんな時間は無い。投票をすませると急いでストロイエへ。
延江さんは相変わらず元気一杯です。刺繍にまつわる楽しいエピソードを
一気に話してくれた後、急に夢見るような表情になったと思ったら、
「あそこにずっといたかったなあ…」とポツリ。
小さな島でイルカと一緒に泳いだこと、その海の美しかったこと、満天の星空のこと。
仕事だけでなく自分の時間も大いに楽しんでいる彼女の姿は、側で見ていても
晴れ晴れとして気持ち良いし、こちらまで嬉しくなります。
その後、ニューハウンにあるショップ、マリリア www.mariliadk.com を訪ねて、
そこでまたまたグラスを傾けながらおしゃべりが弾み、オーナーの孝子さんの
愉快で楽しい、そして時に含蓄ある人生訓話に笑い、頷いているうちに
すっかり時間が経ってしまいました。
ニューハウンはどこを切り取っても絵葉書のようです。
私たちがマリリアで談笑していた間に俄か雨が降ったのでしょう。
濡れた石畳を滑らないように気にしながら交差点で立ち止まった、その時、
突然、体ごと巻き上がれられるような突風 と、同時に横殴りの雨です。
自転車も歩行者もなぎ倒さんばかりの勢いで黒い雲が遠ざかると嘘のように
青空が広がりました。やれやれ、飛んだ気まぐれ天気の1日でしたが、
それも良し!です。楽しかったひとときに感謝しつつ…。
次の黒い雲が来る前に家路を急いだのでした。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
延江さんとの待ち合わせに場所に向かう途中でこんな素敵な馬車に遭遇。
ついでにハロウィンのカボチャが並んだショーウィンドーもパチリ!
マリリアと孝子さん。ニューハウンの歴史的な建物の一角、蔦の絡まる中庭が美しいですね。こんなところにも自転車がいっぱい!
(30年以上続いたショップは今月いっぱいで一区切り。今後は
引き続きインターネットでショッピングをお楽しみください。とのことです。)
Illumデパートの地下のイタリアンダイニング。広々しているので大人数でも大丈夫。
ショッピングの途中で気軽に立ち寄るのにオススメです。
写真はデザートのティラミス。
【きょうのクロスステッチ Vol. 409】 by 岡村恭子
VOL.409 世界の共通語。広がって行くコトバたち。
torsdag den. 19 oktober 2017
この所お天気に振り回されてばかりいます。
晴れていたと思ったら、たちまち雲が広がって雨降りになってしまう。
ファッションブティックの店先にレインコートが並び、
少々の雨では傘などささないデンマークの人も雨傘必携の日々です。
それでなくても日照時間は日増しに短くなっているのです。
気温が高めなので空気が湿っぽく、庭にはキノコがニョキニョキ、
手の平ほどもあるのから米粒のようなのまで色も形もまちまちに、
まるでキノコの見本帳のようです。
いつもなら丁度今頃から見頃を迎える紅葉も思い切りが悪く、
木の葉を落して良いものか?と考えあぐねている様子です。
寒いけれどカラッとした北欧の秋は一体どこへ?
今夜も雨降り、静かな夜です。
夕食後、テレビから流れるてくる声を聞くともなしに聞いていたら、
はて? “ E・ MO・ JI “ と言っているような…。EMOJI 、エモジ…?!
ひょっとして “ 絵文字 “ のこと?
読みかけていた本から目を離して画面を見ると、街角の若者たちが
携帯に何やら書き込みながら楽しそうです。
只今デンマークでEMOJIのアプリが大人気なのだそうです。
今更 絵文字でもないでしょう?という声が聞こえて来そうですが、
内容云々よりも日本語がそのまま固有名詞になって使われているということ
が嬉しい。PANKOとEDAMAMEだけじゃなかった!
https://www.stitchhouse.jp/hpgen/HPB/entries/1719.html
新発見!と喜んでいたら、KARAOKE やMANGAと同じ。世界の常識よ、
という声が聞こえて来ました。
へえ、そうなのねえ。
そういえば、世界のビジネス界では “ KAIZEN “ =『改善』という言葉が
普通に使われているとか。この調子だと、私の知らぬ間に他にも一人歩きを始め、
世界中で活用されている単語が沢山ありそうです。
オモテナシ モッタイナイ を初め、東京オリンピックの時には便利なコトバを
通じて、垣根のない自由なコミュニケーションの輪が広がることでしょう。
楽しみですね。
さて、日本とデンマーク友好150周年記念のイベントも大詰めを迎えています。
秋休みの今週末には日本の職人さんを招いてのワークショップが開催されるそうです。
http://apetersen.dk
職人技=クラフトマンシップの伝統を大切に継承して来たということも両国の
自慢できる共通点だと思います。
手仕事が大好きで刺繍に夢中!そんな皆様が趣味の世界を楽しみながら、
両国の文化交流の架け橋になっている。こんなステキなことはない!と思います。
これからも、ステッチハウスを通じてデンマークの伝統的手工芸=刺繍が
さらに広まり大きく花開くことを願っています。
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
秋休み、写真はチボリのメインゲートにはハロウィンの大きなカボチャ。
旗のポールにしがみついているのは だあ~れ??
工事だらけの市庁舎前広場の様子。メトロの工事もようやくメドがついたようです。
今日の庭から。
蔦アジサイの葉も秋色に。芝生の枯葉が秋の深まりを感じさせます。
【きょうのクロスステッチ Vol. 410】 by 岡村恭子
VOL.410 あなたは “ 茹でる派 “ それとも “ 茹でない派 “ ?
torsdag den. 26 oktober 2017
お天気と日照時間に一喜一憂してばかりの北欧暮らしですが、
それにしてもパーっと晴れてくれません。
今日も今日とて、今にも降り出しそうな空に向かって、まだよ、
まだ降らないでよ、と言いながら、大急ぎで落ち葉掃きを終了、
ホッとした途端にポツン ポツン…。フー、滑り込みセーフでした。
こんな午後はキッチンでのんびりお料理を楽しむのが一番です。
これからの季節はオーブンを使った献立が頻繁に登場します。
クリームグラタンもいいけれど、今夜はラザニアにしようかな。
そういえば、いつだったか、日本から来た友達と一緒にラザニアを
作ろうとした時のこと、私が箱から出したラザニアの板をそのまま重ねてゆく
のを見て、目をまん丸にして驚いたのを思い出しました。
茹でなくて大丈夫?…心配して覗き込む彼女に、エッ?!茹でているの?
こちらがびっくりしてしまった。
さてさて、皆さまは “ 茹でる派 “ ?それとも “ 茹でない派 “ ?
私がデンマークに来たばかりの、まだ和食の材料を手に入れるのが至難の技
だった頃から、スーパーの棚には当然のように四角い箱入りのラザニアが
並んでいました。そうよね、ここは日本よりイタリアの方がご近所だものね、と、
感心していた、そんなある日、デンマーク人の友達夫婦に夕食に招ばれて
出て来たのが大きなバットに入ったチーズたっぷりのラザニアでした。
熱々をバットごとテーブルの真ん中に置いて、みんなで切り分けて食べる。
なあるほど、これは良いアイデアと感心したら、デンマークの家ではみんなこうして
食べている、と笑いながら作り方を教えてくれたのでした。
もちろん、彼女は “茹でない派 “ 。以来そのレシピを少しずつ自分流にアレンジして、
今も我が家の定番メニューの一つとして君臨しています。
たくさん人が集まる日はバットに2枚並べて。
普段は半分に折って使っています。
___________________________
材料 4人分
ミートソース 牛肉 400g
玉ねぎ、にんにくのみじん切り、
トマト缶
トマト 4個くらい スライスマッシュルーム
塩、オレガノ、バジル
ペシャメルソース 牛乳 300cc
バター 大さじ1くらい
小麦粉で解いた牛乳 適宜
塩、胡椒
とろけるチーズ適宜
作り方
1 ミートソースをあらかじめ作っておく。私はトマトたっぷり入れて長時間煮込みます
2 小鍋に牛乳を入れ、中火にしてバターが溶けたら味を整え
水溶き牛乳でとろみをつける。
3 耐熱プレートにミートソースを板のサイズくらいに敷く。
4 3の上にラザニア板、ミートソース、ペシャメルソース、チーズ。
5 4の順番で繰り返し、最後にたっぷりのチーズをのせて180℃~200℃の
オーブンで約30分じっくりとチーズがきつね色に焦げるまで。
ラザニア板はソースと馴染んですっかり柔らかくなっているはずです。
ミートソースはたっぷり作り、小分けにして冷凍保存すると重宝です。
岡村 恭子
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●来週から2回ほどお休みさせて頂きます。
写真ように重ねてじっくり焼くこと30分、柔らかくなったラザニアに
チーズ、トマトソース、そしてミルキーなペシャメルソースが絡まり渾然一体と
なったところがラザニアの美味しさの秘訣、赤ワインとの相性も抜群です。
【きょうのクロスステッチ Vol. 411】 by 岡村恭子
VOL.411 秋の東京 地域密着型滞在記
torsdag den. 26 november 2017
秋の東京から戻りました。ひと月ぶりの更新です。
「(彼らの住まいを)自由に使ってください。」という友人のおかげで、
今回は いつもと一味違う地域密着型ともいうべき滞在となり、
夕食の献立を考えながらスーパーで買い物し、お惣菜屋さんの
揚げたてコロッケを買ってぶらぶら帰る…、そんな日常の暮らしを
楽しむことができました。
思えば、家人は20代前半に留学でデンマークに来て以来、
私も結婚を機にコペンハーゲンに暮らし始めてからというもの、
デンマークの家が “ 我が家 “ ですから、日本では実家に身を寄せるか
ホテル逗留です。実家だし遠慮無用というものの長期滞在となると
生活テンポの違いからお互いに細かいところで気疲れする。第一遠い!
その点ホテルは便利で気楽ですが、長期になると自炊料理が恋しくなる。
いずれも違った意味で不便が伴います。 今回はそんな諸問題が
いっぺんに解消されたのですからこんな嬉しいことはない。
早速荷を解き合鍵を受け取って、さあ、にわか東京暮らしのスタートです。
そこは緩やかな坂道の途中に位置していて、南向きのウッドデッキから、
ちょこんととんがりコーンみたいなのが見える、と思ったら東京タワーだった、
というような場所で、木立に囲まれていて毎朝小鳥達がやって来ます。
坂の下に学校があって、校庭で遊ぶ子供たちの声が聞こえて来るのもなんだか嬉しい。
坂道をタラタラと下りてゆくと駅まで商店街が続き、TVの散歩番組で
見たことのあるような風景が広がります。
おせんべい屋さんをのぞいたり、畳屋さんが畳を打っているのを拝見したり、
民家の軒先に所狭しと並べられた鉢植えにも、明かりの灯った夕暮れの商店街にも
何やら懐かしく甘酸っぱい郷愁を誘う時間と空間に満ちているのでした。
おきまりの銀座に始まり、御茶ノ水から神田古本市へ、根津から谷中を抜けて
日暮里へ、はたまた、古河庭園から六義園、神楽坂から早稲田通りへと、
とにかく良く歩きました。いつもの何十倍も歩いたような気がします。
そして、今更のように気がついたのは東京は坂道の町だということでした。
団子坂に柘榴坂、三宅坂に弥生坂、暗闇坂などという怖い坂道もありました。
コペンハーゲンに戻り、どこも真っ平らなのに呆れかえってしまった。
そんな楽しい思い出と一緒にトランクの中から出て来たのは、
散歩の途中で見つけたあれこれです。
日差しが眩しい午後、ふと通りかかった小さなお店で手にした帽子、
神田古本市で掘り当てた “ 永井荷風随筆集上下巻 “ 、神楽坂で買った塗り箸と
谷中の竹細工屋さんで見つけた料理用ヘラはキッチンの所定の場所に
しまいました。目黒のマルシェではデンマーク語で “ Hjem=お家 “ という
文字が縫い付けてある小さなポシェットを購入しました。他にも細々と、
どれもこれも見る度、使う度に “ あの時 “ を思い出すことでしょう。
深い闇にすっぽり包まれてしまう北欧の夜長、 時差ボケの取れないまま、
本棚から取り出した一冊は『日和下駄とスニーカー』(大竹昭子著 洋泉社 刊)
筆者の語る “ 谷道、尾根道、坂道の街=東京 “ を肌で感じた旅を反復しています。
岡村 恭子
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弥生坂。東大の農学部横を根津までタラタラと坂道が続きます。
旧古河邸の庭園より。すり鉢状の土地を生かし、和洋折衷の変化に富んだ庭園。
秋のバラが見頃でした。バラのシューアイスは180円。
申し込めば茶室でお点前をいただけるそうです。
根津神社と六義園より。
買ったばかりの帽子をかぶって六義園の笹の道を歩く筆者。
【きょうのクロスステッチ Vol. 412】 by 岡村恭子
VOL.412 デニッシュチャームなクリスマスシーズン⭐
torsdag den. 30 november 2017
今年のカレンダーも最終ページとなりました。
これから24日のクライマックスに向かい職場や学校で、そして
もちろん家族揃って、思い思いのクリスマスイベントが繰り広げられ、
暖かく華やいだ雰囲気に包まれてゆきます。
ずっと欲しかった、でも買ってもらえなかった玩具。サンタさんに
お願いしたけどちゃんと届けてくれるかなあ?…、ドキドキしながら
クリスマスを迎える子供達…、というのは残念ながら物語の世界だけ。
今や小学生でさえスマートフォンや最新のPCソフトが “ 欲しいものランキング “
の上位を占めるという時代です。現実的で夢がないなあ、と嘆きながら、
それでも、やはり北欧の人々にとってクリスマスは一年を締めくくる
一大イベントです。
12月のカレンダーは瞬く間に予定で埋まり、慌ただしいうちに冬至が過ぎ、
真っ暗な闇にキャンドルやクリスマスイルミネーションが宝石のように輝く。
それはもしかしたら明るい季節を待ち焦がれる人々のラブコールなの
かもしれません。
今頃になるとお花屋さんはもちろん、スーパーマーケットの店先にも
様々なクリスマス用の生花が並びます。買い物ついでにリースを買って帰る。
ちょうど正月用の松飾りのような感じです。
デコレーション用の松ぼっくりや緑色の苔、魔法の杖と呼ばれる柳の小枝や
赤い実のついた柊などが束ねられて山積みされています。
街角に店開きしたツリー屋さんで品定めしながらモミの木のグリーンノート
に包まれれば、お手軽な即席森林浴気分です。
デンマークの人はクリスマスに限らず、季節を通じて緑を室内に取り入れて
楽しみます。大型店の進出で個人商店が姿を消して行く中で、お花屋さんと
パン屋さんは健在です。それどころかここ数年、人気店が増えている様子です。
焼きたてパン大好き!&たとえ一本でも花のある暮らしをしたい!そんな、
ライフスタイルが垣間見えるようです。
時々耳にする “ デニッシュチャーム “ という言葉のイメージも、
そんな日常に見え隠れしているような気がします。
家々の窓辺にクリスマスオーナメントが揺れ、
街角のコンデットリーから甘い焼き菓子の匂いが流れて来る頃、
早くも闇に包まれた広場のツリー屋さんに親子のシルエットが浮かぶ。
クリスマスシーズンは、そんな hyggeligで “ デニッシュチャーム “ な
光景があちこちで繰り広げられるのです。
岡村 恭子
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街角スナップより
コペンハーゲン中央駅のツリー、目抜き通りにはクリスマスのシンボルの
赤いハート、そして、早くも店開きしたツリー屋さんなど。
球根付きのヒヤシンスを庭の苔やツタで簡単アレンジ。
【きょうのクロスステッチ Vol. 413】 by 岡村恭子
VOL.413 人懐かしいクリスマスシーズン 💌
相手を思い、心を通わせる
torsdag den. 8 december 2017
それは、ようやく春の日差しが明るく感じられるようになった頃の
ことでした。
コペンハーゲンのギャラリーショップで、普段はなかなか見ることのできない、
デンマークの陶芸作家Kirsten Slothの作品を鑑賞する機会がありました。
いずれも片手に乗ってしまうくらいの小さな愛らしい陶器が全部で100個!
私はその中から花のモチーフが描かれた一つを選び、予約済みのシールを
貼ってもらいました。作品は引き続き展示される為ずっとお預け状態でしたが、
先日ようやく “お待たせしました。受け取りに来てください。” との知らせです。
当日はこの日を楽しみにしていた人が…えーっと、100個だから簡単計算で100人、
同伴者も加わって更に賑やかです。
まるでクリスマスプレゼントをもらう時のようだ、と笑いながら作品を受け取り、
ひと通りの挨拶を交わした後、
ところで、彼らは相変わらず元気でしょうね?!と、キアスティンが
親しみのこもった、でも、ちょっぴりいたずらっぽい笑顔でたずねました。
“ 彼ら “ とは家人とエリックのことです。
実は三人は同じデザインスクールで学んだ仲間、おまけに偶然とはいえ、
後に彼女の結婚した相手が家人たちのデザインした家具を取り扱う
ビジネスパートナーだったのですから、縁とは不思議なものです。
おかげさまで、元気元気!と私も笑って答えながら、
何年たっても気心の知れた友達がいるのは幸せなことだとしみじみ思いました。
そして、秋に東京で会った学生時代からの友達とのひと時がフラッシュバック。
風邪気味だとブツブツ言いながらも頼り甲斐のある彼女と、
会う前日に転んでしまい杖をついてやって来たおっとり彼女の計二人。
久しぶりの再会が風邪ひきと骨折だなんて!と笑いながら、私だけ元気なのは
デンマークが水にあっている証拠だ、と言うことになったのでした。
会えば、たちまち学生時代に戻って、それだけで居心地よく心が和む。
たとえ、おしゃべりが途切れても(そんなことあまりないけれど)
気まずくならないのは気持ちが通じているからなのだろうと思います。
お互いの個性を尊重したいという気持ちになってきたのも年齢を重ねたお陰と
言えそうです。
いつまでも元気と思ったら大間違い。会える時に会っておこう!と、
今回も冗談半分に言い合ったけれど、それも結構切実に感じられる年齢に
なって来ました。
さて、小さな器を受け取っての帰り道、
眩いくらいクリスマスイルミネーションに彩られた通りを歩きながら、
北欧のクリスマスは親しい人同士が親睦を深めてお互いを一層身近に感じ、
相手を思いやり、心を通わせる…。そんな人々の気持ちがキラキラ輝く
イルミネーションのように幾重にも重なり合っているような気がしてきました。
そうして、みんな ひとりぽっちじゃないよね、と確認しているんだね、きっと。
岡村 恭子
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クリスマスシーズンのコペンハーゲンは深い闇の下でキラキラ輝くようです。
マーケットからは甘いお菓子の匂いが。
カフェやレストランもたくさんの人で賑わいます。
小さな陶器を手にして、人の縁の大切さを改めて思った週末でした。
【きょうのクロスステッチ Vol. 414】 by 岡村恭子
VOL.414 思い思いの ヒュッゲ “ なひと時。
デンマークの クリスマスシーズン
torsdag den. 14 december 2017
毎日慌ただしくしているうちに12月も半ばを過ぎてしまいました。
24日のクリスマスイブまであと10日足らず、レースでいうと
最後の直線コースに入った感じ、いよいよラストスパートです。
街はクリスマスショッピングのピークを迎え、プレゼントを探す人人人 、、
で賑わいを通り越して大混雑になります。
ただでも大柄なデンマーク人が、着膨れてさらに一回り大きくなって
それだけでも十分場所を取っているのに、プレゼントの入った大きな袋を
両手いっぱい抱えて、ぶつかり合いながら行き交う様子は、本人たちは必死
なのだろうけれど、傍目にはどこかユーモラスで、微笑ましくも感じられます。
ツリーの下にプレゼントを置いたら、みんなの大好きなユールグルックと
丸いドーナッツのエーブルスキーバーでおしゃべりしたり、
オーナメントを作ったり。キャンドルを灯した部屋はもみの木の香りと
お菓子の甘い匂いが一緒になって、まさにクリスマスの香りに包まれる…
そんな情景が繰り広げられます。
こんな時に人々は “ Hvor er det hyggelig! “ 「 とっても、ヒュックリねえ 」
と言い合う。クリスマスシーズンは “ ヒュッゲ “ なシーンがあちこちで
展開しているのです。
そんな “ ヒュッゲなひと時 “ を私たちも!と、
延江さんと待ち合わせたのはロイヤルコペンハーゲン本店でした。
この時期はクリスマスだけの特別なテーブルコーデイネートが
各フロアに展示されます。毎年趣向を凝らした演出で、それをお目当てに
来る人々で賑わうのですが、今年はロイヤルバレー団のトップダンサー達の
コーディネートだそうで、なるほど、とても華やかな印象です。
絵画的というのかしら?こってりと何層にも色を重ねたような重厚感漂う
インスタレーションに、ヨーロッパの歴史的な重みまで感じられます。
普段、真っ白い食器中心にシンプル&カジュアルを実践している私には
まるで舞台のワンシーンを鑑賞したような気持ちになったところで、
さあ、さあ、お茶にしましょう!
階下のロイヤルカフェはバレリーナ風ではなく、アットホームな
雰囲気に包まれていて心和みます。そして、温かいユールグルックと
デリシャスなケーキを頬張りながらの取り留めないおしゃべりは
文字通りヒュックリ!。瞬く間に時間は過ぎてゆきました。
カフェから出ると早くも夜のとばりが下り始めた通りに赤いハートの
オーナメントが輝いています。今が一年中で一番暗い時期です。
クリスマスが過ぎれば少しずつ明るくなってゆくのです。
もう少しの辛抱。。。
人々がクリスマスに夢中になる気持ちが自然に伝わって来るような気がした
帰り道でした。
岡村 恭子
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ロイヤルコペンハーゲンのクリスマスディスプレイの一例。
ロイヤルコペンハーゲンの窓からはストロイエを行く人やクリスマスマーケットが。
ロイヤルカフェ店内とユールグルック&美味しいケーキを完食して満腹!
クリスマスマーケットから。売り場にあふれんばかりの小さなクリスマスグッズ。
クリスマスに欠かせないホットドリンク、グルックです。
シナモン、カルダモン、ナツメグ、他さまざまなハーブの香りが
ホットワインに溶け込みます。レーズンとアーモンドをたっぷり入れて
熱々をいただきます。
Gløgg Tea は延江さんから。お茶は新アイテムです。
【きょうのクロスステッチ Vol. 415】 by 岡村恭子
VOL.415 我が家のクリスマス 2017
torsdag den. 28 december 2017
今年も残りわずかとなりました。
“ きょうのクロスステッチ “ も今年最後のページです。
予定通りクリスマス前に更新しよう!と張り切っていたのですが、
クリスマスイブを目前に、買い物に追われている内に猛スピードで
時間が過ぎてしまい、今日になってしまいました。
クリスマスホリデーは連休でお店が閉まってしまうため、
その前に買い物を済ませてしまわなければならないのです。
最後までプレゼント探しで駆け回る人もいて町中がカオスです。
中でも “これがなくてはクリスマスにならない “というほどの定番ご馳走
Flæskesteg (= 皮付きの豚ロースのローストで最低でも2~3kgはある
という大きなお肉の塊 )は日持ちしないので間近になってからじゃないと
ダメなのですが、何しろ定番料理ですから さあ、大変!
スーパーの精肉売り場はお肉の品定めする人たちでいっぱいになります。
大きさ、色、カタチ、背脂の入り方や皮の状態など、持ち重みのする肉塊を
手に選定する眼差しは誰もが真剣勝負です。これだ!と思ったお肉を掴んだら
手放してはいけない!満足のお肉を求めてハシゴも厭わない覚悟で臨みます。
妥協せずに頑張る!のです。それがこのお料理の満足な仕上がりへの最短距離。
私たちも理想のお肉を求めてヘトヘトになった金曜日でした。
当日は娘が仲良しの友達とやって来て、一緒にお料理に挑戦することになり、
ニワカ料理教室のような賑わいになりました。
メインはもちろん皮付き豚ロースのローストです。
サイドメニューに合鴨の胸肉ポートワイン蒸しフルーツ添え。
それからデザートにはチョコレートムースのケーキ。
エプロンして張り切る娘たちと一緒に、赤ワインベースのホットドリンク :
ユールグルックを飲みながら、ああでもないこうでもないとおしゃべりをしながら。
そうしている間にもハサミ片手に裏庭に出て、ツタやヒイラギの赤い実を
取り込んでテーブルに飾ります。
こうして、クリスマスならではのHyggelig =“ ヒュッゲなひと時 “ が過ぎてゆきました。
2日間に渡り美味しい食卓を囲み、プレゼント交換をし、楽しく和やかに
クリスマスホリデーを過ごし、ようやく一息ついたところです。
忙しくしていた間に冬至も通り過ぎてくれました。
これから少しずつだけれど確実に日照時間が長くなってゆくのです。
そして、つくづく思います。北欧の人々にとってクリスマスは暗い季節を
忘れさせてくれる輝きに満ちた毎日なのだ、ということを。
みなさまのクリスマスはいかがでしたか?
壁にかけた刺繍のモチーフを “ もみの木 “ から “ 松飾り“ に変えて
新年を迎える準備に忙しくしているのではないでしょうか?
平和な年明けなりますようにと願いつつ
岡村 恭子
http://copenhagensmile.weebly.com/
写真はすべて我が家のクリスマスから。
Flæskesteg : 皮付き豚ロースのロースト。キャラメルでからめた小芋を添えて。
合鴨料理は丸ごとは難しいので、私は胸肉を使います。
塩胡椒して両面を焦がしたところにポートワインを振りかけて。
細かく切ったリンゴ、洋ナシ、ドライプルーンん甘みがよく似合う一品。
娘たちの力作、ケーキも大成功!
私はクリスマス用のキャラメルを作りました。
ラッピングを工夫したら素敵なプレゼントの完成です。