2010年4月~6月

【きょうのクロスステッチ Vol. 45】 by 岡村恭子

VOL.45 イースター明け 第一便

torsdag den 8. april 2010

こんにちは。
先週はイースターホリデーでこのページもお休みを頂きました。
残念ながら後半は雨になってしまいまったものの、かなり庭仕事が
はかどりました。
まずはジャガ芋畑作りです。(きょうのクロスステッチVOL.23)
広いのに場所が無い!というのが我が家の庭の問題点で、
引っ越して来た時には薮だった辺りを開墾して何とか確保したのが、
今まで苺を育てていた猫の額ほどの三角地帯なのです。
こんなささやかな畑、何も考えずに掘り返してしまえば簡単なのでしょうが、
私は苺の株の取り残しや、エゾネギの根が出て来ると見捨てられず、
シャベルのお腹に乗せて移転先を求めて庭をウロウロ…。
ここは良いかな?という場所を見つけて植え込んでいる内に、
その辺りの草取りを始めてしまう…。そんな繰り返しなので本当にはかどらない。
広い庭のあちらからこちらへ、シャベル片手に動き回る私に半分呆れつつ、
多分そういうプロセスを楽しんでいるのだろう、という
家人の声を聞き流して、それでも、何とかきれいになりました。
只今肥料を加えて寝かせています。
夏にはジャガ芋収穫便りができるかな?と、今からとても楽しみです。

庭は早春の花達でにぎわいを見せています。
前回のエランティスやスノーボールはもうお終り、今はクロックフラワー
(花頭を釣り鐘のようにして咲く小さな春の花達の総称)を中心に
ヒヤシンスも顔を出し始めています。バラの花壇にはムスカリの芽が
ツンツンと可愛らしい角を立ててお日さまに向かって延び始めました。
北欧の春は植物の成長エネルギーで溢れるようです。ですから、
『春眠暁を覚えず』の反対。人間達も元気になって活動したくなる。
少なくとも私はそうです。長い冬眠から目覚めた動物もさも有りなん、と
いうような気分です。
そういえば、厳寒だった冬をどうサバイバルしたのか?ノラ猫カナちゃんが
ひょっこりと顔を見せに来ました。カナ猫も冬眠から目覚めたのでしょうか?
その日から、また何事も無かったように勝手なルーティーンでやって来て、
いつもの場所で昼寝をしています。
彼女の場合は『春眠暁を覚えず』のようです。

桜の木の芽がふっくらと白くはじけ始めています。
今年もきれいに咲いてくれますように。


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

クロックフラワー。良い香りがします。

紫色のクロッカスよりも遅咲きの黄色いクロッカス。


名前は不明ですが、薄紫の金平糖かお星様のようです。
いずれも庭を彩る春の花たち。プラムやリンゴの木の下に
群生して咲いています。

畑仕事に精を出す筆者。

【きょうのクロスステッチ Vol. 46】 by 岡村恭子

VOL.46 みみをすます

torsdag den 15. april 2010

「みみをすます」(谷川俊太郎)という詩があります。

『みみをすます きのうのあまだれに みみをすます』で始まり、
『あしたの まだきこえない おがわのせせらぎに みみをすます』
まで、言葉選びの秀逸なこの詩人は時空を越え、静かに厳かに
生きとし生けるもの全ての営みに耳を澄まします。
自分が生まれた瞬間や、私達の棲む星が誕生した瞬間にまでも耳を澄まします。
リリカルなフレーズが心に響いて、思わず声に出して読みたくなります。
あたかも詩人が朗読をするように、本を目線の辺りに掲げ、
その腕の肘の所にもう片方の手を添えたりして…ね。
実際にはそんな勇気はどこにも無く、庭に出したばかりの椅子に
腰掛けて春の日溜まりで黙読です。
この詩は日常忘れてしまっている大切な事を教えてくれます。
ただ『見聞きする』のでは無く『みみをすます』という事。
それは、心を広く持て、と同義語だろうと勝手に解釈しています。
読む度にそんな感じがしています。太古の昔からの自然の営みの、そのほんの
一瞬に存在を許してもらった自分を思い呆然としてしまいます。
作者は『耳を澄ます』という表現で、生きることの意味を語っているのだと
私は思います。

本のページを閉じて耳を澄ましたら、あらっ?今年も聞こえて来ました。
パッチン、プチプチ…。松ボックリの赤ちゃんがはじけ始めたのです。
我が家には数本の大きな松の木があります。この“プッチンパチパチ音”は、
それらの木の松ぼっくりが成長期に入ったお知らせです。
花粉症の私には辛い季節がやって来るお知らせでも有ります。
かなり悩ましいけれど、しかし、『みみをすます』…です。
恐竜時代から光合成を繰り返し空気をきれいにしてくれて、人間の住み処や
家具の材料に使われ、今でも冬場の暖炉の焚き付けに大いに役立ってくれている。
そう思えば、しばらくの間、私がくしゃみをして暮すのも仕方ないな、と
思えるような気がしないでも無い…。という複雑な心境です。

ところで、このページの掲載日4月16日はマ-ガレーテ女王の満70才の
バースデーです。
あしたの じょおうさまの ばーすでーに みみをすます
すると、馬車の音、沿道の歓声、衛兵たちの靴音、明るい陽射しの中で
祝福する人達に混ざってオメデトウ!なんて言っている私が見えました。


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

桜の蕾も膨らんで来ました。

チューリップのトップバター。これからどんどん咲く予定。

みみをすます プッチンパチパチ

【きょうのクロスステッチ Vol. 47】 by 岡村恭子

VOL.47 ガーデンセンターの巻き

torsdag den 22. april 2010

あたかも火山灰が北欧の上空を被っているかのような大騒ぎの1週間
でしたが、実際にはその間ずっと明るい春の陽射しが広がり、火山灰の
かけらも見当たりませんでした。トラブルに巻き込まれた方々には
申し訳けないけれど、たまには飛行機の飛ばない日々というのも
良いものです。

見上げた空がいつもより平和な印象の穏やかな昼下がり、
ガーデンセンターに行きました。
広大な敷地に大きな温室二棟と戸外の展示場があります。
展示といっても要するに園芸用品屋さんですから。樅の木や桜といった
大物の苗木から手のひらに乗る小さなパンジーのひと株まで、様々な
植木や草花の他にもありとあらゆるガーデニング用品が置かれています。
肥料や肥沃土コーナーやシャベルや芝刈り機が並ぶホームセンターのような
コーナーもあります。
ちょっと蒸れたような草花の香りが満ちた温室は、見渡す限り色とりどりの
可憐な花で埋まり、植物図鑑を観ているようです。
眺めているだけでも充分楽しいのですが、毎回それだけでは済まない
ところが問題です。こんな花が欲しかった!と一抱えも買い込んだ花が
実は我が家の庭にも沢山咲いていて、ひどくがっかりした事も有りました。
ガーデンセンターは誘惑上手なのです。思わず手当り次第に欲しくなる。
冷静にならなくては…「衝動買いに要注意!」と、これはガーデンセンターに
出かける前の呪文です。今回は特に肥料と念願の発芽ジャガ芋を買うという
しっかりした目的が有りましたから、大丈夫、誘惑に負けない!と
自分に言い聞かせていたのに、結局レジに並んだ時には主要目的の肥料:
芝生用15kgとバラ用5kgを筆頭に、発芽ジャガ芋2kg、
マーガレット大1株、小5株、ツツジ1株、通りがかりに見かけた
小さなローズマリーを1株、それから紫色の可憐な花ロベリアもついでに購入。
やはり“手ぶら”では済まないのでした。

帰宅早々、花を植え込んで行きます。大きな方のマーガレットとツツジは
先日求めたばかりのテラコッタのプランターにピッタリ納まりました。
小さなマーガレットはベランダの花壇に、ロベリアはレンガ壁に取り付けた
プランターに植え込み完了です。紫の小さな花が壁面を彩ってくれますように…。
ジャガ芋は只今室内で発芽中。もう少ししたら畑に移します。
こうして着々と夏に向かっての庭作りが進行中です。


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

デンマークではガーデンセンターは通称プランタースクール。                         確かに毎回学びます。

手前に並んでいるのがロベリア

手前がカンパニュラ、かすみ草も見えます。
温室内は一足早く初夏の気配です。

マーガレットとツツジの植え込み完了!

【きょうのクロスステッチ Vol. 48】 by 岡村恭子

VOL.48 便利なようで不便な世の中

torsdag den 29. april 2010

デンマークはデーターシステム化の先進国です。
私がこの国にやって来た30年前、既にIDカード制が登用されていました。
国民以外でも私のような者を始め、例えば留学生や駐在員など
滞在ビザを取得した人全てに適用されているのに驚き感心しました。
IDカードは保険証も兼ね、ホームドクターが明記されています。
万が一事故で記憶喪失になったとしても、このカードさえ有れば家族に
連絡がつくだろうし、お財布に入れておくだけでお守りみたいに
安心出来ると感じ入ったものです。そんなお国柄ですから、
各データーシステムもハイスピードで進化し、最近では就職活動も
銀行手続きもインターネット主導です。各人が24時間どこにいても
好きな時に処理出来るのですから、こんな便利な事は無いのでしょうが、
アナログ人間の私はついて行けません。未だにネットバンク切り替えに躊躇
しています。些細な金銭の出納も窓口で係の人の顔を見ないと安心出来ない、
そんな私を置き去りにしながら “頑張って付いて来い!”と
急かされているような気がしてなりません。

家人は家具デザイナーです。デザインの図面を作成し、メーカーの職人が
その図面を読み取りカタチにして行くのですが、その一連の作業の中に
コンピューターが入り込んで以来、どうもニュアンスが大雑把になって来たと
こぼしています。如何にコンピューターによる製造工程が均一で優れていようと、所詮は機械のやる事です。細かいニュアンスを汲み取る能力が不足しているのに
違い有りません。そして、機械が読み取れずに切り捨ててしまった部分が、
実はデザインポイントだったりするのです。
物事がデジタルで処理されて行くことが当たり前になるにつれ、
似たような事が毎日の暮らしの中にも生じて来ているような気がします。
思考回路がデジタル的に○×の消去法になってしまいそうになったら要注意。
○ と×の間の曖昧な部分を面倒がらず、じっくり考えるように心掛けたいな、と
思います。少々の煩わしさを厭わずに大いに悩んだりする事だけは、
今の所どんなに優れたコンピューターにも出来ない…はず。
あらっ?!銀行からのネットバンクに関する通知と睨めっこしていたら、
つい、こんなお話なってしまいました。
さて、気分転換!きょうはこれからジャガ芋畑を作ります。晩夏の収穫を
みなさまもどうぞお楽しみに。


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

チューリップが次々と咲いて来ました。

お花見までいよいよカウントダウン。

芝桜も咲き始めて…

これからジャガ芋畑を作ります。

【きょうのクロスステッチ Vol. 49】 by 岡村恭子

VOL.49 お花見カウントダウン

torsdag den. 6 maj 2010

先週は蕾だった桜の花がようやくほころび始めた、と思う間もなく
花咲か爺さんもかく有りなん…という感じで次々と咲き始め、
アッと言う間に“満開宣言”と相成りました。
さあ、今週末は待ちに待ったお花見です。
今年はステッチハウスのみなさまとご一緒にお花見をすることになり、
いつもより余計に楽しみが大きくなりました。
お天気が不安定で少々心配ですが、雨になったらその時は
“花より団子”です。おしゃべりに花を咲かせよう!と、それも
楽しみだったりしています。

我が家の桜は白い花を付けます。艶やかな薄ピンクに染まるソメイヨシノ
には負けそうですが、清楚な美しさが自慢です。
寒さ厳しい冬の間、赤茶色い小さな固まりをじっくりと熟成させ、
気長に時間をかけてほんの少しずつ蕾が膨らんで…。そして、
ようやく今、美しい花を付けたばかりだと言うのに、まあ、なんと
せっかちな!風に吹かれては芝生の緑に花びら模様を描き始めています。
ちょっと待って!と言いたくなりますが、咲き始めた途端に散り急ぐ。
そんな儚さ、潔さが日本人のDNAに呼応しているのかも知れません。
さもなければ、一体全体どうしてこんなにも桜に心を奪われてしまうのか?
我ながら不思議です。
デンマークの人々も草花が大好きですが、でも、日本の桜に匹敵するような
位置付けの“特別扱い”的な花は見当たりません。

一本の木が育つのには時間がかかります。
アルネヤコブセンが1936年にこの家を設計した時、同時に造園も
手掛けたのだそうです。「桜の木はココ!」などと言いながら持ち前の独断で
庭をデザインして行ったのでしょう。あれこれと愉快な想像を
かき立てられますが、それはさておいて。
例えば植栽当事5年ものの苗木だったとして、既に樹齢80年の桜の木と
いうことになります。当然とは言え、初代オーナーの時代には庭の真ん中に
小さな若木が有るばかりだったのだと思うと、何だか申し訳ないような
気持になります。それに第一、現在桜大好きな日本人が住んでいるとは、
さしものヤコブセンも想像出来なかったことでしょう。
夢が叶うなら天国のヤコブセンをお花見に招待したい!

そんなことを想いながら、桜の花の下で甘い香りに包まれていると、
あらためてこの家に住む幸せを思い、
人生の希有な巡り合わせに感謝せずには居られません。


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

先週は蕾だった桜がほぼ満開になりました。

デンマーク人の友達からプレゼントされた「ジャパニーズチェリー」
あまりジャパニーズっぽくないけれど、可憐な花を咲かせます。

刻一刻と色合いを変えて行く庭。見飽きません。

【きょうのクロスステッチ Vol. 50】 by 岡村恭子

VOL.50 雨降りは焼豚日和

torsdag den. 13 maj 2010


今日は朝から横殴りの雨です。
桜も冷たい雨と風に打たれてにわかに色褪せてしまいました。
この様子では2~3日ですっかり散ってしまうことでしょう。
こうして季節は巡り、我が家の庭も春から初夏へと移行して行きます。
そんな庭の様子と共に、日々の事などをお伝えして来たこのページも
回を重ねて50回、連載をスタートして一年になりました。
「継続は力なり」の言葉を信じて、これからも四季折々のお便りを
綴って行こうと思っていますのでどうぞよろしく!

さてさて記念すべき50回目ではありますが、残念ながら外は雨降り…。
お花見の様子はノブエさんが楽しく書いて下さったし…と、
散々トピック探しに悩んだ末の苦肉の策。お花見で好評だった
お料理をひとつご紹介いたします。
題して、クロスステッチ50回記念『雨降りは焼豚日和』

料理人は家人(タカシ)です。ほろ酔いの時に味付けが冴え渡ります。
調味料の分量の基本は“ほろ酔い加減”と“さじ加減”だそうで、
お好みにより甘い辛いを調整して下さい。作り方はいたって簡単です。
(コツ:タレを入れた冷凍用ビニール袋にお肉を入れて寝かせると、
 袋ごと返せてタレがまんべんなくお肉に沁みます。)
2晩くらい寝かすと味が沁みて美味しさ倍増ですが、その場合は冷蔵庫に
タレの匂いが充満しないよう密閉パックして下さい。

* *********************************
【焼豚】
材料:豚肉肩ロースブロック 約1㎏
   酒          50cc
醤油         100cc
   赤味噌        小匙 1
砂糖         大匙 3
   塩          小匙 1
   ニンニク       1片(摺り下ろす)
   ショウガ       1かけ(同上)
作り方
1) 肉を縛り調味料全てを合わせた中に付け込み寝かせる。
2) 平鍋にフィット(なければサラダ油でも良い)を敷き、熱した所に
  肉を置き、フタをして中火で焼く。時々肉を転がし全体が茶色く
  焦げて来たら弱火にして30分ほど、中までよく焼く。
焼き時間は肉により異なるので各自で判断する。
3) 焼き上がったら水飴で(水少々に砂糖を入れて火にかけ煮詰めたもの)
ツヤを出して完成。
* *********************************

焼豚はスライスして10枚ずつ位に袋に分け入れて冷凍庫に
保存すると便利です。小出しにして夜食の麺類や、サンドウィッチにも
お薦めです。我が家ではスパゲティ-で作るイタリアン冷麺の
トッピングにも重宝しています。是非お試し下さい。


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

外は雨、、、窓に水滴、、、

豚肉ブロックを縛って調味料に付け込んだ所。
我が家の調理人は手際良く2重のビニール袋で密閉する。

お花見でも好評でした。

【きょうのクロスステッチ Vol. 51】 by 岡村恭子

VOL.51 初夏宣言

torsdag den. 20 maj 2010


日中気温18℃に上昇。
今年は5月に入っても肌寒く、ずっと暖房を切れずにいましたが、
ようやくストップです。北欧では気温が20℃にもなれば夏ですから
あともう少し。只今、束の間の初夏というところです。
ドアを開け放してサンダルのまま出たり入ったり…
時には素足のまま出たり入ったり…泥んこの足を庭の水道で流したり、
そんな田舎暮しのような季節が巡って来たと思っただけでとても嬉しい。

庭は先日の大雨の後、新緑が一層鮮やかになりました。
重なり合う緑のグラデーションの美しいこと、木漏れ日の麗しいこと!
桜の木も葉桜に衣替えの真っ最中です。ライラックの蕾が膨らみ始め、
クレマティスやカプリフォーリは茎や葉をよじらせながら空に向かって
ぐんぐん延びています。バラにルピナス、シャクヤク、スズラン、ツツジ…
初夏を彩る草花の葉が日増しに大きくなってきました。
花の咲く頃が楽しみです。
思えば暗く寒い季節を我慢して来たのは何も人間だけではありません。
植物も同じ事、今年は特に冬が厳しかった分庭の草花の発育が
目ざましい様子です。日々活発に成長し続ける葉っぱ達に負けていられない、
という訳で私も活動開始。目の保養がてら丁度開催中の写真展に行って
みたのですが、元精肉市場だったメイン会場は改装途中。
裏の方を覗くとまるで廃虚です。おまけにどの作品も内容がシリアスで
暗いものが殆ど。ジッとこちらを射すくめるような眼差しの被写体を
見ている内に、明るい天気とは裏腹に気持はどんどん沈んで行くのでした。
とてもとても目の保養どころでは有りません。
こんなに呑気に暮していて良いのだろうか?という愚問を我が身に投げかけ、
日頃の自分を反省しつつ足早に会場を後にしました。

外は爽やかな五月晴れです。
見上げる青空にチボリのアミューズメントが目に飛び込んで来ました。
明るい歓声が響いて来ます。
写真展で沈痛な面持ちになっていた私には何気ない光景がいつもの
100倍幸せな事のように写ります。
たまには日常から離れた感覚で物事を見たり聞いたり考えたり…、
そんな事も大切かも知れませんね。

ところで、庭の巣箱に小鳥のヒナが孵った様子です。
近付いて怯えさせてはいけないので只今遠くの方から観察中です。
楽しみがひとつ増えました。


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

壊れてしまった椅子を利用したコーナー。
使い古した自転車のバスケットにはパンジーを。

写真展から? 晴れていたので写真を見るとスペイン風な感じです      
が、雨の日に行った娘は「ちょっと怖かった」と一言。

青空に元気いっぱい回転していたチボリのアミューズメント。

市庁舎に続く道。並木も急に葉が茂り初夏の装いです。

【きょうのクロスステッチ Vol. 52】 by 岡村恭子

VOL.52 好きなもの

torsdag den. 27 maj 2010


真っ青な空に雲が広がったと思う間もなく雨降りに、暑いと喜んだ翌日には
仕舞いかけたセーターを引っぱり出すような按配で、このところ北欧の
気紛れお天気に振り回されっぱなしですが、でも、確実に日照時間は延びて
来てとても明るくなりました。PM9:00を過ぎても遅い午後のようです。
それだけでもとても嬉しい!
北欧暮らしはそんなこんなの悲喜こもごも。
人々の気持もお天気次第でご機嫌、不機嫌、単純で分かりやすいのです。

庭も日ごとに緑が濃くなってきました。ライラックが甘い香りを放っています。
鉢植えにした苺も白い花を付けました。
    好きなもの イチゴ、珈琲、花、美人
    懐ろ手して宇宙見物        
               (寺田 寅彦)
今頃の気分にピッタリ来る私の大好きな言葉です。
ひと粒のイチゴから壮大な宇宙まで自由に心を遊ばせてみる。
そうすると、ほら、ねっ?!何だか広々とした気持になりませんか?
こんなことをサラリと言える男性はそうそう簡単には見当たらない。
第一、苺ではなくてイチゴ、コーヒーではなくて珈琲なのです。
明治の物理学者寺田寅彦さん(何故か呼び捨てられません)は実に
お洒落な人だったに違い有りません。
ご存知の方も多いとは思いますが、彼は夏目漱石の門下生で
「我が輩は猫である」のユニーク学者の水島寒月君も「三四郎」の
インテリ野々宮さんも彼がモデル。作中でも博識でお洒落なユーモリスト
として登場しているところをみると、大勢の門下生の中でも漱石が思わず
キャラクターにしたくなるような雰囲気の持ち主だったのでしょう。
物理学者でありながら優れた文章家。絵心も有って音楽にも詳しい。
自然を愛し、女性を愛し、子供を愛し、日常の中の“不思議”を
研究する人、そんなロマンティストを生み出した明治という時代に
憧れさえ抱いてしまいます。
自分の好きなものをたった5つ並べただけなのに、まるで広い野原で
深呼吸したような新鮮な気持にしてくれる…。言葉には時としてこんな
素敵な影響力があるのだと感動的です。
私も5つ並べてみました。えーっと…
   好きなもの さくらんぼ、庭を渡るそよ風、のら猫カナちゃん、
   マシュマロみたいな赤ちゃんのホッペ、テーブル囲んだ皆の笑顔
…かな?う~ん、もっと他に有るような気もしてセレクトするのは案外
難しいようです。みなさまも初夏のひととき、ご自分の好きなもの5つ
思い描いてみてはいかがでしょうか?


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

只今リンゴの花盛りです。

サクランボの赤ちゃん。元気に育ってくれますように。

日陰に咲いた遅咲きのチューリップ。

バラの花壇越しに通り向こうに咲くライラックの借景。

【きょうのクロスステッチ Vol. 53】 by 岡村恭子

VOL.53 みんな生きているんだ友達なんだ♪

torsdag den. 3 juni 2010


Nobueさんの“ちちんぷいぷい”効果で?ようやく晴れました!
とにかくもう、みんなの喜んでいる事と言ったらありません。
やっぱり北欧暮らしはお天気次第だと痛感します。
特に夏至に前後した6月~7月は暗い冬を耐えて来たご褒美期間、
晴れてさえいればそれだけで幸せな気分になれるのですが、
その反対に雨降りが続くと全てがトーンダウンしてしまいます。
記録的な寒さだった冬の後ではそれも無理のない事なのです。
そう言えば、日本で“西日の当たる部屋”と言ったら不動産情報としても
あまり良い印象ではなさそうですが、ここ北欧では午後からの陽射しを
存分に取り込める西南の向きに庭やリビングの中心をレイアウトします。
我が家も西南に庭とリビングルームという設計です。
今頃は夜の10時ころまで明るいので照明をせず、窓辺にキャンドルを
灯して過ごします。

さて、しばらく庭仕事から遠ざかっている内に、あらら、大変!
庭は“雨後のタケノコ”よろしく草茫茫状態になってきました。
日頃から草花に親しんでいるはずの私も怯んでしまうほど植物の
成長は目ざましく、どこから手を付けたら良いのか?お手上げ状態です。

夕方、羊も飼えそうなくらい伸び放題の芝生の庭で食事をしていると、
気ままな我が家のサブメンバー*のら猫カナちゃんがやって来ました。
(*きょうのクロスステッチVOL. 13)
餌とミルクを平らげるとフワフワの芝生でリラックス。
一方、松の木に架けた巣箱に小鳥の雛が孵り、只今親鳥は育児に大忙しの
様子です。チ-チ-鳴いている雛たちに2羽が交代で出たり入ったり餌を
運び込んでいる、それはもう一生懸命に何度も往復しているのを
カナ猫が眺めています。時々眠りそうになりながらもチ-チ-という
雛の声に耳を傾けている様子です。そんな様子を眺めながら、ふと、
庭中の生きとし生けるもの全てと時間を共有していることを実感します。
動物も植物も何と健気な事でしょう!

ところで、雛が飛び立つ瞬間を見たいと思っているのですが
一体全体いつになったら巣立つのか?
何度か練習をしてから巣立つのか?それとも、一斉に飛び立ってしまうのか?
と知らない事ばかりです。只今がんばってバードウオッチング!
決定的瞬間の撮影が成功したらお知らせ致しますのでお楽しみに!


岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

明るい陽射しの中で葉影が美しい。

小鳥の声に耳を澄ますノラ猫かなちゃん。

【きょうのクロスステッチ Vol. 54】 by 岡村恭子

VOL.54 一ヶ月ぶりの*チク*チク*ステッチ**

torsdag den. 15 juli 2010


久しぶりに里帰りをしていました。
6月の日本は梅雨の入り、日増しに気温と湿度が上昇してゆき、
外出の度に顔が茹で蛸のようになっている私に「まだまだ序の口」、
みんなが口を揃えて言いました。
あらためて考えてみると暑い季節に帰ったのは、生まれたばかりの娘の
“お披露目里帰り”以来です。…という事は何と25年ぶり、
4分の1世紀ぶりということになります。

梅雨の晴れ間に散歩に出ると、湿った大気をまとった紫陽花が、
紫青のグラデーションでしっとりと咲いています。公園の木々は眩しい
陽射しを優しく受け止め、木陰のツツジが濃桃色に燃えているようです。
日常の何気ない景色にも梅雨時ならでは、の風情があって嬉しくなる。
実家の庭にも植木屋さんが入り、庭木の剪定をしてゆきました。
2日がかりの仕事を終えて職人さんが帰ったあとに梅の実がひとつ、
玄関脇の石の上にそっと置いてありました。梅の木に残っていた
最後のひと粒です。職人さんの自然を慈しむ気持が伝わってくるような
気がしました。あまりにもさり気ないから余計にそう思えたのかも知れません。
また或る日、外出から帰ると玄関に大きな紙袋がおいてありました。
中を覗くと、いかにも堀り起こしたばかりのジャガイモがたくさん!
何かいうと頼んでいる電気工事屋さんが持って来てくれたのだそうで、
ふむふむ、案外お母さん上手にお付き合いしているのね。と笑いながら、
さっそくポテトサラダを作りました。ホクホクしたジャガイモは
粘り気のあるデンマークのそれとはひと味違う美味しさです。
こうして母の傍で過ごした3週間。
分別ゴミに頭を悩ましつつも、市井の人々の人情に触れて、
しみじみとふる里は良い所でした。

そして、「ただいまー!」
久しぶりのデンマークはカラリと晴れ、庭は天まで伸びる勢いの雑草と
水不足でしなだれた紫陽花…。ついつい、あの瑞々しく咲いていたふる里の
大輪の紫陽花達を思い出して…しかし、ぼやいている閑は有りません。
留守を守ってくれた功労者=家人をせっついて、庭仕事に終われる毎日でした。
ようやく昨日垣根の刈り込みも終わりホッと一息。
夕方、乾燥している芝生にたっぷりと水をやっていたら、ノラ猫カナちゃんも
ご挨拶です。全てが出発前と変わらず平和です。
夕食後、庭で寛ぎながら思わず呟きました。
「やっぱり我が家が一番!」
このフレーズ、主婦が旅行から帰った時の感想No1なのだそうです。
不本意ながら私もご他聞に漏れませんでした。

岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/

ようやく手入れの終わった庭。
通称”まるチャン”のつげの木も真ん丸に!

本日の庭からサルビとカプリフォリ。

「我が家が一番」と思うのはこんな時。

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