2010年10月~12月
【きょうのクロスステッチ Vol. 66】 by 岡村恭子
VOL.66 庭の秋を楽しむ
torsdag den. 7 oktober 2010
早いものでもう10月、北欧の秋は日ごとに深まって来ています。
日没が早くなり、夜が長くなった分、朝が遅くなって少しずつ私の
寝起きも悪くなって来ています。これから徐々に「冬」という名の長い
トンネンルに向かって行くまでのしばらくの間、秋の日差しの中で
身近な楽しみを見つけて過ごしたいと思います。
我が家の庭にもいつの間にか落ち葉が目立つようになりました。
桜の葉が黄色く色づき始め、 紫陽花はすっかりドライフラワー化して、
花びらが風にカサコソと乾いた音を立てています。
そうだ、今のうちにローリエの葉を摘み取っておかなければ…。
摘んだ葉を日当りの良い所で乾燥させるだけで、いつでもお料理に使えて
とても重宝しています。
リンゴも赤く色づき食べごろを迎えています。
先日、遊びに来た友人が庭を歩いていてキャッ!と声を上げました。
落ちているリンゴを踏みつぶしてしまった、と申し訳なさそうに。
でも、知らずにリンゴを踏んでしまうなんて、こんな贅沢な庭はない、と
笑っていました。確かに、すっかり慣れっこになっているけれど、
あらためて思えば、サクランボ、プラム、リンゴと、都会に住みながら
何とも豊かな環境です。庭でフルーツが拾えるのですから、
買う必要など無いとはいうものの、やはり季節ものです。「 産地直送!」の
キャッチコピーに弱い私は買いました。2キロ入りのリンゴ。
帰宅早々キッチンでお味見です。ウチのとどちらが美味しいかしら?
どれどれ…シャキッ!齧ってみたらこれが実に美味しい。
リンゴ農家の努力と工夫の跡が感じられます。
やっぱり手入れしなければダメという事でしょうか?
実は今年は天候不順だったせいか、我が家のリンゴは小粒でおまけに
虫食いばかり。どうやら今年は店先のリンゴに軍配が上がったようです。
暇な時を見計らって暖炉用の薪作りをするのも今頃のこと。
一年を通して庭木の廃材=薪に相応しい材料が沢山たまってしまいます。
普段は人の目につかない所に山積みになっているのを引っ張りだして、
乾燥したものから順番に切って行くのです。
例えば、洗濯物は干すことよりも畳む作業の方が面倒だったり、
食器は洗うよりも実は拭いて仕舞うのが大変だったりするのと同じように、
庭木の剪定は楽しいけれど、薪作りはなかなか大変です。
おまけに地味な作業なので家人も気乗りしないらしく、梯子に上って
プラムの枝を剪定したときの勢いはすっかり失せて一日延ばしです。
でも、暖炉を焚いた時のぬくもりは何にも代え難い冬の贅沢、
本格的な寒さがやってくる前に頑張らなくっちゃ!と思っている所です。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
秋の紫陽花。褪せた色合いも趣があります。
小粒ながら赤く色づいたリンゴ。
我が家のローリエの葉。シチューなどに大活躍です。
真っ白い可愛らしい木の実、スノーボール。
【きょうのクロスステッチ Vol. 67】 by 岡村恭子
VOL.67 自転車というエコツール
torsdag den. 14 oktober 2010
デンマークは自転車大国、
首都コペンハーゲンのメインストリートには必ずと言って良いほど
自転車専用道が完備しています。
電車やメトロにも自転車ごと乗り込めるシステムになっているので
とても便利です。コペンハーゲン市民の過半数が自転車通勤&通学を
しているという統計が出ているそうですが、これだけしっかりと
環境が整備されていたら当然、と言う感じです。
それだけに朝夕のラッシュアワーはまさに自転車の洪水!
みんなものすごいスピードです。そんな時に一人安全運転でゆっくり
走ろうなどという考えは禁物、前後の流れに合わせて全速力でペダルを
漕ぎます。風を切りながらロードレーサーになった気分です。
現在、コペンハーゲン市では交通量の多い自転車専用道路を2車線にする、
という案を検討中らしいのですが、こうなるともう、ほとんど車扱いです。
もちろん、街角の至る所に駐輪場があります。あまりにも何気なく&沢山
有り過ぎて目に入らないほどで、例えば国立美術館や国会議事堂などの
公共施設にも必ず設置されていますし、ダウンタウンの目抜き通りをよく
観察してみると、歩道脇や車道と自転車道の間のパーキングスペースに
ずらりと駐輪してあるのに気づきます。
ちなみに車のパーキングは有料ですが、駐輪は当然ながら無料です。
こうして書いてみると、この国では自転車が移動ツールとして
人々の生活の中にとけ込んでいると痛感します。むしろ、国あげて
自転車を奨励していると言った方が正しいかもしれません。
それで多分笑いが止まらないのは?…そうです。
デンマークの自転車屋さんは不況知らずの商売繁盛。
おしゃれなオーダーメードの専門店もあり、自転車の種類は実に多種多様、
付属品も充実しています。例えばヘルメット。乳児用から大人用まで
バリエーション豊富です。そして、これからの季節に欠かせないのがライトです。
街灯が灯ったら自転車のライトも点灯する、という規則になっているので、
特に暗い冬の間はサイクリスト必携アイテムです。
点灯せずに走行してお巡りさんに見つかると罰金です。
昨年12月、コペンハーゲンで環境サミット=COP15が開催されました。
市庁舎前広場のツリーの周囲を自転車が囲み、*ペダルを踏んで
イルミネーションを点灯するというイベントで盛り上がったのを思い出します。
あれからもうすぐ一年、イベントは忘れられてしまったかもしれないけれど、
デンマークの人々は今日もペダルを漕いでいます。
それだけでもCO2削減の貢献度はかなり高い、と断言出来ます。
*KuNeruAsobu 2009年12月22日 : 「Hopenhagen」参照
岡村 恭子
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自転車専用道路のマーク。
これは三輪車タイプ。キャリーには子供を乗せたり荷物を載せたり…
ヘルメット着用のこの女性。アーミーカラーでなんだかいかめしいですね。
ご覧の通り、街はどこも自転車だらけです。
【きょうのクロスステッチ Vol. 68】 by 岡村恭子
VOL.68 残り物は美味しい
torsdag den. 20 oktober 2010
ステッチハウスのページにクリスマスモチーフが登場し、
近所のスーパーマーケットにもクリスマス用品が並び始めました。
もう、そんな季節?!…と焦ります。
ところで、そのスーパーマーケット。日本とデンマークでは
品揃えの内容が違っていて面白いのですが、
中でも生鮮食料品は際立っています。ズバリ「魚」vs「 肉」!
水族館のように多種多様な海産物が並ぶ日本とは大違いで、
デンマークのスーパーに魚売り場といえるようなコーナーは皆無です。
最近の寿司ブームでようやく小さな場所を確保したものの日本とは
比べようもありません。その代わりに精肉売り場は見応えが有ります。
特にこれからの季節は煮込み料理やオーブンで焼き上げるお肉がドーン!と、
大きな固まりで重なり合うように並びます。
日本ではあまり見かけないものではポークテール…聞いたところは
可愛らしいですが、要するに豚のシッポです。
デンマークに暮らし始めたばかりの頃、シッポが何本も入ったパックに
ビックリしたものです。
ポークテールは豆と一緒にゼラチン状になるまでじっくり煮込むと美味しい。
いかにもバイキングの国らしい冬の献立ですね。
ローストポークやローストビーフをはじめ、様々な骨付きブロックetc.
いずれも固まりのまま時間をかけてお料理します。
週末など家族が集まる日に一度に沢山作るので、大抵は食べきれずに
残ってしまいますが、デンマークの人は数日かけて最後までしっかり
お腹におさめます。
まず、ごちそうを作った翌日は冷めたお肉を薄くスライスし、黒パンに乗せ、
赤キャベツやカリカリの皮などをトッピングします。
代表的デンマーク料理のひとつ、デニッシュオープンサンド=
スモーガスボードの出来上がりです。
更に残った時の料理方法の代表がBiksemad(ビクスマッド)です。
茹でジャガ芋、フリカデーラにベーコン、ソーセージ…。
いつのまにやら冷蔵庫の中は残り物でいっぱい!という時に登場する
“冷蔵庫内残り物一掃クッキング”の決定版です。作り方は至って簡単。
残りものすべてをサイコロ状に切ってマーガリンで炒めるだけ。
塩こしょうで味付けし、目玉焼きを乗せ、ビーツ(赤カブ)の甘酢漬けを
添えて完成です。ウースタースースやケチャップをかけて頂きます。
家人は本番のごちそうよりも残り物のビクスマッドに目を細めてくれる。
これは喜ぶべき事か?少し悩みます。
岡村 恭子
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街のお肉屋さんにて。
皮付き肉は奥の方で撮影出来ませんでした。
皮付き豚ロースのロースト。パリパリの皮がごちそうです。
翌日はプレート上のものを全て黒パンに乗せてスモーガスドードに。
残り物で作ったビクスマッドはビールがピッタリ!
ランチに最適です。
【きょうのクロスステッチ Vol. 69】 by 岡村恭子
VOL.69 カルチャーナイト
torsdag den. 27 oktober 2010
紅葉の美しい10月、デンマークの学校は一週間秋休みになります。
子供達は勉強から解放されて、ハロウィンや森のハイキングなどで
盛り上がり、しばし秋の日差しの中で羽を伸ばします。
その秋休みに合わせて毎年「カルチャーナイト」というイベントが
開催されます。今年は15日の金曜日でした。
たった一日、それもPM6:00~12:00という短時間のイベントの為に
フリーパスが販売され、バスも特別ダイヤを組んで準備万端です。
はっきり言ってしまえば、そんなわずか数時間のために、
わざわざ大げさな…と考えそうなものですが、そこはデンマークです。
主催者側も参加する側も大いに楽しもうと手ぐすね引いて当日を待つ…。
そんな雰囲気が私にはとても微笑ましく映ります。
今年も真夜中まで100以上の開場でさまざまなアトラクションや
イベントが開催されました。動物園も真夜中までオープンし、
動物達の夜の生息を観察できます。また、国会議事堂や証券取引所など
の建物内の見学も可能です。博物館や美術館も真夜中まで
多くの人で賑わいます。デザイナーズショップは飲み物を用意して
パーティー気分。どの会場も夜更けと共に盛り上がってゆきます。
クレープ屋さんから甘い香りが流れてくる夜道を、おしゃべりしながら
歩いているだけで、秋祭りや文化祭に来ているようで
ウキウキしてくるから不思議です。
今回、私達が出向いたのは、デザイナーとテクニックスクールの生徒との
家具のコラボレーション作品の展示会場です。
昨年に続き*2度目の試みですが、なかなかの充実ぶりでした。
テクニックスクールには羨ましいくらいの設備が整い、
木工の他にも映像技術や彫金など多種の分野から専攻する事が
出来ます。デンマークでは就職活動の際にまず「 何が出来るか?」と
いうことが最も重要です。ですから経験は評価の対象になりますが、
学歴などはほとんど問題になりません。
非常に分かりやすく公平な考え方ですが、それだけ本人の資質が問われる
わけですからシビアとも言えます。 そんなことも手伝って、技術を
習得出来るテクニックスクールは人気があります。
中でも家具に代表される木工技術の分野は人気があるそうです。
グローバリゼーション化が進む中で、ともすると失われてしまいそうな
伝統的木工技術を継承して行く若者達がまだまだ沢山いると知り、
嬉しくなっての帰り道、ふと見上げた夜空に☆がとてもきれいでした。
*きょうのクロスステッチVOL.18
「コペンハーゲンデザインウィーク;小さなこころみ」
岡村 恭子
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蔦も紅葉して…秋が深まってきました。
ハロウィンのカボチャがお花屋に並んでいます。
テクニックスクールの作業風景
展示風景。
【きょうのクロスステッチ Vol. 70】 by 岡村恭子
VOL.70 骨董通りの散歩道
torsdag den. 4 november 2010
毎年10月最後の日曜日に夏時間から冬時間に切り替えます。
…というわけで、
本日は冬時間になって4日目。わずか1時間の繰り上がりですが、
朝寝坊にはちょっと得した気分です。しかし、ますます夜の訪れが
早く感じられるようになり、いよいよ冬の長いトンネンルの
入り口にさしかかったという感じです。
これからの季節は屋内で過ごす時間が長くなって、運動不足気味に
なりがちです。これではいけない!…という訳で、今回は散歩の
ご案内をしようと思います。行く先は私のお気に入りの骨董通り。
コペンハーゲンの旧市街地を囲むように北東側に堀が巡らされています。
そのお堀を越えた辺りから多国籍移民の多いNørrebro地区にはいります。
おしゃれなブティックの隣にエキゾティックな食材屋さんや八百屋さんが
軒を連ね、カフェでは若者達がおしゃべりに花を咲かせている…
気取らない普段着姿のダウンタウン地域です。
バス通りから少し入った周辺一帯が骨董通りになっています。
毎年春と秋にはオープンエアの蚤の市が開かれ、とても賑わいます。
何となく退屈な時や、家の中にじっとしていられない時、
そして無性に”イイモノ”に出会いたくなった時、家事など放り出し、
友達を誘って 出かけます。これからですとクリスマスプレゼントを
探すのも一興です。アンティックの手芸グッズも沢山あります。
とても精密な刺繍を施したテーブルクロスなどを見かける事もあります。
私は残念ながら手芸の世界には疎いので選球眼ゼロですが、愛好家の方には
興味があるのではないかしら?といつも思っています。
骨董通り散策の面白さは、何と言っても予期せぬモノと出会える事です。
ガラクタの山をゴソゴソとしているうちに、丁度欲しかったスプーンを
発見したりした時などは、宝物に出会ったように嬉しくなります。
肝心な値段交渉ですが、店主はお客様の様子で値段をつける場合もあります。
(どうも、日本の人には値付けを高くしている節がある。)とにかく、
交渉してみましょう。そういうプロセスも楽しめたら最高です。
散策に疲れたらひと休み、おしゃれで気軽に入れるカフェが沢山あります。
たとえ、掘り出し物の出会えなくても、暖かい飲み物で冷えた身体を温めながら、
おしゃべりに花を咲かせるのも良いものです。
読者の皆さまもコペンハーゲン来訪の際には、少し足を伸ばして骨董通りの
散歩を是非お勧めします。
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
深まり行く秋のコペンハーゲン。大学図書館前広場。
楽しい骨董通りのお店を巡り…欲しいものが見るかな?
こういう所に掘り出し物が隠れている可能性大!なのです。
【きょうのクロスステッチ Vol. 71】 by 岡村恭子
VOL.71 メトロに乗ろう
torsdag den. 11 november 2010
日本の電車網はすばらしいのひと言です。
新幹線はもとより全てダイヤ通りに運行し、停車位置も正確な上、
共通カードの登場で販売機の前に行列して切符を買う必要もなくなり、
本当に便利な世の中になったと感心します。
それに引き換え、福祉、デザイン産業など様々な面で先進的は
デンマークが、こと鉄道に関しては問題だらけの時代遅れ状態から
抜け出せずにいるのはどうしたことでしょう?国営事業からの脱却が
スムーズに行かないことが最大のネックという事ですが、
少々の悪天候にも影響して、真夏には暑さでレールが延びてしまい、
真冬は寒さで縮んでしまう。その度に大幅なダイヤの乱れが生じます。
電車よりもバスのほうがずっとしっかりしています。
ところがです。(先日、自転車大国と書いたばかりですが)年々
車は増える一方で道路は渋滞。もうこれ以上バスに頼れない、と
メトロの計画がはじまったのですが、具体的に進める前にまずは
市民の賛同を得なければ始まりません。
現実にこぎ着けるまで反対派の人たちを説得するために時間をかけ、
対話、説明会などが実に辛抱強く繰り返されていました。
メトロが市民権を得るまでのプロセスは、知らぬ間に町の様子が
一変してしまう国からやって来た私には驚きに値します。
ようやく2002年春、コペンハーゲン市内と空港を結ぶメトロが誕生、
ほんの少しですが、公共交通手段に幅が出来ました。
このメトロ、わずか3両編成のミニサイズです。
全てコンピューター制御の無人運転、車体は機能的でスッキリとした
イタリアンデザイン。もちろん、乳母車も自転車も乗り入れ可能です。
ラッシュアワーはかなり混み合うので、いつまで三両編成でやって
行けるのか?野次馬は少々心配ですが、現在、延長工事中の新しい
ラインが完成すると例の”骨董通り”の方まで空港から直結するはずです。
丁度、この原稿作成中に延長工事現場でバイキング時代の遺跡が
現れたとニュースで伝えていました。考古学者達はメトロ工事のお陰で
思わぬ掘り出し物に大喜びです。
この調子ではまたまた工事が長引きそうな予感ですが、のんびりと
少しずつ改善されて行く交通手段…傍目に歯がゆいけれど、
そういう所がかえってデンマークらしいと言えるかもしれません。
皆様もコペンハーゲン観光の折には*メトロ試乗を是非お試し下さい。
*www.m.dk
岡村 恭子
http://www.copenhagensmile.com/
コペンハーゲンのメトロは縦穴式?結構地下深く降りて行く感じです。
乳母車も自転車も乗り込めます。
改札はありません。バス共通チケットです。
(黄色い所にカードを挿入、スタンプして、オーケー!)
【きょうのクロスステッチ Vol. 72】 by 岡村恭子
VOL.72 ただいま!コペンハーゲン
torsdag den. 17 november 2010
3週間ほど秋の日本を楽しんできました。
明るい日差しを思う存分体内に吸収してビタミンD補給も充分です。
久しぶりに舞い戻ったデンマークは既に初冬の気配が漂い、
私の留守中に庭の木々もすっかり葉を落としてしまいました。
低い空、夕暮れ時から辺りを包む静寂…賑やかな日本から戻ると
そのコントラストに、時差ボケも手伝ってしばし気分はエトランゼです。
庭先に気配を感じてふと目をやるとノラ猫カナちゃんがひょっこり顔を
のぞかせてくれました。餌とミルクをあげながら「ただいま」…そして、
ようやく日常に戻った心持ちがしてきたのでした。
時差ボケ解消には散歩が一番です。さっそく街に出かけました。
私が留守にしていた3週間の間に、日の暮れるのが驚くほど早くなり、
太陽の位置がグーンと低くなってしまいました。木立のシルエットが
長く延び、足早に行き交う人たちも暖かそうなジャケットでまん丸くなって…。
でも、まだ凍えるほど寒くはない、そんな今頃のコペンハーゲンも悪く
有りません。大通りのクリスマスイルミネーションの準備も終わり、
あとは点灯式を待つばかりとなりました。
北欧のクリスマスは今頃から聖夜までの長期間大イベントです。
街も人も毎年工夫を凝らして、クリスマスに向かい盛り上がってゆきます。
散歩の途中でさっそく面白いものを発見しました。コンゲンスニュートウ広場の
横に立っていたツリーです。(写真1)近づいてみたら、何と1ドル札で
埋め尽くされています。 不景気な世の中を反映してでしょうが、 同じ緑色でも
樅の木と紙幣とではかなり発信するイメージが異なりますね。
お花屋さんの店先もクリスマスらしくなってきました。(写真2)
どのお店も季節の草花や木の実などと一緒にオーナメントやリースを
美しくディスプレイして、道行く人々の目を楽しませてくれます。
そうそう、我が家にも新しいクリスマスグッズがお目見えしました。
ソーラー充電の屋外用豆電球です。”環境に優しい省エネ”電球です。(写真3)
ベランダに置いてある鉢植えマーガレットの枯れ枝に絡ませてみました。
でも、ソーラー充電ですからお天気が良くないとダメなのです。
運良くここ数日はお天気に恵まれ、日没とともに約一時間ほど
何とか頑張って可愛らしく明かりが灯っていますが、これから冬至に向かい
ますます日照時間が短くなって行く中でどうなのでしょう?
どうも北欧のクリスマスよりも東京などにピッタリのアイテムのような
気がしないでもありません。
こうして、少しずつですが、楽しかった日本での日々が遠く懐かしい思い出に
なって行きます。これからしばらくはまた北欧の静かな毎日の中から
あれこれと思いのままに書き綴って行きたいと思います。
岡村 恭子
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街角の1ドルツリー。総額いくら?
クリスマスらしく飾られたお花屋さんの店先。
ソーラー充電です。暖冬のせいか?いつもなら枯れ枝になっているはずの
マーガレットの花がまだ咲いています。
【きょうのクロスステッチ Vol. 73】 by 岡村恭子
VOL.73 めがね越しのスマイル
torsdag den. 24 november 2010
ここ数日急激に寒くなってきました。天気予報では
これから先、日中でも氷点下以下の日が続くということです。
まだ11月だというのにこの寒さ、そしてこの暗さ。
北欧はとうとう長い冬のトンネルに入ってしまいました。
これから春がやってくるまで辛抱我慢の季節です。
一応、目覚ましはAM 7:00にセットしているのですが、
カーテンの向こうは夜のように暗いので、ベッドから抜け出るのに
ちょっとパワーが必要…いつまでもお布団に包まっていたい…
そんな気持ちを何とか朝モードに切り替えて「 おはよー!」
私の一日が始まります。
まずは私の通る道順に家中の照明をして行きます。
キッチンの窓辺にも小さなキャンドルを灯します。
そうしてブラインド越しに裏庭の梢に目を凝らすと…?!
おお、今朝も来ています。
枝に吊るした餌をついばみに今年も小鳥達がやって来たのです。
野生の動物達は何と健気なのでしょう。人間どもが室内で温々と
暖まっている時にも、激寒の自然を受け入れてサバイバルしています。
小鳥もノラ猫カナちゃんも冬の寒さに負けず頑張っています。
見習わなくては行けませんね。
小さな生き物達に元気をもらったところで、さあて、我が家も
クリスマスの準備を始めようと思います。
地下の物置の棚にクリスマスグッズの入った箱が並んでいます。
中にはツリー用のオーナメントや豆電球などの他に、娘が幼かった頃
一緒に作ったペーパーワークや、手芸好きのお友達が送ってくれた
キルティングのオーナメントなどが思い出と一緒に大切に保管してあります。
毎年クリスマスが近づく今頃になると、その中からいくつかを取り出して
飾ることにしています。手作りならではの素朴で暖かい風合いが北欧の
クリスマスにピッタリです。
ステッチハウスのクリスマスのページを拝見しながら、
その膨大とも言えるコレクションに、クリスマスに託した気持ちを
刺繍の世界で表現して来た愛すべき人々の歴史を感じたりもしています。
さて、本日の私は地下室でガサゴソ、ガサゴそ…すると、
箱の中から幼い頃に娘が作った刺繍のオーナメントが出てきました。
赤い帽子に赤いリボン、ちょっとお茶目な表情がかわいらしいサンタさん。
取り出してテーブルにそっと置いたら、小さな丸い額の中から、
めがね越しに笑ってくれたような気がしました。
岡村 恭子
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朝のキッチン。窓辺にキャンドルを灯します。
いずれも娘が幼い頃に一人で制作したもの。
日付は彼女が勝手に刺したのですが、
お陰で当時の様子が瞬く間に蘇ります。
【きょうのクロスステッチ Vol. 74】 by 岡村恭子
VOL.74 一年のエピローグ
torsdag den. 2 december 2010
今年のカレンダーもとうとう最後のページになリました。
過ぎてしまった11枚のページが果たして満足の日々だったかしら?と
自問自答。少しの反省とちょっぴりの後悔と共に来年こそは!と
思うのも毎年今頃のことです。
光陰矢の如しと思う反面、年頭に誓った朝の体操は3日坊主のていたらく。
一年=12ヶ月=360日、長いような短いような…です。
何はともあれ北欧の12月はクリスマスの月。
デンマークではこれから聖夜までの3週間、大人も子供も毎日楽しい事を
見つけながら盛り上がって行きます。
娘が通っていた小学校では大きなツリーにアドベンツのプレゼントが
飾られ、毎朝くじ引きで当たったクラスがお菓子をもらえました。
それが楽しみでどんなに寒くても子供達が遅刻せずに登校してくる、と
先生が笑っていたのも懐かしい思い出です。
普段は疎遠になっている家族が集い、いつもは仕事に追われている
大人達が子供とのひと時を楽しむべく算段する。忙しさにかまけて
おろそかにしていた「家族団らん」をクローズアップ。それだけで
みんなが笑顔になってしまう。北欧のクリスマスは人々の暮らしの中に
しっかり根付いた伝統行事なのだと実感します。
私も キャンドルを灯したテーブルで クリスマスカードをしたためたり、
懐かしいあの人この人に小さなエアメールの包みを作るひと時を楽しみます。
我が家に限らずどの家もドアをノックして中をのぞけば、きっと…
暖炉を焚いた暖かい居間、キッチンからはクリスマスに欠かせないお菓子
*エーブルスキーバーの甘い匂い、窓辺にはリースやキャンドルが飾られて、
まさに*”hyggelig”な世界が広がっているはずです。
おまけにここ数日の雪で一面銀世界になり、とてもきれいです。
個人的には雪かきに追われる日々が続き、 そろそろお天気なって欲しいと
思っているのですが、何しろクリスマスなのですから文句は禁物です、ね。
ところで、今年も庭の木の葉を利用してクリスマスキャンドルを作りました。
作り方は至って簡単です。適当な器に粘土を置き、キャンドルをしっかり
固定した所に材料をさして行くだけ。組み合わせをあれこれ考えながら
アレンジして完成したデコレーションは今年も我ながら上々の出来映えです。
これからクリスマスまで食卓を明るく灯してくれますように…。
*エーブルスキーバー : バックナンバーVOL.31 「悩ましいクリスマスコンデトリー」参照。
*hyggelig : デンマーク語でヒュークリ
ほんのちょっとした「イイ感じ」、心地よい時などに頻繁に使われます。
岡村 恭子
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庭の紫陽花とスノーボールをあしらってみました。
ヒイラギや松ぽっくり+おやつに購入したクルミを
金色スプレーで着色して。
キャンドルを灯しただけでテーブルがとてもクリスマスらしくなりました。
【きょうのクロスステッチ Vol. 75】 by 岡村恭子
VOL.75 寒い夜に赤い葡萄酒
torsdag den. 9 december 2010
北欧はすっぽりと大寒波に包まれてしまいました。
氷点下の日が続き、さすがのデンマーク人もサムイ!を連発、
ニュースでは毎日のように車が滑ったり転んだりしている画面が
映し出されていました。ここ2〜3日ようやく一段落、少し気温が
上がって来たかな?とはいっても朝晩はもちろん氷点下です。
こう寒いと身体の中から暖まりたい!
だから、というわけでもないでしょうが、デンマークの人はワインが大好きです。
近所のスーパーマーケットでもかなり充実の品揃えで、メジャーなブランドの
バーゲン時はお目当てで買いにくる人も多く、手軽で気取りのない食卓のお伴、
という感じです。我が家も夕食のテーブルには必ず普段使いの赤ワインが登場、
特にカキン!と冷え込んだ夜には、スペインやイタリア辺りの暖かい太陽を
浴びて育った葡萄で作ったお酒が似合うような気がします。
あり合わせの野菜やお肉を煮込んだシチューなどと一緒にグラスを
傾ければ身も心も温まろうというものです。
ストロイエ通りと国会議事堂の間を流れる運河から一筋入った通り、
Magstrædeに娘の大学時代からの親友ヤコブ君が経営するイタリアン
レストランがあります。
アンデルセンの童話の世界に紛れ込んでしまったような古い町並み。
本当に路地の角を曲がったら、黒いフロックコート姿のアンデルセンに出会って
しまいそうな気がしてくる…そんな通りにお店を開いて2年。
早くもコペンハーゲンの人気レストランのランキング入りを果たし、
なかなかの盛況ぶりです。
その彼がレストランの並びにイタリアのワインとチーズ専門のデリカテッセンを
オープンしたと聞き、さっそくお祝いがてら*お店に行ってみました。
古い街並みの中でもとびきり古そうな赤煉瓦の建物。新しいお店はその半地下です。
ドアを押し開けると、狭い店内はワイン好きの人たちで満員御礼状態。
カウンターの向こうからヤコブ君が笑顔で迎えてくれました。
学生時代に日本を訪れ、和食文化の奥深さに感銘を受けて帰ってきたことは
現在のビジネスにも少なからず影響していると思います。
がんばれ!と心の中でエールを送りながら、さて、クリスマス用に
美味しそうなボトルを2本選んで包んでもらいました。
今年のクリスマスは彼のセンスを拝借して、イタリアンにアレンジするのも
良いかな?と思っています。
*ヤコブのレストラン
http://www.magstraede16.dk/
岡村 恭子
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ヤコブ君のお店の外観と店内の様子。
街には小さな構えの専門店を良く見かけます。
フラリと立ち寄ってみるのも散策の楽しみの一つ。
中世の面影を残す旧市街地。
アンデルセンも散歩をしたことでしょう。